【福岡】地域猫・野良猫対策を追う 北九州は活動要件緩和、福岡市は手術300頭を追加
福岡県内で、飼い主のいない猫(野良猫)への対策が進められている。北九州市は2026年7月、地域猫活動を始めるための登録要件を緩和した。一方、福岡市は不妊去勢手術の無償支援を拡充し、10月には300頭分の追加募集を実施。久留米市も年間230頭分の支援枠を設けるなど、自治体ごとに異なる仕組みで猫の繁殖抑制と生活環境の改善を図っている。
猫の糞尿や鳴き声、無責任な餌やりなどを巡る問題は、動物愛護だけでなく、住宅地の生活環境や住民間の合意形成にも関わる。県、政令指定都市、久留米市、獣医師会の制度を比較すると、活動を始める条件や手術費用の負担にも違いがある。
北九州市、地域猫活動の登録を3人から2人に緩和
北九州市は2026年7月22日、地域猫活動支援事業の制度を見直した。従来は地域住民3人以上で活動団体を組織する必要があったが、新制度では地域住民を含む2人以上へと要件を緩和した。
申請できる人も、従来の町内会長や自治会長などに限らず、地域住民である活動団体の代表者まで拡大。活動区域についても、町内会・自治会の単位に限定せず、実際の活動状況に合わせて設定できるようにした。
登録時に必要だった対象猫の写真は後日の提出を認め、手術前に対象猫が出産した場合には、その子猫も支援対象へ追加できるようにした。
市の動物愛護センターでは、登録団体に対する無料の不妊去勢手術枠も拡大した。市の案内ではメス3頭またはオス5頭を基本とし、雌雄混在の場合は相談に応じる。捕獲器の貸し出し、活動を示す腕章の配布、支援ボランティアによる助言も用意している。
ただし、要件緩和によって地域住民の合意が不要になったわけではない。市は引き続き地域の同意を求めており、餌やり、トイレの設置、清掃などは活動団体が担う。
福岡市、2026年度は当初1,600頭分の支援枠 10月に300頭を追加募集
福岡市では、市の「飼い主のいない猫等の不妊去勢手術推進協議会」が、協力動物病院と連携して手術の無償支援を実施している。
2026年度の当初の支援枠は、公募枠1,000頭、地域の相談状況に応じて対象を選ぶ選定枠500頭、多頭飼育問題に対応する枠100頭の計1,600頭。多頭飼育枠は飼い主のいる猫も対象としており、全枠が野良猫向けというわけではない。
さらに市は2026年10月1日から20日にかけ、飼い主のいない猫300頭分の手術支援を追加募集した。抽選方式で、申請者は福岡市内に住み、猫の捕獲と運搬ができる人。手術期間は2026年11月1日から2027年1月31日までと案内している。
手術支援の中心となるのが「TNR」と呼ばれる取り組みだ。猫を捕獲し、動物病院で不妊去勢手術を受けさせ、元の場所に戻す。手術済みの猫は耳先をカットして識別する。
福岡市は別途、飼い猫の不妊去勢手術とマイクロチップ装着に対する費用助成も実施している。こちらは2026年度に計200頭を募集し、助成額は1頭7,500円。11月1日から20日まで第2回の100頭分を募集する。野良猫を対象とした無償のTNR支援とは異なる制度である。
久留米市は年間230頭を支援 手術費は申請者も負担
久留米市は2026年度、飼い主のいない猫の不妊去勢手術について、第1期150頭、第2期80頭の計230頭分の支援枠を設けた。
対象は市内の公園や住宅地などに生息する、おおむね生後4カ月以上の飼い主のいない猫。申請は市内の個人や市内で活動する団体などが行える。
福岡市の無償支援とは異なり、申請者の手術費用負担はオス1頭5,500円、メス1頭1万1,000円。申請時には対象猫に飼い主がいないことを確認するため、申請者とは別の2世帯の人による署名を必要としている。
第1期の受付期間は2026年6月1日から11月30日、第2期は同年12月1日から2027年2月28日。市はこの制度とは別に、公益財団法人どうぶつ基金の「さくらねこ無料不妊手術事業」にも参加している。
県内の主な地域猫・野良猫対策の違い
| 実施主体 | 2026年度の主な内容 | 支援頭数・条件 |
|---|---|---|
| 北九州市 | 地域猫活動の登録要件緩和、無料手術、活動支援 | 地域住民を含む2人以上で活動団体を組織 |
| 福岡市 | 野良猫等の無償手術支援、多頭飼育対策 | 当初1,600頭分の枠、10月に公募300頭を追加 |
| 久留米市 | 飼い主のいない猫の手術費支援 | 計230頭分、オス5,500円・メス11,000円を申請者負担 |
| 福岡県獣医師会 | あすなろ猫事業 | 140頭分(福岡地区40頭・県北地区100頭)、自己負担あり |
※表の頭数は各制度の募集枠・実施予定頭数であり、手術完了実績ではない。制度ごとに対象地域・猫の条件・募集時期が異なる。
県と獣医師会も支援 あすなろ猫事業は累計7,677頭
福岡県は、福岡市・北九州市・久留米市を除く市町村を対象に、地域猫活動への支援を行っている。地域猫活動で不妊去勢手術の費用を負担する市町村への補助や、活動経験者を派遣する地域猫活動サポーター制度などが柱となる。
県は地域での話し合い、対象猫の把握、手術、餌やりとトイレの管理を一連の活動として位置付ける。手術を行うだけでなく、その後も生活環境への影響を抑えることを求めている。
福岡県獣医師会は、協力獣医師とボランティアが連携する「あすなろ猫事業」を展開。2010年度に開始し、2025年3月末までに累計7,677頭の不妊去勢手術を実施した。
2026年度は糸島市、古賀市、宗像市、福津市、春日市、筑紫野市などを含む福岡地区と、県北地区の一部を対象に計140頭分の枠を設けた。申請者の自己負担はオス5,500円、メス1万1,000円で、手術期間は6月15日から8月31日までだった。
福岡市、北九州市、久留米市以外の地域では、県による市町村支援と獣医師会の事業が地域猫対策を補っている。ただし、県の制度と獣医師会の事業は別の仕組みであり、利用条件も同一ではない。
残る課題は手術だけではない 住民の理解と継続的な管理
地域猫活動は、単に野良猫へ餌を与える活動ではない。周辺住民の理解を得たうえで、不妊去勢手術を行い、餌やりの時間・場所・量を管理し、トイレの清掃などを続ける取り組みである。
猫を助けたい住民と、糞尿や鳴き声などに困っている住民の双方がいることを前提に、地域でルールを共有できるかが重要となる。県の指針でも、餌の置き放しを認めず、排泄物の処理や周辺環境への配慮を求めている。
北九州市が活動団体の人数要件を緩和した一方で、住民同意を維持しているのも、こうした地域での調整を制度の一部としているためだ。
今回確認した公的資料では、県内全域に生息する野良猫の最新頭数や、2026年度に各制度で実際に手術を終えた猫の合計数は確認できなかった。募集枠の拡大が地域全体の猫の数や生活環境にどの程度反映されたかについては、今後公表される実績の確認が必要となる。
福岡の地域猫・野良猫対策は、手術費用の支援を広げる段階から、活動の始めやすさ、自治体間の支援格差、住民間の合意形成までを含めた取り組みとなっている。





