韓国GM 設定された2月末 撤退かリストラか 韓国政府とせめぎ合い
群山工場の5月閉鎖を決定した韓国GM
残る工場はどうなるのか、全面撤退なのか
売上不振が続く韓国GM、社長も不在のまま経過させ、GM海外部門の社長が、韓国政府や労組と対応している。
韓国GMは2002年に実質国有化状態の大宇自動車を買収した際、15年間の営業拘束を受けた。しかし、昨年時効成立、撤退も株を売却することもできる。
<韓国GMの経営継続の有無を韓国政府と労組に委ねる>
GMは、韓国GMに対して韓国政府の支援を求め、韓国GMの将来を韓国政府に託してしまった。
政府へは税控除などを求め、韓国GMの株を持つ政府系の産業銀行に対しては融資支援を求めている。また、残った工場の生産性を引き上げるため、労組に対しては大幅なリストラの承認を求めている。
<赤字経営続く決算>
韓国GMは、売上不振が続き、2012~16年の5年間での累積赤字は▲1兆9,787億ウォン(約1,978億円/0.1円換算)に達している。特に、2014~16年には計1兆9,000億ウォン(約18億ドル)の損失を出している。
2017年も最大▲1兆ウォンの赤字が見込まれている。
(韓国GMの販売不振は、今や世界市場で人気がなくなったシボレー系のセダンを多く生産していることにあり、人気が高いSUV系が少ないことにも起因している。)
<2月末期限設定の2つの理由>
トランプ流の一方的なGMの2月末設定は、
一つは親会社のGMから借りた約62百ウォン(約620億円)の返済日であること。
GMはそのまま延長させるとは表明していない。政府系の産業銀行からの融資に切り替える算段のようだ。
親会社からの2016年までの借入金は、今年満期到来は1兆6,077億ウォンに上るという。うち、今月末は6,197億ウォン(5億80百万ドル)、4月には9,880億ウォンの満期がそれぞれ到来する。2017年も最大1兆ウォンの赤字が予想されており、新たな高額な借入金が発生しているものと見られる。
も一つの理由は、GMグループは、世界の工場で向こう2~3年間、どの車両をどの工場で生産するのか2月末までに決定するという。
GMは、昨年2月傘下の独オペルをプジョー・シトロエングループ(PSA)に売却したが、その後もオペルラインで韓国GM生産車を販売し続けてきた。
ところが、10工場も持つオペルを買収したPSAは、工場稼動率を上げてオペルを再建させるため、韓国GMからの輸入を止める意向とされ、韓国GMは約16万台が生産できなくなる恐れが出ている。
韓国GMの存続も含め、GMにとって車両の生産配置が重要な問題になっている。
<韓国政府とのせめぎ合い>
これに対して韓国政府は、GM本社が借入金の満期を延長せず、返済を求めるなら、韓国GMの正常化のための真正性を疑わざるを得ないという立場だという。
政府は失業問題を抱え、可能な限り失業者を出さない方策を採ろうとしているが、時間が限られている。
GM海外事業部門のBarry・Engle社長が今週訪韓する。
今年に入って3度目の訪韓となるが、今回もまた、政府との交渉や労組と協議するという。
ただ、韓国GMは、群山工場だけの閉鎖で終わる販売(=生産)状況にはなっていない。それも悪化が続いている。オペル販売網の問題もあり、オペルが韓国GMの輸入を停止した場合、今年も大幅な赤字に陥る可能性が高い。
<韓国GMのリストラは世界再編の一環>
GMは世界再編に動いており、すでに欧州市場から撤退、北米、中国、その他の3極体制に再編し、収益重視政策に転換しようとしている。これまで、世界各地で不採算工場を閉鎖してきている。
すでにGMは前期決算で、韓国事業につき、従業員関連費用3億75百万ドルを含み8億50百万ドルの減損処理を行うと発表している。
<文大統領、頭の痛い失業問題>
韓国GMは販売台数の減少に歯止めがかからない状況で、韓国政府が支援しても、元の木阿弥になろうが、文政権のアキレス腱である失業問題も絡み、文政権は、最悪、完全撤退だけは避けさせたい意向のようだ。
GMの韓国政府に対する対応は、トランプそっくり、韓国政府が高飛車に出れば完全撤退を表明する可能性も高くなる。
そのトランプは13日、GMの韓国工場閉鎖の決定に絡めて、米韓自由貿易協定(FTA)を「非常に悪い協定」とあらためて批判していた。
韓国マスメディアは、韓国愛から一斉にGMを批判することは簡単なことだが、結果、実がなければただの批判だけに終わる。後味も悪化する。企業は部門で赤字が続けば、また、先の見通しも立たなければ閉鎖することは企業の道理、企業そのものの経営が悪化し続ければ倒産するのも道理。資本の論理であり、市場経済では逆らうことはできない。韓進海運がそうであったように。
韓国GM工場
|
||||
工場
|
従業員
|
稼働率
|
生産車
|
|
群山工場
|
2,000
|
20%
|
クルーズ
|
オーランド
|
昌原工場
|
1,700
|
70%
|
スパーク
|
ダマス・ラボ
|
富平第1工場
|
10,000
|
100%
|
アベオ
|
トラックス
|
富平第2工場
|
50%
|
マリブ
|
キャブティバ
|
|
韓国GM販売台数推移
|
||||
|
総販売台数
|
うち国内販売台数
|
||
|
台数
|
前年比
|
台数
|
前年比
|
2017年
|
524,547
|
-12.2%
|
132,377
|
-26.6%
|
2016年
|
597,165
|
-4.0%
|
180,275
|
13.8%
|
2015年
|
621,872
|
-1.4%
|
158,404
|
2.6%
|
2014年
|
630,532
|
-19.2%
|
154,381
|
2.2%
|
2013年
|
780,518
|
-2.5%
|
151,040
|
3.7%
|