アイコン 中国の鉄鋼事情 粗悪鉄「地条鋼」生産強制停止 鉄屑輸出急拡大

 

 

米メディアの多維新聞は21日、2017年の中国のくず鉄輸出量が過去最高を記録したと報じた。
中国鋼鉄工業協会のデータによると、2017年の中国のくず鉄輸出量は220万トンで、僅か1000トン前後だった2016年の約2200倍となった。

その原因は、新華社の21日付報道によると、中国では昨年、質の悪い鉄鋼製品である「地条鋼」の全面的な取り締まりと、中周波炉の停止が行われた。
この影響によって7,000万〜8,000万トンのくず鉄が販路を失い、供給過多によってくず鉄の価格が低迷したという。このため40%という高い輸出関税にもかかわらず、大量のくず鉄が輸出されたと見られている。

地条鋼とは、鉄スクラップなどを中周波誘導電気炉と呼ばれる電炉で溶かして製造した成分や品質の安定しない粗悪な鉄鋼・鋼材のこと。通常、原料を厳選した鋳物生産に利用される炉。

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中国政府は昨年10月末までに地条鋼メーカーの生産を停止させたことにより、くず鉄を原料とする電炉メーカーだけでは処理できず、鉄屑業者は急遽東南アジアへ輸出している。
中国の地条鋼生産能力は約1億トンとされ、鉄鋼生産能力の10億トン超の約1割を占める。

中国の鉄スクラップの輸入の8割は日本から輸出されていたが、昨年10月末までに中国では地条鋼の生産が原則禁止されたため、中国の電炉では、国内の鉄スクラップの優先使用に切り替えている。そのため、余剰鉄くずが急遽、東南アジアへ投売りされているもの。

日本では、本来、電炉用である鉄スクラップ価格は2016年を境に上昇し続けている。電炉製品ではH型鋼や厚板鋼板類が多く、オリンピック需要や都心部の大型再開発事業、大公共投資による国内需要が旺盛なことから、こうした中国の衝撃を受けなかったと見られる。

 

日本の鉄スクラップ価格の推移
日本鉄源協会/円
2013年1月
28,700
2014年1月
35,400
2015年1月
24,700
2016年1月
14,400
2017年1月
25,600
2018年1月
35,000
 


中国からの主な輸出国は、インドネシア、タイ、ベトナムなど東南アジア諸国で、主に広東省、江蘇省、浙江省、福建省、海南省など南東部の沿海地域から輸出されている。

鉄の精錬法には、くず鉄(=鉄スクラップ)の使用量が10〜30%と少ない高炉(転炉)製鋼法、鉄屑を原料にする電気炉製鋼法がある。
中国では高炉製鋼法による生産が主体となっている。電気料金が高く、鉄鉱石の価格が低い状態が続く中で、高炉製鋼法の経済性が電気炉製鋼法を逆に上回っていることによるもの。

中国では昨年の集中的な「地条鋼」の取り締まり以降、電炉に加え、高炉製鋼法の転炉によるくず鉄利用量が増えているものの、依然としてくず鉄は供給過剰状態にある。今年、中国政府は電炉製鋼法の普及をリードしていく予定だという。

中国政府は、鉄鋼製品の粗悪品のほか、環境問題(大気汚染+温暖化)も抱え、今冬の集中暖房用熱源をこれまでの石炭から天然ガスに切り替えさせている。一時的にLNGが不足し大混乱に、世界の市場価格も高騰した。

残るは、高炉および熱源の石炭からのコークス生産における大気汚染物質の除去であるが、思い切った対策をとらなければ、触媒による除去装置は高く、老朽化した施設では生産性も問題もあり、大気汚染はなくならない。さらに、ウイグル地区などの原油生産、原油精製施設などの化学コンビナートからの大気汚染物質の多さも異常であり、高炉同様政府主導で触媒装置をつけさせなければ、大気汚染を改善させるためにはまで長期間かかる。中南海の人たちの鼻毛も伸び放題だという。

<PM2.5の飛散状況>
冬にしては濃い赤の部分が大幅に減った。強風が吹いているのか、集中暖房のLNG化の効果か、「地条鋼」取締りの効果が考えられる。

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[ 2018年2月23日 ]

 

 

 

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