アイコン ディスプレイ業界 中国勢の台頭とLGディスプレイ 第3四半期▲400億円の赤字

 

 

LGディスプレイは23日、速報値で第3四半期の営業損失が▲4367億ウォン(約▲404億円)となった。これで3四半期連続の赤字となり、今年の営業損失は▲1兆ウォン(約925億円)台が確実視されている。
原因は、中国勢の低価格液晶表示装置(LCD)パネルの攻勢が大きい。LCDは、まだLGディスプレイの売上高の8割占めている。

売上高は前年同期比▲5.0%減の5兆8,216億ウォン(約5,385億円)、営業損失は▲4,367億ウォン(約404億円)だった。
売上高は昨年同期(6兆1,023億ウォン、約5,645億円)より▲5%減少し、営業利益は赤字に転落した。
赤字額も
第一四半期▲1,320億ウォン(約122億円)→
第2四半期▲3,687億ウォン(約341億円)→
第3四半期▲4,367億ウォン(約404億円)と次第に拡大している。

韓国のディスプレイ業界は、液晶では中国勢に侵食されており、LGディスプレイとサムスンディスプレイは、大型有機発光ダイオード(有機EL/OLED・QLID)パネルの生産拡大や高性能化、新規進出などで難局打開に乗り出している。<最大の原因は、LCDパネルの価格暴落>
米市場調査機関IHSマーケットの資料によると、55インチLCDの平均価格は昨年10月の154ドルから今年10月には98ドルまで▲36.4%下落した。
BOE(京東方科技集団)などの中国メーカーの「低価格」攻勢が決定打となった。

LG、サムスンなど韓国のディスプレイメーカーはLCDの生産量を減らして対応しているが、中国メーカーは第8世代以降のLCDパネルの生産能力を拡大している。
LGディスプレイの売上高に占めるLCDの割合は80%台。そのうえ大型OLEDに強いものの売上高比率は低く、スマホ用(タブレッド・フォルダブル含)の中小型OLEDラインの新規稼動で減価償却費が増加したことも赤字幅を拡大させたという。

<第4四半期も不調予想>
一部のLCDラインの稼動中止と「希望退職」などのリストラによるコスト増などの影響で、▲4千億ウォン(約370億円)近い営業損失が続くものと市場では見ている。
今年に入って第3四半期までの累積赤字が▲9千億ウォン(約832億円)を超えたため、今期12月通期決算では「営業損失▲1兆ウォン台」が確実視されている。

歴代最悪だった2011年の営業損失▲9,240億ウォン(約854億円)より悪い状況。LCDの供給過剰は、第4四半期も続き、2020年にも続くという予測も多い。

ただ、事業の重心をLCDからOLEDに移そうとする努力が、来年の業績には反映されるだろうとの期待はある。
今年9月にチョン・ホヨン社長が最高経営者(CEO)に新たに就任し、構造調整の範囲と速度において根本的な方法を『ゼロベース』で検討している。
LCDラインの単純な稼働率調整ではなく、根本的なライン運営について考えている」と明かした。

来年開かれる東京五輪はテレビ販売量の増加につながる可能性があり、ディスプレイ業界には好材料となっている。
韓国のディスプレイ業界の自救策は、当面「OLED」に集中するとみられる。
同社は、大型OLEDの生産を増やすため今年8月に竣工した中国広州工場について「年内の正常稼動を目指している」と明らかにした。

ただ、今年のOLEDテレビ用のパネル出荷量について「350万台に少し届かない水準」になるだろうとしている。当初の目標値は360万台だった。

中小型OLEDはフォルダブル・スマートフォン市場の拡大などで需要の増加が予想され、大型OLEDはサムスンディスプレイ(QLED)が2021年から量産に乗り出す計画であり、市場拡大が見込まれる。

<新たな設備投資>
LGディスプレイは2022年までに7兆6000億ウォン、サムスン電子は2025年まで13兆1000億ウォン投資する。
過去数年間、中国のLCD(液晶ディスプレー)の低価格攻勢で苦境にあったが、今後は高品質のディスプレイで対応する。
 (LGは大規模なOELD工場を広東省に今年完成させている。)
以上、

<テレビ市場>
IHSマーケットによれば、世界のTV市場は2億2100万台。うち40~49インチTVの割合は、2017年の33.8%から昨年は▲30.6%に下がった。
一方で、50インチ台は22.2%から25.7%に上がり、60インチ台も5.9%から7.1%に増加している。
平均で見れば、今年第1四半期には40インチ台の後半まで上がってきた。大画面化は世界トップ2のサムスンとLGが牽引している。

中国の低価格製品の物量攻勢に、サムスンとLGは2000ドル以上の製品の割合を大幅に拡大させ、高級化戦略を固めている。
(昔、日本勢が韓国勢に世界市場から駆逐された時とまったく同じ動きとなっている)

<大きくなるほど価格は急に上がる>
UHD(4K以上)TVの出荷量はTV全体の44.7%まで上昇しているという(韓国勢の話)。
サムスン電子のプレミアムUHD(=4K以上)TVの基準で、49インチは出庫価格が92万ウォン(約8.4万円)だが、65インチは219万ウォン(約20万円)と2倍以上となる。
両社は80インチ台を超え、最近では98インチ製品も増やしている。
だが、中国勢のTCLやハイセンスは8K-TVの販売を年末からも開始する。

ただ、4Kでごく限れた放送が開始されたばかり、映像ソフトもほとんどない中、高精細化ばかりが強調され、業界を牽引する異様なものとなっている。8Kも含め20東京五輪が起爆剤になる可能性はある。

<争いが絶えない韓国勢・自滅型>
韓国勢は造船業では2010年代前半、世界の大手造船3社でもある大宇造船海洋+現代重工業+サムスン重工業は、世界中で安値受注合戦を繰り広げ、結果、全社が赤字に陥り、15年ころまでには3社とも銀行救済に受け、中でも政府系産業銀行系の大宇造船海洋は巨額粉飾決算まで露見、韓国政府が支援し財務内容を改善させ、政府は今年になり現代重工業に吸収統合させている(世界各国に合併承認の手続き中)。それ裏には中国勢の台頭も見逃せない。

韓国勢は、事業承継でも兄弟間での争いごとが絶えず、企業間ではさらに仲が悪い。それがバイタリティの源泉としたらそれまでだが・・・。サムスン、現代、ロッテ・・・

過去、日本の財閥は、創業家とは一族の家系でもあり、家系の長老たちが承継者を決定していたが、韓国の場合は家族であり、事業承継では兄弟間での骨肉の争いが耐えないものとなっている。

<バトル LG×サムスン>
ディスプレイ業界でも、サムスンとLGは、8Kを実現したLGのOLED(有機発光ダイオード)とサムスンのQLED(量子ドットLED)で争っている。
LGのOLEDは自発光させているが、サムスンはフィルターに量子ドットをバックライトに組み込んだもので、LGはサムスンに対して純粋に量子ドットTVではないと批判し、虚偽広告だとしてサムスンを相手取り訴訟を起こしている。これに対してサムスン側も定義はなく言いがかりだとしてLGを提訴している。
サムスン電子はLCDテレビ市場では圧倒しているが、有機EL(OLED)テレビ市場ではLGが圧倒している。
サムスン電子はスマホ用などの中小型の有機ELを推進、一方、家電メーカーの色彩が強いLGは大型OLEDの開発を進め、その優位性が出ているが、価格が高くなり、利益率も高いものの、サムスンの高精細OCLに価格的な面で負けてしまう。ただ、大きな流れはOLEDに分がある。
すでにLCDディスプレイでは、中国勢はマザーガラスを韓国勢より大きくすることに成功し、それを分割したディスプレイ価格は当然、1枚当たりの単価が下がり、韓国勢は価格についていけず、赤字と成っている。

<バトル LG×SK>
車両用二次電池市場でも、LG化学はSKイノベーションを相手取り、社員を引っこ抜き技術を盗んだとして、米国(特許訴訟と建設差し止め訴訟)と韓国(特許訴訟)で訴訟を起こしている。
車両用電池技術はサムスンSDIとLG化学が先行していたが、中国の保護政策により中国勢のCATLとBYDが巨額の利益を稼ぎ、技術面でも急激に追い上げ、今では韓国勢と技術的な差異はほとんど見られない。
サムスンとLGはすでに開発先行者利益を失し、中国勢と争う局面での戦いとなっている。

こんな感じで韓国勢どうしがやりあう間に、中国勢は韓国勢の技術員(本体・子会社・下請業者にまで至っている)を引っこ抜き、そうした分野でもすでに技術を確立させている。
韓国勢は産業スパイだとして元社員の韓国人を韓国内で法制裁することはできるが、中国企業勢を訴えれば、すぐ中国当局が別途の理由で当該の韓国勢を制裁することから、実際は泣き寝入りとなっている。

<中国勢が造れる物は、韓国勢は負ける>
これは日本勢が韓国勢に負けてきた教訓、そうした技術の製品を製造できる電子部品や素材、各種製造装置などのニッチ分野で技術を磨いてきたことが日本が良い例だろう。
当然、そうした分野で一時代を築き上げた日本製品を支えてきた技術を、元サプライチェーンの企業群が生き残るため、さらに進化させ続け、市場ニーズに応えているということでもある。

文在寅大統領は「日本には2度と負けない」と宣言し、今後、年間2兆ウォンあまりを出し続け、電子製品の部品や材料、各種製造装置の国産化をはかるとしている。しかし、世界の技術も日本の技術も進化し続け、韓国が国産化できたとしても、その時には、日本勢は次世代に進化させており追随できない。

<次世代へ向く日本>
すでに、日本の天野教授(ノーベル賞受賞者)らは、自動車に用いられるパワー半導体ではシリコン系から消費電力が大幅に少なくなる窒化ガリウム系の開発に成功している。当然、自動車用に限られるものではない。その技術の向上と量産化に対する技術を平行して日本勢の電子部品、材料、装置メーカーは研究開発することになる。そして、次々に特許をとっていく。
現在のものでも韓国勢が開発しようにも欧米日の特許に抵触する問題が控えている。銭を与えたら、盗人すればどうにでもなるというのは過去の話。
将来へ向け共存共栄こそがグローバル化社会ではないだろうか。
まだ生き残っている日本勢の家電メーカーのTVが、LGのOLEDを組み込んでいるように。

過去を自ら背負い込んだ生き様を演出し、それをいくら正当化しても、傍から見れば、ポピュリスタ=権力者により国民を洗脳(=ポピュリズム)し、自らが創造した正義に基づく歴史清算政治でしかない。時代は未来のためにある。
 

[ 2019年10月28日 ]

 

 

 


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