アイコン 全東信破産で地銀に焦げ付き拡大 5行で貸出165億円、決済代行融資の盲点


全東信破産、地銀に広がる焦げ付き 東和銀80億円、三十三銀50億円の貸出金に取立不能のおそれ

クレジットカード決済代行を手がけていた大阪市中央区の決済代行会社の破産が、地域金融機関の与信管理に波紋を広げている。同社は7月6日、大阪地裁へ準自己破産を申請し、同日、破産手続き開始決定を受けた。負債は2025年3月期末時点で約1259億2900万円から申請時で1151億円に変動したものの、負債額は今年最大規模となった。

焦点となっているのは、金融機関の貸出金の焦げ付きである。東和銀行は7日、同社に対する貸出金80億円について、取立不能または取立遅延のおそれが生じたと発表した。このうち、担保や引当等で保全されていない58億8600万円について、2027年3月期に全額引当等の処理を実施する。同行の2026年3月期連結純資産に対する貸出金の割合は8.83%にあたる。

三十三フィナンシャルグループも、子会社の三十三銀行が同社向けに50億円の貸出金を有し、取立不能または取立遅延のおそれが生じたと発表した。未保全部分は約27億円で、2027年3月期第2四半期に必要な引当処理を行う。ただし、同グループは2027年3月期第2四半期および通期の連結業績予想に変更はないとしている。

 

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報道によると、影響はこの2行にとどまらない。TBS CROSS DIG with Bloombergは、大光銀行が貸出債権15億円の全額を、高知銀行が貸出債権12億円のうち9億1500万円を、島根銀行が貸出債権8億円の全額を、それぞれ引当処理すると報じている。確認できる範囲だけでも、東和銀行、三十三銀行、大光銀行、高知銀行、島根銀行の5行で貸出債権は少なくとも165億円に上る。

この破産が金融機関に重く響くのは、同社が一般的な物販会社ではなく、カード売上の早期入金サービスを提供する決済代行会社だったためである。同社は飲食店を中心とした加盟店のカード売上代金を、クレジットカード会社に先行して入金する仕組みを提供し、手数料収入を得ていた。帝国データバンクによると、キャッシュレス決済比率の上昇を背景に引き合いが増え、2020年3月期には年収入高約80億円を計上していた。

早期入金サービスは、加盟店にとっては資金繰りを支える利便性の高い仕組みである。一方、運営会社側には加盟店へ先行して資金を支払うための運転資金が必要になる。金融機関から見れば、同社向け融資は、加盟店のカード売上を背景とした資金回転ビジネスへの与信だったとみられる。だが、飲食店の休業・時短で取扱高が減少し、不正加盟店問題で信用不安が表面化すれば、資金調達と資金回収の両面が急速に悪化する。

実際、帝国データバンクは、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大で加盟店である飲食店が時短・休業を余儀なくされ、2021年3月期の年収入高は約50億円に減少したとしている。その後も採算確保に至らず、2期連続で営業段階から大幅な赤字を計上。さらに2024年には、審査が通らない飲食店の加盟店契約を他人名義で結んだとして社員らが逮捕され、会社も書類送検された。信用不安の表面化で資金調達にも支障を来し、事業継続を断念したという。

金融機関にとって問題なのは、単に一社の倒産による損失にとどまらない点である。決済代行会社は、見た目には手数料収入を得るサービス業だが、実態としては加盟店への立替払いを支える資金繰り事業でもある。売上規模や加盟店数が拡大すればするほど、必要な資金量も膨らむ。財務内容や資金管理の透明性が十分でなければ、金融機関は見えにくいリスクを抱えることになる。

TBS CROSS DIG with Bloombergによると、金融庁は信用金庫・信用組合を含めた各金融機関の同社向け貸し出しの実態を把握しており、健全性に大きな懸念はないとみている一方、引き続き状況を注視している。現時点で金融システム全体への波及が懸念されているわけではないが、地域金融機関にとっては無視できない与信費用となる。

今回の焦げ付きは、地銀の貸出審査に新たな課題を突きつけている。カード決済、早期入金、加盟店管理、立替払いといった仕組みは、成長性のあるキャッシュレス市場の一部である。しかし、その裏側では、加盟店の信用リスク、チャージバック、不正契約、資金調達リスクが複雑に絡む。金融機関が表面的な売上や取引規模だけを見て融資すれば、実態以上のリスクを抱え込むことになる。

全東信の破産は、加盟店の未入金問題だけでなく、金融機関側にも大きな焦げ付きを残した。東和銀行80億円、三十三銀行50億円をはじめ、複数の地銀が引当処理を迫られる事態は、決済代行会社への与信が決して低リスクではなかったことを示している。キャッシュレス化を支える事業者の信用力を、金融機関がどこまで見極められるのか。今回の破綻は、地域金融の与信管理にも重い教訓を残した。

 

 

全東信向け債権の取立不能・取立遅延のおそれを公表した主な地方銀行
金融機関 地盤 貸出債権 未保全・引当対象額 対応・影響
東和銀行 群馬県 80億円 58億8600万円 2027年3月期に全額引当等の処理を実施。貸出金は2026年3月期連結純資産の8.83%。
三十三銀行 三重県 50億円 約27億円 親会社の三十三フィナンシャルグループが公表。2027年3月期第2四半期に必要な引当処理を実施。業績予想に変更なし。
大光銀行 新潟県 15億円 15億円 貸出債権の全額を2027年3月期第1四半期に引当処理すると報じられている。
高知銀行 高知県 12億円 9億1500万円 貸出債権のうち未保全部分を2027年3月期第1四半期に引当処理すると報じられている。
島根銀行 島根県 8億円 8億円 貸出債権の全額を2027年3月期第1四半期に引当処理すると報じられている。
確認分合計 165億円 約118億100万円 公表・報道で確認できる5行分の単純合計。

 

[ 2026年7月 8日 ]
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