【リストラ】黒字でも人を減らす企業 相次ぐ45歳・55歳以上の希望退職
「業績が悪化したから人員を削減する」という、かつてのリストラの構図が変わりつつある。足元では利益を確保している企業でも、中高年社員を対象とした早期・希望退職に踏み切るケースが相次いでいる。
東京商工リサーチによると、2025年度に早期・希望退職の募集が判明した上場企業は46社、対象人数は2万781人に達した。募集企業数こそ前年度の51社を下回ったものの、人数は前年度の8326人から約2.5倍に急増している。さらに46社のうち、直近決算が黒字だった企業は32社と約7割を占め、黒字企業の募集人数は1万6908人と全体の81.3%に達した。
従来の「赤字企業による人員整理」だけでは説明できない動きである。
コーセーは黒字でも45歳以上を対象に
直近ではコーセーホールディングスが8月6日、子会社のコーセーとコーセー化粧品販売で希望退職施策「特別ライフチャレンジ」を実施すると発表した。
対象は勤続5年以上で45~59歳の管理職・一般職と、60~64歳の再雇用社員。約80人を募集し、通常の退職金に割増加算金を上乗せする。会社側は実施理由について、成長分野への再投資を加速させるため「費用構造や組織・人員体制の適正化」「業務プロセスの抜本的な改革」を進めるとしている。
コーセーHDは赤字企業ではない。2026年1~6月期は売上高1649億1500万円、営業利益66億1700万円、純利益56億8200万円を確保している。利益は前年同期を下回ったものの、黒字を維持した状態で希望退職に踏み切った形だ。
OKIは55歳以上、募集人数に上限なし
OKIも7月、55歳以上を対象とする「セカンドキャリア支援制度特別措置」を発表した。
2026年10月末時点で55歳以上、勤続10年以上の正社員などが対象で、募集人数は「特に定めない」。8月17日から9月25日まで募集し、10月末に退職する予定となっている。
注目されるのは実施理由である。
OKIは業績悪化だけを理由として掲げておらず、AI・DXの進展による業務プロセスや役割の変化、成長領域への人材シフト、次世代への経験・知見の継承、事業戦略に合わせた人員配置の最適化を挙げている。
2027年3月期についても、会社は純利益180億円を予想している。第1四半期は営業段階では赤字だったものの、純利益は24億5300万円を計上しており、今回の制度発表時点で会社側は通期業績予想を修正していない。
住友重機械は55歳以上、予定を上回る582人
すでに結果が出た企業もある。
住友重機械工業は、国内グループで55歳以上65歳未満、勤続3年以上の社員を対象に希望退職を募集。当初500人程度を見込んでいたが、582人が応募した。退職に伴う加算金など約24億円を費用計上する。
KADOKAWAでも、45歳以上かつ勤続5年以上の一定職級の社員を対象とした早期退職に154人が応募した。同社は年間約17億円の人件費削減効果を見込む一方、割増退職金など約54億円を特別損失として計上する。
45歳、50歳、55歳――対象年齢の設定は企業によって異なるが、中高年層を対象にした制度が目立つ。2025年度にも三菱ケミカルグループでは50歳以上の1273人、明治グループでは50歳以上の44人が制度を利用している。
「赤字だから削る」から「黒字のうちに変える」へ
一連の企業発表から浮かぶのは、人員削減の目的そのものの変化だ。
赤字を止めるため急いで固定費を削るというより、利益や財務余力が残る段階で事業構造を変え、成長分野へ資金と人材を振り向けようとする企業が増えている。
東京商工リサーチの集計でも、2025年度に希望退職を実施した46社のうち36社が東証プライム企業で、募集人数ではプライム企業が全体の96.3%を占めた。業種別では電気機器が15社と最多で、製造業を中心に構造改革が進んでいる。
また、企業が示す理由には「人員体制の適正化」「事業ポートフォリオの見直し」「成長領域への人材シフト」「AI・DXへの対応」といった言葉が並ぶ。
ただし、各社が45歳や55歳という年齢を境にする具体的な理由まで詳細に説明しているわけではない。対象年齢は企業ごとの制度設計であり、一律の基準があるわけではない点には注意が必要だ。
人手不足なのに人員削減という矛盾
日本では多くの業界が人手不足に直面している。その一方で、大企業では中高年を対象とした早期・希望退職が続く。
これは単純な「人余り」とは異なる。企業が必要とする人材や職種が変化し、既存の人員構成とのずれを修正しようとしている面が強い。
しかも今回の動きは、倒産寸前の企業だけで起きているものではない。黒字企業が利益の出ている段階で組織を組み替える「予防的な構造改革」が広がっている。
「赤字になったから人を減らす」時代から、「黒字のうちに人員構成を変える」時代へ。
45歳、50歳、55歳以上を対象にした希望退職の相次ぐ発表は、日本企業のリストラが危機対応型から事業転換型へと変わりつつあることを示している。





