農水省、コメ農家の廃業増で「農地継承」を重視 鈴木農相、新規参入の環境整備へ
農林水産省が、コメ農家の高齢化や後継者不足を背景とする廃業の増加を受け、離農する農家から次の担い手への「農地継承」を重視する姿勢を鮮明にしている。
鈴木農林水産相は2026年9月15日の記者会見で、コメ農家の廃業について、経営者の高齢化や後継者不在によって将来の見通しを立てられず、事業継続を断念するケースが主な要因になっていると説明した。
そのうえで、農家が離農した後の農地を次の担い手へ円滑に引き継ぐとともに、既存農家だけでなく新規就農者や新規参入者が農業を始められる環境を整備することが重要との認識を示した。
農水省、コメ農家の廃業で「後継者不足」を問題視
9月15日の会見では、民間調査で2026年1~8月に米作農家の廃業・倒産が計32件確認されたことについて記者から質問があった。
鈴木農相は、内訳について廃業28件、負債1000万円以上で法的整理に至った倒産4件と説明した。
農水省側が関係先に聞き取りを行ったところ、廃業した農家については、経営者が70代以上と高齢であることや後継者不在などから、将来の事業継続が難しいと判断したケースが主だったという。
一方、倒産した4件については、経営者の健康問題や社内トラブルによる資金繰り悪化など、それぞれ個別の事情があったとしている。
農水省は、コメ農家の撤退を単純な収益悪化の問題としてではなく、農業経営者の高齢化と世代交代、農地を誰が引き継ぐのかという構造的な問題として捉えている。
鈴木農相「大切なのは農地を誰に引き継ぐか」
鈴木農相が今回の会見で特に重視したのが、廃業した農家が耕作していた農地の行方だ。
農業者が高齢化などを理由に米作りから離れても、その水田を地域の別の農家や農業法人、新規参入者が引き継げれば、地域全体としての生産基盤を維持することができる。
一方、引き受け手が見つからなければ耕作されない農地が増え、地域の農業生産力そのものが低下する可能性がある。
鈴木農相は、廃業件数だけを見るのではなく、離農した農家の農地が「誰に引き継がれているのか」が重要との考えを示し、農地の円滑な継承と、新規参入を可能とする環境整備を進める必要性を強調した。
「農地バンク・基盤整備・地域計画」を一体で推進
農水省が進めている農地継承策の中心の一つが農地バンク(農地中間管理機構)だ。
農地バンクは、農地を貸したい所有者から農地を借り受け、規模拡大を希望する農業者や新たな担い手などへ貸し付ける仕組み。離農する農家の農地が分散したまま放置されることを防ぎ、担い手への農地集積・集約化を進める役割を担っている。
鈴木農相は7月3日の記者会見でも、高齢農業者がリタイアした後の農地を地域で引き継ぐことについて、日本の食料供給力を確保するうえで極めて重要との認識を示していた。
その際には、
- 農地バンクの活用
- 土地改良など農地の基盤整備
- 地域計画による将来の農業の姿の共有
を一体的に進める考えを説明している。
今回のコメ農家の廃業増加への発言も、こうした農水省の農地集約・担い手確保政策の延長線上に位置付けられる。
農水省の「地域計画」で10年後の農地利用を明確化
農林水産省は、各地域で将来の農業の姿を話し合う「地域計画」の策定・見直しも進めている。
地域計画では、おおむね10年後を見据え、地域の農地を誰が利用していくのかを明確化。高齢農家の離農や後継者不足をあらかじめ見込み、地域内の担い手や農業法人、新規就農者などへ農地を引き継ぐ体制づくりにつなげる。
単に「後継者がいない農家を支援する」だけでなく、農家が廃業した場合でも農地を地域の生産基盤として残すことが政策のポイントとなっている。
農業経営の継承、農地だけでなく技術・取引先も
農水省では、農地の移転だけではなく「農業経営の継承」そのものへの支援も行っている。
農業経営の継承では、農地やトラクター、コンバインなどの機械・設備といった有形資産に加え、栽培技術、経営ノウハウ、販売先や取引先、人脈などの無形資産も次の経営者へ引き継ぐことが重要になる。
農水省は都道府県段階に相談拠点を設け、就農相談や経営継承、法人化、事業計画作成、規模拡大などについて、専門家派遣や経営診断を含む伴走型支援を実施している。
後継者が家族内にいない場合でも、第三者や農業法人への経営継承、新規参入者への引き継ぎにつなげることが課題となる。
新規就農・新規参入の支援も 農業機械や施設導入を後押し
農地の受け手を増やすため、農水省は新規就農者への支援も実施している。
2026年度の「経営発展支援事業」では、新たに農業経営を始める就農者が経営を発展させるために必要な農業用機械や施設などの導入を支援している。
また、農業経営の世代交代を円滑に進めるため、後継者が経営を引き継いだ後の販路開拓、省力化、新品種導入などを支援する仕組みも設けられている。
農水省が目指しているのは、離農を完全に防ぐことだけではない。高齢化などで農業を続けられなくなった場合でも、農地や農業機械、技術、販路などの経営資源を次の担い手へつなぐ仕組みを構築することにある。
コメ農家の高齢化、「廃業後の農地」が政策課題に
コメ価格が上昇して収益が改善しても、高齢化や後継者不足そのものが解消されるわけではない。
鈴木農相は今回の会見で、民間調査における米作農家の利益動向では、2025年度に8割が増益、9割が黒字だったことにも触れた。
それでも廃業する農家が出ていることは、米作農業の事業継続問題が、単年度の採算だけでは説明できないことを示している。
今後、農水省にとって重要になるのは、農家が廃業するかどうかという件数だけではなく、離農した農家の水田を誰が引き受け、地域のコメ生産を維持していくのかという点になる。
農地バンク、地域計画、経営継承、新規就農支援をどこまで実際の農地の引き継ぎにつなげられるかが、農村の高齢化が進むなかで大きな課題となる。





