コメ価格急落の兆し 高騰から供給過剰へ、政府の後手対応が招いた混乱
コメ価格の先安観が強まっている。米穀安定供給確保支援機構が公表した5月分の「米取引関係者の判断に関する調査」によると、主食用米の価格水準について、向こう3カ月の見通しを示すDIは23となり、前月から5ポイント低下した。50を大きく下回る水準で、取引関係者の間では、今後も米価が下がるとの見方が広がっている。
昨年はコメ不足と価格高騰が家計を直撃した。スーパーの棚からコメが消え、外食や弁当、総菜にも値上げ圧力が及んだ。政府は備蓄米の放出などで対応したが、足元では一転して供給過剰感が強まっている。市場の振れ幅の大きさは、コメ政策の見通しの甘さを改めて浮き彫りにしている。
同調査では、主食用米の需給動向についても現状判断DIが18、向こう3カ月の見通し判断DIが19と低水準にとどまった。いずれも前月から低下しており、需給は緩和方向に傾いている。判断材料として最も多かったのは「国内の在庫水準」だった。流通段階では、在庫の重さが強く意識され始めている。
店頭価格にも変化が出ている。農林水産省がまとめた全国のスーパー約1000店舗のPOSデータによると、5月18日から24日の週のコメ平均価格は5キロ当たり3,692円となり、前週から76円下落した。前年同期比では568円安く、下落率は13.3%。平均価格が3,700円を下回るのは42週ぶりとなる。
消費者にとって価格下落は歓迎できる動きだ。物価高が続くなか、主食であるコメの値下がりは家計の負担を和らげる。一方で、肥料、燃料、物流費、人件費は高止まりしている。米価だけが下がれば、生産者の採算は一段と悪化しかねない。
問題は、価格が上がれば消費者が苦しみ、下がれば農家にしわ寄せが及ぶ構造そのものにある。政府は長年、需要に応じた生産を掲げてきたが、実際には高騰時にも下落時にも後追いの対応が目立つ。備蓄米の運用、作付け調整、流通在庫の把握など、需給を安定させる仕組みが十分に機能しているとは言いがたい。
コメ市場は、昨年までの「不足・高騰」から、今年は「在庫・値下がり」へと急速に局面を変えている。政府に求められるのは、目先の価格対策だけではない。消費者の負担軽減と農家の経営維持を両立させる、中長期の食料政策を示せるかが問われている。





