アイコン 韓国の貿易改善と対中貿易の赤字拡大


昨年、韓国の対中貿易収支が31年ぶりに赤字に転換した中で、今年も2月を除いて全て赤字を免れずにいる。対中輸出は減少した反面、対中輸入依存度はますます増え、過去のように対中貿易収支が回復するのは難しいという憂慮が出ている。

原因は、
1、EVとEV用バッテリー
韓国大手3社=世界大手=米最大手のEV用バッテリーメーカー、材のレアメタル(リチウム+ニッケル+コバルト)や黒鉛まで中国からの輸入に依存しており、EVやPHVの世界販売台数が急拡大、連れてレアメタルの輸入が急拡大、韓国で加工され、韓国系バッテリーメーカーの米工場向けに大量に輸出されている。
また、韓国産EVは韓国で生産されたバッテリーを搭載しており、その材料も中国製であり、中国を除いてもEVやPHVの世界販売台数が増加すればするほど中国産材の韓国輸入が拡大する構図となっている。
(中国にはCATLやBYDなどバッテリーメーカーがあり、韓国からバッテリー製品を輸出する余地は少ない)

 

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2、中国製EVの輸入拡大
EVも韓国から大量に欧米へ輸出されているが、韓国では中国製のEV(乗用+バス+商用)が
輸入販売されている。
中韓はFTAを締結しており、関税などで輸入を抑制すれば、中国から即報復される関係にある。
 中国BYDは2014年から米国にEVバス製造工場を持ち、加州など米国市場へ供給しており、そうしたバスも中国製が韓国へ輸出されている。

3、米中貿易戦争により中国から東南アジアへ工場移転
中国は鴻海のアップル-iPhoneのように世界中から部品・部材を集め、人海戦術で組立て、製品化する工程を得意としていたが、サプライチェーンが寸断された新コロナ下、そうした部材を国内で生産する技術開発やシステムを拡大、電子製品部材の韓国からの輸入が大幅に減少していることにある。

4、中国も韓国も東南アジアへの輸出拡大
欧米経済の低迷、米国の中国製の高関税による忌避、欧州経済の低迷により、中国の輸出は欧米向けが低迷。米中貿易戦争では中国進出の外資系工場や中国企業が東南アジアへ製造工場を移転させ、中国から東南アジアへの輸出が拡大している。連れて韓国製の部品部材もそうした中国から移動した中国系や外資系の東南アジアの工場向け輸出が拡大、韓国から中国向けが減少していることにもある。結果、東南アジア・インドから欧米への輸出が増加している。

5、半導体材料も中国依存度高い
韓国では半導体生産も回復したが、その生産材料も中国依存度が高く、半導体の生産が増
加するに連れ、中国からの半導体材料の輸入も拡大する。また、韓国勢はサムスンが西安市に巨大半導体工場を持ち、SKも無錫工場(DRAM)と米インテ.ルから1兆円あまりで購入した大連工場(NAND+SSD)を持ち、中国の需要低迷でこうした韓国勢の中国製半導体が韓国へ輸入されている関係にもある。

6、半導体の固まりスマホ需要の一巡、買い替え需要が市場形成
スマホの需要低迷があげられる。大手スマホメーカーはサムスン以外中国で生産しているが、中国はじめ、世界的な需要低迷により、出荷台数が頭打ち(15億台⇒13億台)になっており、メーカーは付加価値を高めたプレミアムスマホの販売に注力して業績を伸ばしている。しかし、そうした分野もすでに価格競争領域となっている。プレミアムスマホは従来スマホに比し3~5倍の半導体を使用し、連れて半導体需要も増加してきたが、すでに一巡している。今後期待されるのは新コロナ特需に沸いたパソコン・タブレッド・サーバー・データセンター用がその反動で低迷してきたものの、AI搭載機器が急拡大しており、連れて半導体もGPUを補完するHBM(広高帯域メモリ半導体)が急拡大している。しかし、それは韓国製(SK先行)が主であり、中国への輸出はトレサビリティを厳格に運用しなければ米 Chips法に抵触する可能性もある。

韓国国際金融センターが5月14日発表した「韓国の対中国貿易構造変化および展望」によると、2023年の韓国の対中貿易収支は▲181億ドルの赤字を記録した。
今年も対中貿易収支の赤字基調は続いている。

今年1月▲16億9千万ドルの赤字、
2月は2億3千万ドルの黒字
3月は▲8億8千万ドルの赤字
4月は▲19億6千万ドルと赤字幅が拡大、昨年4月の▲22億7千万ドル以来、1年ぶりに大赤字を記録した。
2024年5月1~10日の対中貿易収支(通関基準暫定値)も▲3億42百万ドルの赤字となっている。

このような流れは、対中輸出が減った反面、主な半導体材料の対中輸入依存度が大きいためだ。中国経済は2016年から中速成長基調に転換した。特に2022年のコロナ封鎖政策と不動産市場の低迷が重なり、内需需要が大きく萎縮した。その影響で中国の輸入は2021年の22%から2022年に1%、2023年には-6%を記録するなど、2年連続で大幅に減少した。

景気低迷により、中国は第3国の迂回生産と自国内の自主調達に集中した。
中国は生産要素価格を引き上げ、米国の規制を避けてASEAN(東南アジア諸国連合)への直接投資を増やし、海外生産を拡大した。
結果、中国内の単純委託加工貿易が占める割合は2015年の27%から昨年は15%まで減った。

中国の技術力が先端分野を中心に韓国を追い越した中、中国内では愛国消費ブームが起き、輸入品の自国産代替の動きも活発となった。
その影響で韓国の輸出品が一時期居場所を失ったりもした。
科学技術情報通信部によると、2022年から中国は情報通信技術を中心に主要先端産業分野で韓国を追い越した。

一方、韓国の対中輸入依存度は、主要原材料やIT部品などを中心にますます拡大している。
中国依存度が半分以上の輸入品目は30%に達する。
最近、エコ、先端素材関連の輸入も急増している。
韓国貿易協会によると、2023年基準で、2次電池の核心素材である「水酸化リチウム」の輸入は前年比53.2%増、「ニッケル、コバルト、マンガン(NCM)」の輸入は31.1%増加している。

このような要因で過去水準の対中貿易収支回復は期待しにくいというのが国際金融センターの分析となっている。
新コロナ下に累積した大規模な在庫が減り、今年IT製品の需要が9%増えて一時的に対中輸出が増加する可能性はあるものの、長期的に米中対立による対中輸出が大幅に減るだろうと予想されている。
(次期米大統領がトラの場合、対中関税を60%にすると豪語しており、半分としても現行の高関税がさらに高くなる)

国金センターは中韓競争が深刻化するだけに、人工知能(AI)半導体などで技術競争力を維持しながら対中国半導体輸出を維持するための米中間の実益確保戦略が必要だと提言している。同時に、米国やASEANなどに輸出市場を多角化する必要性も提起された。・・・現実そうなっている。

国際金融センターのキム・ボン責任研究員は「米国の対中半導体牽制が拡大し、韓国の対中国輸出と黒字が大きく減る恐れがある」とし、「半導体は韓国全体輸出の約30%、貿易黒字の46%を占める」と説明した。
続けて「米国と連帯を通じて中国と技術格差を維持しながら米国の規制が厳しくない汎用半導体部門では中国と一定水準の協力も模索しなければならない」と強調している。

<ウクライナ問題が韓国の対米輸出拡大と対中輸入拡大の主要因>
韓国は米要請に基づき、ウクライナへ155ミリロケット砲弾を110万発以上米経由で直接間接に提供しており、米バイデン政権はその見返りに韓国に対してIRA法やChips+法の運用を大幅に緩和している。そうしたことも対米輸出拡大=対中輸入拡大の構図となっている。
米国は中国製黒鉛(リチウムイオン電池の陰極材料)も規制対象から緩和する方針を打ち出している。製造する意志があればどこでも製造できるものだが、世界最大の産炭国である中国の石炭燃焼による発電の電炉と溶鉱炉によりレアメタルが生産され、それも世界的需要拡大で生産量が急拡大、結果、地球環境の悪化を急速に進めている。
来年、リスクトラの場合、韓国も日本も対米黒字問題=リスクを抱えどうなることやら。
以上、韓国紙等参照


スクロール→

韓国の貿易推移 /億ドル

 

輸出

前年比

輸入

貿易収支

22/1.

555

15.6%

606

-51

22/2.

542

21.3%

535

7

22/3.

638

18.8%

638

0

22/4.

578

12.9%

602

-24

22/5.

616

21.5%

632

-16

22/6.

577

5.3%

601

-24

22/7.

602

8.5%

653

-51

22/8.

566

6.4%

660

-94

22/9.

572

2.3%

610

-38

22/10.

524

-5.9%

592

-68

22/11.

518

-14.1%

588

-70

22/12.

548

-9.7%

596

-48

22年計

6,836

6.0%

7,313

-477

23/1.

463

-16.6%

590

-127

23/2.

500

-7.7%

554

-54

23/3.

549

-13.9%

596

-47

23/4.

495

-14.4%

520

-25

23/5.

521

-15.4%

543

-22

23/6.

543

-5.9%

530

13

23/7.

505

-16.1%

487

18

23/8.

520

-8.1%

510

10

23/9.

547

-4.4%

510

37

23/10.

550

5.0%

534

16

23/11.

556

7.3%

520

36

23/12.

576

5.1%

531

45

23年計

6,325

-7.5%

6,425

-100

24/1.

548

18.4%

544

4

24/2.

524

4.8%

481

43

24/3.

566

3.1%

523

43

24/4.

562

13.5%

547

15

24小計

2,200

9.6%

2,095

105

 

[ 2024年5月15日 ]

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