米政府が民間企業に直接出資 レアアース『要塞化』戦略の全貌
トランプ政権が進める対中経済戦略が、新たな段階に入った。米政府がレアアース関連企業「USAレアアース(USAR)」に約16億ドル(約2500億円)を投じ、株式取得と巨額融資を組み合わせた異例の支援に踏み切る見通しとなった。関税による圧力から一歩踏み込み、政府が民間企業に直接関与する産業政策へと軸足を移した点で、象徴的な動きだ。
今回の枠組みでは、米政府がUSAR株式の約1割を取得するほか、CHIPS法の枠組みを活用した低利融資を実行する。USARはテキサス州西部のラウンドトップ鉱山の権益を持ち、オクラホマ州で磁石製造工場を建設中だ。採掘から分離・精製、最終製品であるネオジム磁石までを国内で完結させる「マイン・トゥ・マグネット」戦略は、軍需、EV、AI分野の供給網を中国依存から切り離す狙いがある。
背景には、中国がレアアース供給で圧倒的な地位を握り、輸出規制を外交カードとして使ってきた現実がある。米国はこれまで採掘能力はあっても加工工程を中国に頼らざるを得なかった。今回の投資は、その弱点を国家主導で埋めにいく試みといえる。
注目されるのは、自由主義経済を標榜する米国が、事実上の「国家資本主義」に踏み込んだ点だ。資金調達を主導する投資銀行カンター・フィッツジェラルドは、ハワード・ラトニック商務長官(前会長)と縁が深い。政権中枢と民間資本が一体となり、スピード重視で戦略産業を育成する構図は、トランプ流の政策運営を色濃く映す。
この動きは日本にも波及する。日本企業もレアアースや磁石で中国依存が高く、米国の供給網が立ち上がれば「フレンド・ショアリング」の受け皿となる可能性がある。自動車や電子部品産業では、調達戦略の見直しや地域経済への影響が現実味を帯びてくる。
今後の焦点は、米政府がMPマテリアルズなど他のレアアース関連企業にも支援を広げるか、日本や豪州との連携をどこまで打ち出すかだ。レアアースを巡る地政学は、関税の時代から国家投資の時代へと確実に移行しつつある。





