南海フェリー、28年3月に事業撤退へ 半世紀の歴史に幕/「40億円」の壁と物流・防災への大打撃
和歌山と徳島を最短距離で結んできた「海の道」が消失する。南海電気鉄道は30日、子会社の南海フェリーが2028年3月末をめどに事業を撤退すると発表した。燃料費高騰と老朽船の更新費用が重くのしかかり、半世紀にわたり紀伊水道を支えた航路は、存続の瀬戸際に立たされている。
迫る「老朽化」のタイムリミット
撤退の引き金を引いたのは、待ったなしの状況にあった船体の更新問題だ。現在運航している2隻のうち、1999年に就航した「かつらぎ」が更新時期を迎えている。
新造船の導入には約40億円以上の巨額投資が必要となるが、2021年度以降、債務超過に陥っている同社にその余力はなかった。1隻体制での縮小運航も検討されたが、メンテナンス時の欠航リスクや運航効率の観点から「事業継続は不可能」との非情な結論が下された。
「陸路」に押され続けた30年
南海フェリーの苦難は、1998年の明石海峡大橋開通から始まった。かつては本州と四国を結ぶ主力ルートの一角を占めていたが、高速道路網の整備により旅客・貨物ともに陸路への転移が加速。さらに近年のコロナ禍による人流抑制と、拍車をかけるような原油価格の高騰が、経営の屋台骨を完全にへし折った形だ。
2024年度の旅客数は約35万7千人と、ピーク時から大きく落ち込んでおり、親会社である南海電鉄としても「これ以上の支援は経営リスク」と判断せざるを得なかった。
「2024年問題」と「防災」への逆風
今回の撤退発表は、社会的な要請との間に大きな矛盾を孕んでいる。
・物流の停滞: トラックドライバーの残業規制に伴う「2024年問題」への対策として、長距離運転を回避できるフェリーへの期待(モーダルシフト)が高まっていた矢先の決定となった。
・防災機能の喪失: 紀伊水道をまたぐこの航路は、南海トラフ巨大地震などで明石海峡大橋などの陸路が寸断された際、四国と本州を繋ぐ「唯一の代替路」として期待されていた。このルートが消えることは、広域災害時における物資補給網に巨大な空白地帯を生むことを意味する。
自治体に突きつけられた「公助」の選択
和歌山県の宮崎知事は、航路存続に向けた関係機関との連携を強調しているが、その道は険しい。民間一社での維持が困難である以上、今後は「公設民営方式(自治体が船を所有し、民間が運航する)」など、多額の公金投入を前提とした議論が不可避となるだろう。
従業員の確保が困難になった場合は、2028年を待たずに撤退が前倒しされる可能性も示唆されており、和歌山・徳島両県には一刻も早い「次の一手」が求められている。





