長崎IR、再び動く。今度の舞台はハウステンボスではなく≪大村湾≫か
https://news.yahoo.co.jp/articles/e786520fdc7bcf99e20793c60899e0838a9a658b
一度、国から「不認定」の烙印を押された長崎IR。
佐世保市のハウステンボスを舞台に、県を挙げて走ったはずの九州・長崎IR構想は、令和5年12月、国によって認定されなかった。
理由は、資金調達の確実性が十分とは言えないことなど。
要するに、夢は大きかったが、財布の中身と事業の裏付けが国に通らなかった、ということである。
あれから長崎IRは、終わった話になったはずだった。
ところが、ここに来て再び火がつき始めた。
今度のキーワードは、佐世保ではない。
大村である。
大村商工会議所が、令和8年8月末から9月初旬にかけて「大村湾グリーンIR誘致検討協議会(仮)」を設立する方針を示し、園田裕史大村市長はその顧問就任を引き受けたという。
さらに大村市議会では、村崎浩史市議が市内へのIR誘致について質問している。
園田市長は、現時点で具体的な候補地を示す段階ではないとしながらも、協議会の中に研究チームが設置され、専門家を交えた議論が行われると説明した。
つまり、まだ場所は決まっていない。
しかし、議論の土俵は作る。
この言い方が、いかにも行政らしい。
まだ何も決まっていないと言いながら、気がつけば関係者だけでテーブルができている。
公共事業でも大型開発でも、いつも最初はこの形である。
「勉強会です」「研究です」「可能性の検討です」
そして、いつの間にか「地域の総意」という衣をまとっていく。
県議会でも動きがあった。
大村市選出の小林克敏県議が、IR誘致の動きについて県の後押しを求めたのだ。
これに対して平田研知事は、まずは地元経済界や立地自治体など関係者間で議論し、理解される必要があると前置きしつつ、前回の九州・長崎IRの認定申請で得られた経験やノウハウ、国や企業とのネットワークから得られる情報を大村市と共有するなど、可能な範囲で連携に努めたいと答弁した。
これは、かなり前向きな答弁である。
「県として誘致します」とまでは言わない。
しかし、「情報共有する」「連携する」「前回のネットワークを活用する」と言っている。
つまり、県庁の引き出しにしまってあったIRファイルを、もう一度開く用意はあるということだ。
しかも今回は、大村湾である。
大村市には長崎空港がある。
県央に位置し、長崎市、諫早市、佐世保市にもつながる。
新幹線、空港、高速道路という交通インフラの話を絡めれば、絵は描きやすい。
さらに大村市は、長崎空港の24時間化などインフラ整備を目指している。
IRという巨大な看板を掲げれば、空港24時間化、道路整備、周辺開発、観光振興、雇用創出、税収増という、いかにも夢のある言葉が並ぶ。
だが、ここで忘れてはならない。
IRとは、統合型リゾートというきれいな名前をしているが、その中核にはカジノがある。
カジノを含むからこそ、巨額の投資が呼び込める。
カジノを含むからこそ、国の厳しい審査がある。
カジノを含むからこそ、依存症対策、治安、地域社会への影響、資金調達の透明性、事業者選定の公平性が問われる。
前回の長崎IRは、まさにその資金調達の確実性でつまずいた。
今回、大村湾IRを語るのであれば、まず問われるべきはここである。
誰が金を出すのか。
どの事業者が組むのか。
県や市はどこまで関与するのか。
土地はどこなのか。
インフラ整備費は誰が負担するのか。
そして、失敗した場合の責任は誰が取るのか。
「グリーンIR」という名前も、なかなか味わい深い。
カジノにグリーンをかぶせる。
環境、再生可能エネルギー、持続可能性、観光、国際交流。
今どきの美しい言葉をまとわせれば、カジノの匂いは薄まる。
しかし、どれだけ緑色の包装紙で包んでも、中身がIR(カジノ)であることに変わりはない。
もちろん、大村市や県央地域に大きな起爆剤が必要だという議論は分かる。
人口減少、若者流出、地域経済の停滞。
このままではいけないという危機感も理解できる。
ただし、大型開発ほど、最初の説明が大事である。
最初に曖昧なまま走り出すと、後で必ず疑念が噴き出す。
前回の長崎IRも、最後は「なぜ不認定だったのか」「誰が責任を取るのか」「約11億円を投じた誘致活動は何だったのか」という疑問を残した。
その総括が十分でないまま、今度は大村湾で再挑戦というのであれば、県民は当然こう思う。
また始める前に、まず前回の失敗をきちんと説明してくれ。
大村商工会議所は、今後、勉強会などを開き、年内から年度内を目途にIRの再誘致構想を取りまとめ、大村市や県に提言したい考えだという。
国の新たな申請期間は、令和9年5月6日から11月5日まで。
つまり、時間はあるようでない。
この短い期間で、地元理解、候補地、事業者、資金計画、県市の役割分担、依存症対策、交通インフラ、環境影響、議会説明、住民説明まで詰められるのか。
そこを曖昧にしたまま「夢のある話です」と進めるなら、また同じ轍を踏む。
長崎IR、再び。
今度は大村湾。
夢のリゾートになるのか。
それとも、二度目の空手形になるのか。
県民が見るべきは、派手な構想図ではない。
誰が、どこで、誰の金で、誰の責任でやるのか。
そこに尽きる。
JC-net・日刊セイケイ編集長・中山洋次





