長期金利3%目前 約30年ぶり高水準、住宅ローンや企業融資にも影響へ
日本の金利が、長く続いた「超低金利」の時代から大きく変わり始めている。
17日の東京債券市場では、長期金利の代表的な指標となる新発10年物国債の利回りが一時2.930%まで上昇した。日本相互証券によると、1996年10月以来、約30年ぶりの高水準となった。
さらに18日午前には一時2.945%まで上昇し、3%が目前に迫っている。
なぜ長期金利が急上昇しているのか
最大の理由は、日本銀行が近く追加利上げに踏み切るとの見方が強まっていることだ。
日銀はすでに政策金利を1%程度まで引き上げているが、円安による輸入物価の上昇などから、物価が再び強く上昇することへの警戒を強めている。
市場では、次回9月17~18日の金融政策決定会合で追加利上げが行われる可能性が意識されている。
金利が今後さらに上がると予想されれば、現在発行されている低い利率の国債を持つ魅力は低下する。そのため国債が売られ、国債価格が下落する一方、利回りは上昇する。
円安と物価高も利上げ観測を後押し
日銀が利上げを続ける可能性が意識されている背景には、円安と物価上昇がある。
円安になると、原油や天然ガス、食料品、原材料など輸入品の価格が上昇しやすい。企業の仕入れコストが増えれば、最終的には商品の値上げを通じて家計にも影響が及ぶ。
日銀も、原油高や円安などを背景に物価が想定以上に上昇するリスクを警戒している。
物価上昇を抑える方法の一つが利上げだ。金利を引き上げることで経済活動をある程度抑え、物価の過熱を防ぐ狙いがある。
政府の財政への不安も金利を押し上げる
今回の長期金利上昇には、日銀の金融政策だけでなく、日本の財政に対する市場の警戒も影響している。
政府は消費税減税などを含む経済政策を進める方針だが、大規模な財政支出が続けば、国債の発行額が増える可能性がある。
国債の供給が増えるとの見方が強まれば、国債価格には下落圧力がかかり、結果として長期金利が上昇しやすくなる。
さらに問題なのは、金利が上昇すれば政府自身が支払う国債の利払い費も増えることだ。
財務省の試算では、想定金利が1%上昇した場合、国債費は2029年度に約3.8兆円増える可能性がある。
財政悪化への懸念から金利が上がり、その金利上昇によって国の利払い費がさらに増えるという悪循環も警戒される。
住宅ローンにはどう影響する?
長期金利の上昇は、私たちの生活にも関係する。
最も分かりやすいのが住宅ローンだ。
住宅ローンのうち、長期間金利を固定する「固定型」は長期金利の影響を受けやすい。このため長期金利が上昇すれば、新たに住宅ローンを組む人の固定金利も上昇する可能性が高い。
一方、多くの住宅購入者が利用している「変動型」は、日銀の政策金利や銀行の短期金利の影響を受ける。
日銀が9月以降も利上げを続ければ、変動型住宅ローンの金利にも上昇圧力がかかる。
例えば住宅ローン残高が大きい30~40代の家庭では、返済額の増加によって、外食や旅行、買い物などに使えるお金が減る可能性もある。
企業の借入金利も上昇へ
企業にとっても金利上昇は重要な問題となる。
工場や店舗の新設、設備投資、運転資金などで銀行融資を利用している企業は多い。
これまで日本では低金利が長期間続いたため、企業は比較的安い金利で資金を借りることができた。
しかし、日銀の利上げが続けば銀行の貸出金利も上昇する。
特に借入金の多い中小企業では、売上が変わらなくても利払い負担だけが増え、利益を圧迫する可能性がある。
原材料費、人件費、物流費などの上昇に加え、今後は「金利負担」も企業経営を圧迫する新たなコストとなりそうだ。
預金を持つ人にはプラスの面も
金利上昇は、すべての人に悪影響を与えるわけではない。
銀行預金の金利も上昇するため、多額の預金を持つ世帯には利息収入が増えるというメリットがある。
住宅ローンなどの借金が大きい若い世代には負担となる一方、金融資産を多く持つ高齢世帯などには恩恵が大きくなる可能性がある。
つまり金利上昇は、世代や資産状況によって影響が大きく異なる。
「長期金利3%」が日本経済の分岐点に
日本では長年、政策金利がほぼゼロ、長期金利も極めて低い状態が続いてきた。
政府も企業も家計も、事実上「金利はほとんど上がらない」という前提で経済活動を続けてきた。
しかし現在、政策金利は1%程度まで上昇し、10年国債利回りも3%目前まで上昇している。
今後の焦点は、日銀が9月に追加利上げを行うかだけではない。その後も利上げを続けるのか、そして長期金利が3%を超えて定着するのかだ。
長期金利3%は単なる金融市場の数字ではない。
住宅ローン、企業融資、国の利払い費、預金金利まで幅広く影響する。日本経済が本格的な「金利のある世界」へ移行する象徴的な水準となりそうだ。





