アイコン 借金の漬物国パキスタンの金融危機 IMF本格救済へ前進


中国も手に負えなくなったパキスタン、債権カットさせるしかないのだが・・・。
通貨暴落、外貨不足、対外債務過大、高インフレに陥っているパキスタン、前回IMFは中国に債務カットさせなければ支援できないとしたところ、中国が債務支払いの猶予と融資により難を逃れた。しかし、今回は状況が異なる。

パキスタンではすでに電力不足に陥り、産業崩壊の危機にある。
IMFは2019年策定の65億ドルの支援パッケージを再始動、洪水により昨年8月に11億ドルの融資プランが提示されたが、パキスタン政府はIMF条件を拒否し暗礁に、そして今回は電力危機にまで及び、再度交渉に入り、やっと2月10日合意に達したと報道されている。

中国の一帯一路覇権戦略は、相手国にインフラ整備(融資)を提案することにあるが、すべては中国の利益になるように組み立てられている。
(インフラ整備工事そのものも中国企業が行い、資材も労力もほとんどを中国が提供し、中国へ還流させている)

パキスタンは、中国の融資により英国統治時代からの老朽化鉄道の改修・高速化や高速道、地下鉄(ラホール)、港湾整備(グダワル港湾)がなされ、中国にとっての「中国パキスタン経済回廊」(CPEC)構築、パキスタンのインフラ整備というより、中国の利敵行為としてインフラ整備が進められている。
パキスタンでは2015年から対外債務が急増、そのまま増加し続けてきた。
2022年にもパキスタン鉄道は中国から大量のグリーン車を導入している。
パキスタンは現在、中国政府からの新たな借款100億ドル(約1兆3千億円)により、1700キロの鉄道整備に入る計画も持つ。昨年の大洪水で路線が寸断されているところも多い。

 

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老朽化鉄道路線の改修は必要だろうが、一方で借款により地下鉄なども開通させており、チグハゲ極まりない。
(鉄道路線は時間がかかり、バスや飛行機に旅行者・移動者を奪われている現実もある)

2018年、パキスタンは資金問題から、「中国パキスタン経済回廊(CPEC)」の基本計画を縮小しようとしたが、地域利権が絡み、政争の原因にもなり、はっきりした態度を示していない。現実的には工事予算を縮小させるのが精一杯。

2018年には前政権のカーン首相(東西等距離外交推進も中国に依存した人物)が、北西部ペシャワルと南部カラチ間の主要路線「ML-1」、総延長1872キロに必要な中国融資82億ドル計画を62億ドルに20億ドル削減した。しかし、中国はパキスタン政界に賄賂により深く浸透しており、結果、2022年の弾劾クーデターに発展させたものと見られる。

(米国のアフガン侵攻では、パキスタンは空港を米国に使用させる代わりに日本も含め巨額の無償援助を条件にし、その資金により中国からも最新戦闘機を購入していた。日本は米国から要請があれば、すべて投げ出す金魚の糞の政権の国でもある)

パキスタンに残るのは借金の山だけ、農業以外これといった産業もなく返済財源はない。
現在では、資金不足から産業を動かす燃料を購入できず、発電もできず、機械を動かすことができず、縫製産業など多くの産業が停止状態、大型商業施設も電力不足で休業状態が続いている。
パキスタンにしては、中国も国策以外、中国の民間企業は外貨の前金でしか原材料を輸出していない。

パキスタンは実質経済破綻しており、その破綻から早期に経済回復させるには、国の支出を大幅カットして、まずは産業を軌道に乗せるエネルギー確保に動くしかない。それにしても対外債務が大きく何としよう。

中国経済も現在どん底、パキスタンを支援融資するなどのユトリはない。
スリランカがそうであったように更なる支援や債務カットには応じない、そうした中国による借金の漬物国は、もともと財政が脆弱であり、一度債権カットをすれば、全世界の中国による漬物国が、一斉にIMFに支援を求め、中国の債権カットが雪崩れ込んでくる可能性もある。

(中国の一帯一路覇権戦略はすでに全世界を網羅しており、戦略上の国、資源を見返りにさせた国に対して行われている。その軍資金は対米貿易黒字により賄われている)

中国としては、一時的に債権返済は猶予するものの、債権カットにはこれまでの経過から応じない。
IMFは、救済申請国に対しては、審査の上、一定条件下で自立できるまで経済の繋ぎ資金を貸し付けるものであり、中国の債権に対する元利返済金を融資するものではない。
IMFも救済を前提にし、へっぴり腰で債権カットを条件とさせないため、根本的に再建できる国などあろうはすがない。中国が債権カットに応じない限り、西側も、中東国も債権カットには応じない。

石油代もUAEやサウジからの借金になっており、イスラム圏で友好国でもあるものの、そうした中東国さえ、石油をさらに輸出して債権を増加させる向きはない。あくまで銭しだいのお付き合いでもある。

パキスタンにおけるも一つの問題は政争、
イムラン・カーン前首相(PTI/元有名なクリケット選手)は2022年4月、弾劾により追放されたが多くの支持者がおり、弾劾は無効だと各地で集会を開催し続け、シャバズ・シャリフ現政権と対立が激化している。昨年暮れカーン氏自身も銃撃を受け負傷もしている。

中国のとの関係強化の歴史、
もともとインドとパキスタンを一緒に統治していた英国、分離独立するに当たり、宗教的にも犬猿の仲の印パは対立、印中対立とも関係し、対インド政策において中パは関係を深めていた。

2013年、パキスタン・ムスリム連盟ナワーズ・シャリーフ派(PML-N/ムスリム保守派)のナワーズ・シャリーフ首相が政権(2回目/1回目は1997~99年)につき、中国の「中国パキスタン経済回廊」(CPEC)に迎合し、巨額融資により、交通・港湾インフラ計画を策定、ナワーズはパキスタンを借金漬けにした。

しかし、2017年に汚職で失脚(最高裁10年の禁固刑で収監中)。
2017年~2018年はシャーヒド・ハーカーン・アッバースィー首相となったが、国会多数派のPML-Nの暫定首相だった。
2018年8月パキスタン正義運動(PTI/中道)のイムラン・カーンが(PTI創設者)首相となったが、2022年4月に下院で弾劾され失職。
現在、汚職で失職し実刑判決を受けたナワーズ・シャリーフ元首相の実弟であるシャバズ・シャリーフ(PML-N)が首相になっている。

スリランカとまったく同じ様相。経済破綻しIMFの お世話になっているスリランカは、中国賄賂を独り占めにしていた元政権者の兄は軍施設に逃げ込み、兄から交代して政権を握っていた弟は海外逃亡し政権離脱し、現在、当時の野党が政権についている。

IMFの介入は、公務員の大幅削減、年金支出の大幅カット、石油類への補助金支出の停止など国民に対して大きな犠牲を強いることから、現政府が選挙を意識して耐えられず、IMFとの契約履行を放棄する可能性も高い。IMFからの融資を継続して受けることが途中でできなくなる可能性も高い。
 
さらに、国内にはISやパキスタンタリバン運動など反政府武装勢力もおり、テロも繰り返えしており、国防費を削るらは限度がある。
IMFはパキスタン財政問題を根本から解決することは当然できない。一時的に自主再建を手伝うだけだ。
パキスタンの対外債務は大きすぎ、大きく成長するような産業もなく、今回逃れたとしても再び同じことは繰り返される。

例え、一時的にスリランカ同様、救済(債権に対する元利金の返済一時凍結+IMFの緊急支援融資)されたとしても、国民の意識・体質は変わらない。
逆にIMFが批判にさらされ、IMF介入が終了したとしても、政府の投資に対する贈収賄は再び横行し、また、中国がおいしい餌をぶら下げ、再びパキスタンもスリランカも政権や国民が飛びつき、借金の漬物国に再変身、同じことは何度でも繰り返される。

甘い汁(利権)に飢える国民(=票)、選挙で決定する現行制度の国政、民主主義の根本的な限界だろう。
国民の意識が変わらない限り、借金の罠からは抜け出せない。
似たような国は足下も含めいくらでもある。

★為替は対ドルPKR推移
2008年、60PKR/対外債務は400億ドル
2013年、100PKR/対外債務は600億ドル
2019年12月、150PKR/対外債務は1,100億ドル
2023年2月10日、269PKR/対外債務は1,269億ドル(22/9)
★2020年のGDPは2,617億ドル
★政府債務の2022年11月残は189億ドル。
 (交通機関建設等の対外債務は公社なり企業にしているものと推察される)
★ 人口は2億43百万人(2022年)
★ 主要産業、農業、米・綿・小麦・綿布・ニット・綿糸・縫製品など、中国パキスタン経済回廊(CPEC)により、最近はセメントや鉄鋼生産も徐々に増加している程度。
★ 海外からの出稼ぎ送金も経済基盤の一つとなっている。
2019年までは月50億ドル程度だったが、新コロナによる国内経済疲弊に伴い、送金額が増加し22年夏場までに80億ドルまで増加、しかし、現在は世界的な同時不況により65億ドル前後まで減少している。輸出額よりはるかに大きく、年間にすれば7~800億ドル前後となりかなり大きい規模。
日本でのパキスタン人は、正規・不正規の中古車をアジア・中近東・アフリカへ輸出している関係が多い。人里離れたヤードの中は外部から見えない密室となっている。

 


スクロール→

パキスタンの現状

/億ドル

23/1.

22/12.

22/9.

対外債務

 

  

1,269

外貨準備高

 

114

133

輸出

19

19

 

貿易収支

-23.1

-23.7

 

経常収支

 

-12

-24

対ドルPKR

269

226

227

金利

17.0%

16.0%

15.0%

インフレ率

27.6%

24.5%

23.1%

食料インフレ率

42.9%

35.5%

31.7%

失業率

 

2021年 6.5

 

[ 2023年2月12日 ]

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