アイコン ゼネコンの工事関係損失引当金23期30%増、 22年期も83%増


売上高2000億円以上の竹中含むゼネコン大手17社の工事引当金を調べてみた。最近いろいろな施工問題がクローズアップされており、引当金はその裏付けとなる。22年3月期には前期比83%増加、23年3月期はさらに30%増加している。
主に資材高による採算悪化、円安による海外工事の採算悪化などから事前に損失の引当金を計上するゼネコンが多くなっている。

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多くなってきたゼネコンの工事引当金

 

  /億円

※引当金

前期比

 

2015/3.

2,403

 

 

2016/3.

2,031

-15.5%

 

2017/3.

1,659

-18.3%

 

2018/3.

1,811

9.2%

 

2019/3.

1,383

-23.6%

 

2020/3.

1,286

-7.0%

 

2021/3.

1,383

7.5%

 

2022/3.

2,532

83.1%

 

2023/3.

3,292

30.0%

 

引当金の種類

 

・完成工事補償引当金

 

・工事損失引当金

 

・偶発損失引当金

 

・修繕引当金

 

・施工不良関連損失引当金

 

当該のゼネコンとは竹中含む売上高2000億円以上の上位17社、非上場竹中除き入れず。

 
 

 

(1/2)ゼネコン各社の工事関係引当金の推移  /億円

 

27/3.

28/3.

29/3.

30/3.

1/3

 

15/3

16/3

17/3

18/3

19/3

鹿島

638

506

189

199

255

大林

151

152

107

93

63

清水

322

267

160

142

113

大成

444

254

190

125

62

竹中(12

247

279

318

280

274

長谷工

35

48

49

50

65

インフロニア

55

40

39

18

19

戸田

98

46

73

45

79

五洋

37

38

36

28

29

三井住友

38

38

33

32

34

熊谷

84

158

148

122

118

安藤間

61

60

42

438

113

西松

73

27

29

29

17

東急

35

38

30

48

55

高松CG

7

6

8

8

3

奥村

59

51

40

30

18

東亜

19

23

168

124

66

 合計

2,403

2,031

1,659

1,811

1,383

 前期比

 

-15.5%

-18.3%

9.2%

-23.6%

 

 

(2/2)ゼネコン各社の工事関係引当金の推移  /億円

 

2/3

3/3

4/3

5/3

 

20/3

21/3

22/3

23/3

鹿島

253

275

258

274

大林

170

165

562

462

清水

100

177

541

695

大成

58

44

174

512

竹中(12

162

189

196

319

長谷工

42

44

58

48

インフロニア

20

21

21

15

戸田

76

63

64

127

五洋

39

23

46

120

三井住友

34

39

222

412

熊谷

85

21

14

15

安藤間

100

93

59

34

西松

18

113

115

28

東急

59

63

154

183

高松CG

6

12

7

6

奥村

17

13

15

20

東亜

47

28

26

22

合計

1,286

1,383

2,532

3,292

前期比

-7.0%

7.5%

83.1%

30.0%

1引当金には、進捗している工事の損失見込みや資材高等による工事損失の引き当てや完成後、建物の傾斜、鉄筋指定数の未了によるクラッシュ・傾斜、土壌改良などでの施工不良など、建設工事における資材高などほぼ不可抗力の損失見込み、および施工不良による損失見込みとあり、完成建設物での問題は完成後10年・20年・30年後に瑕疵が問題として表面化、分譲マンションの事業主の不動産会社の対応やゼネコンの対応でそれぞれことなる。

<熊谷組>
2015・16年、熊谷組は住友不動産の分譲マンション1棟で問題発覚、建て直しで決定、しかし、一連の5棟、残り4棟でも数棟で問題が検出され、熊谷は全5棟を建て替えた(マンションの販売は2003年)。

<三井住友建設>
一方、2016年発覚、三井住友建設が建てたマンションで杭の不良施工で傾斜、建て替えが決定、ところが同時に施工した一連のマンションもほかの建物も全部建て替えることで住民と不動産会社が決定、不動産会社の三井不動産レジデンシャルは三井住友建設に対して全額相当の506億円の損害賠償請求訴訟を起こしている(現在)。

修復可能なのか、問題のないマンションも建て替えという不動産会社の信用をどう査定するか、裁判所の判例が今後すべてに適用されることになる。
それに住んでいた期間の査定・評価も興味深い。建設会社の瑕疵問題は引渡し後10年と法律では定められている。

<若築建設>
若築建設は、2020年に発覚した1995年に完成した分譲マンション(60戸/V6番館)、杭の長さが足りず傾斜、建て替えたが費用は事業主のJR九州+若築+福岡商事が割合の応じ負担したようだ。

<清水建設>
2021年3月には、野村不動産の億ション、全3棟計716戸、清水建設が施工、不良工事が発覚している。協力業者の施工会社は出入り禁止になっていることだろう。
ボード類や床が問題となっており、内装の一部改修工事で対応できようが、居住人によっては一時引越しも必要だろう、長期にわたり大変な作業となる。 
なお、清水の22年・23年期の引当金の増加は、材料費高騰および中国などからの材料調達難による損失懸念、海外工事での円安による工事コストの大幅増加により、引当金を多く積んだとしている。

<大成建設>
珍しく大成も仲間に入った。2023年4月、NTT都市開発発注の札幌市中央町のビル、鉄骨を組み上げた段階で鉄骨が傾斜、そのデータを改ざんして報告していたことから、設計監理会社が激怒、全部、建て直しとなった。下部はほとんどで完成していた。

スーパーゼネコンの現場所長や監督たちは本当に偉そうにしているが、それでも頭が上がらないのが日建設計、大手ゼネコンの所長さえ弱音吐いていた。設計どおりに造れと融通がまったく利かない設計事務所だ。

<大林組>
2021年には、大林組は国交省発注の災害復旧「千曲川護岸工事」で1万3千ヶ所で問題も不正施工、結果、取壊し、工事をやり直すしかないというスーパーゼネコンあるまじき工事をしていた。

<三井住友建設>
三井住友建設は22年・23期、都心の再開発の大型再開発ビル建設現場の地下工事で、鋼材を中心とした資材価格の高騰や工場製作部材を使った躯体の施工工法を採用したものの、工場製作躯体の一部材が不合格となり、やり直しなど大きな損失を出し続けている。

<五洋建設>
五洋建設は23年3月期、シンガポールの大型土木工事において、現地地盤条件の不一致に加え新型コロナウイルス感染症の影響等により前期に約 60 億円の工事損失を計上しまが、その後の資材価格等の上昇や施工加速のための費用増加を精査し、さらに今期工事損失引当金繰入額を含む約50億円の工事損失を追加計上した。
また、新たに香港の土木及び建築工事、有償及び無償の ODA 工事において、いずれも資機材価格や燃料費等の高騰に加え、個別工事の施工リスク(技術的課題、資機材調達、下請契約等のリスク)や為替リスクの顕在化により合わせて工事損失引当金繰入額を含む約 110億円の工事損失を計上したとしている。

<東急建設>
海外子会社における工事採算の悪化および過年度引渡し物件に係る瑕疵補修費用を
見込み引当金を計上したとしている。
21年に工事した相鉄線海老名駅改良工事で基礎杭30本の先端不良が発覚、22年やり直し工事が発生し、60億円の損金を計上していた。

[ 2023年5月23日 ]

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