アイコン ネクスペリア社NXP半導体を中国送付停止 中国は製品輸出停止 中蘭戦争


オランダ政府は10月1日、安保上問題があるとして、オランダ国内にある半導体メーカー、ネクスペリア・テクノロジーズ(Nexperia/中国企業の完全子会社)を接収した。
中国にある自社の組立工場向けのウエハー供給=輸出を停止したとロイターがネクスペリア社の顧客宛ての書簡で確認したと報じた。

世界の自動車メーカーを悩ませる供給不足を一段と悪化させる恐れがある。
ステファン・ティルガー暫定最高経営責任者(CEO)の署名がある29日付の書簡によると、同社は26日付で南部広東省の東莞工場向け供給を停止した。
理由は「現地経営陣が合意済みの契約上の支払い条件を順守しなかったことが直接の原因」としている。

(10月17日、中国での報道では、ネクスペリアの中国事業所の社員に対する給与資金が、オランダ本部から送ってこず、支払われていないという)

ネクスペリアはオランダで大量の半導体を生産しており、車載用から家電ようまで広く供給している。これらの半導体の多くは中国でパッケージ化され、中国から、世界の各メーカーへ輸出されている。

 

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●中国商務省は10月4日、これを受け、パッケージ済みの半導体製品の輸出をすべてストップさせている。

ネクスペリア社暫定CEOのNXP半導体の中国子会社へ輸出を続けても、顧客のもとへは行かないことから、今回、別のところでパッケージングする意向のようだ。
パッケージングしたNXP半導体は、自動車メーカーごとに異なると見られ、パッケージングの設計製造図面は各自動車メーカーが所有しているものと見られる。
暫定CEOの書簡では、「契約上の義務が完全に履行されない限り、当該拠点へのウエハー供給を再開することはできない。ネクスペリアは顧客への供給を確実に継続できるよう代替策を模索している」と説明した。

今回の決定は、中国子会社の東莞工場や中国市場からの撤退を意図するものではなく、問題解決に向けて引き続き全力を尽くすとしている。
 オランダ政府は安保上問題があり接収したというが、詳細を明らかにしていない。
今回の暫定CEOの書簡では、製造した半導体をマレーシアやフィリピンのパッケージング・検査のNXP現地法人に依頼して、顧客に送付を再開させるようだが、工場規模が違いすぎ、新たに人を採用しても戦力化には時間がかかり、別途のパッケージ会社にパッケージングと検査を依頼した方が回復には早いと見られる。

中国自動車最大手のBYDはすでに代替品を利用してテストしたがうまくいかず、代替品で解決するには相当な時間がかかると、実質、不可能に近いと悲鳴を上げている。
昨年3200万台を販売した中国自動車メーカーにとっても大問題となっているようだ。

NXPのマレーシアやフィリピン工場で3割増しで操業させたとしても、5割に届かず、別のパッケージング会社依頼しても、受入態勢もあり、軌道に乗るには1~2ヶ月はかかると見られる。

すでに10月28日からホンダのメキシコ工場は当該の半導体不足から生産を停止している。主力車を生産しており、ほかの工場から半導体を回し、1週間程度で生産は再開するだろうが、ほかの生産車両に影響する。
ホンダだけの問題ではなく、全世界の車両メーカーも同じく影響を受ける立場にある。重機や家電など広い産業にも影響する。

<NXP半導体、元はフィリップスの半導体部門>
ネクスペリア・テクノロジーズ社はもともとオランダの電気機器の巨人、フィリップスの半導体部門会社で、フィリップスが2006年に半導体部門の経営を切り離し売却、半導体部門社はNXPとなり、NXPは2016年にさらに半導体製造部門のネクスペリア・テクノロジーズを切り離し中国投資家グループに売却、中国投資家グループは、その後の2018年に当時無名の聞泰科技(Wingtech Technology)が約5千億円の巨額で購入、現在、聞泰科技がネクスペリア社の100%親会社となっている。

<レアアース問題をクリアしたばかりなのに・・・>
11月1日発効の中国のレアアース輸出規制問題は米中首脳会談で、1年先送りで決着、ただ、今回はレアアースに関する付帯事項が多く発表されていたことから、付帯事項に関連して一部のレアアースの輸出が規制される可能性もある。
一応、レアアース問題は妥協・妥結したところにNXP半導体問題が浮上している。

<新コロナ下の半導体不足の苦い経験>
2010年10月の旭化成半導体工場の火災を起因とした半導体買占め騒動の大混乱、多くの自動車メーカーが一時生産停止や生産調整を強いられた。
今回は、自動車メーカーが協調して買占め合戦は生じないだろうが、半導体のパッケージ製品そのものがなくなり、その影響は、すでにホンダの工場出ているように、今後、多くの自動車メーカーが大混乱に陥ることになる。
それと共に米中に加え、中蘭貿易戦争が勃発することになる。オランダのASMLは最先端の線幅極細の極端端紫外線露光装置(EUV/2nm量産成功)を持ち、オランダは最先端装置の中国輸出については米国からストップをかけられているものの、線幅が大きい装置についてはASMLが中国企業へ輸出している。

●ネクスペリアは、本社のオランダで半導体やパッケージングの設計と製造を行い、ドイツと英国にもウエハー製造拠点を持つ。パッケージング・検査については、マレーシアとフィリピンにも工場を持つが両国の能力は全体の30%で、中国広東省の東莞工場(ネクスペリアの中国法人)が70%を担っている。

<パッケージングの際、国家安全上の何か悪さをしていたのだろうか>
★10月22日、オランダの報道機関のHet F.D.は、ネクスペリア本社が顧客に対し「中国工場で製造されたチップの品質は保証できない」と警告し、中国製品の購入を控えるよう勧告したと報じた。 
ネクスペリアのヨーロッパ側は「中国側の生産工程をもはや管理できない」ことを理由に挙げている。これに先立ち、中国側のネクスペリアは、給与や業務費用についてオランダ本部から支払いがなされておらず、すでに中国政府の管理下にあり、オランダ本社の指示に従わない方針を表明している。

昨年11月には、中国シャオミ製のエアフライヤー(ノンオイルフライヤー)が、電源を入れ料理中、その周りで会話している音声データで捉え中国へ送信させていたという、購入して持ち帰った段階で位置情報や個人情報も取得していたという事件が英国で発生していた。

また、昨年9月にはイスラエル機関が、レバノンの敵対勢力のヒズボラがポケベルを発注したことを知り、ハンガリーのポケベル製造会社に対して超高性能爆薬とウイルスを仕込ませて製造させ・・・イスラエル機関が通信でポケベルを一斉爆発させ、子供含む数千人が死傷した事件もあった。)

 

[ 2025年11月 4日 ]

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