取引量6割減の衝撃 コメ市場はなぜ止まったのか
コメの流通現場で異常事態が続いている。価格は依然として前年比約4割高、60kgあたり3万5千円台という高水準にあるにもかかわらず、取引量は直近5年で最低水準に落ち込んだ。高値なのに売れない――市場は深刻な停滞に陥っている。
背景にあるのは、昨秋の「令和の米騒動」だ。JAなどが農家からの集荷競争を背景に、異例の高い概算金(仮払い金)を提示。これが実質的な下限価格となり、市場全体の価格水準を押し上げた。結果として、卸売価格は高止まりしたままとなっている。
一方、卸売業者は昨年末に高値で仕入れた在庫を抱える。ところが、消費者の購買意欲は鈍く、販売は伸び悩む。追加仕入れを控える「買い控え」が広がり、取引量は大幅に減少。価格と数量が同時に機能不全を起こす、いわば“高値・不成立”の状態だ。

消費側にも変化が出ている。スーパーでは5kg4,000円前後の価格が常態化し、消費者は割安なブレンド米や、パン・麺類へとシフト。主食としてのコメ需要そのものが細りつつある。
では価格は下がるのか。市場では「先安観」も浮上している。農水省の見通しでは、2026年の民間在庫は10年ぶりの高水準に回復する見込みだ。高値在庫を抱える業者が資金繰りのために“損切り”に動けば、価格が一気に調整局面に入る可能性もある。
ただし、それは市場にとって痛みを伴う調整だ。現在の高止まりは、生産者の収入確保と消費者負担の増大という両極を生み、流通を硬直させている。主食であるコメが停滞する構図は、日本の食料政策と価格形成の脆さを映し出している。
「令和の米騒動」は終わっていない。2026年のコメ市場は、在庫と価格の綱引きが続く不安定な局面にある。





