なぜ「町の焼肉屋」から消えるのか 倒産26件すべて小口倒産、焼肉業界で進む二極化
焼肉店の淘汰が止まらない。
東京商工リサーチによると、2026年上半期(1~6月)の焼肉店の倒産は26件となり、前年同期を8.3%上回って2年連続で過去最多を更新した。
ただ、注目すべきは倒産件数そのものではない。
倒産した26件は、すべて負債5000万円未満だった。さらに従業員10人未満、資本金1000万円未満の企業がそれぞれ25件を占めた。つまり現在の焼肉業界で起きているのは、大型焼肉チェーンの一斉淘汰というより、地域で営業してきた小規模な「町の焼肉屋」が経営を続けられなくなる現象である。 (株式会社日本インタビュ新聞社)

飲食店全体よりも小規模倒産への偏りが大きい
この特徴は飲食業全体と比べると、さらに鮮明になる。
帝国データバンクによると、2026年上半期の飲食店倒産473件のうち、負債5000万円未満は369件で全体の78.0%だった。
これに対し、東京商工リサーチが集計した焼肉店は26件すべてが5000万円未満。調査対象や集計方法が異なるため単純比較はできないものの、焼肉店では小規模事業者への経営圧力が特に強く表れている。 (TDB)
背景にあるのが、焼肉店特有の「原価を下げにくい」という問題だ。
牛肉は高い。しかし焼肉価格を同じだけ上げるのは難しい
焼肉店の最大の商品は当然ながら肉である。
農畜産業振興機構によると、米国の牛肉卸売価格は2026年5月、1キロ当たり1408円換算となり、前年同月を10.7%上回った。米国では牛の飼養頭数減少などを背景に牛肉生産が減少しており、高値が続いている。 (alic|独立行政法人 農畜産業振興機構)
一方、総務省の消費者物価指数を基にした焼肉(外食)の価格指数は、2026年6月に2020年=100に対して118.3となり、前年同月比では4.1%の上昇だった。 (かぶれん)
もちろん米国の牛肉卸売価格と国内焼肉店の販売価格を直接比較することはできない。しかし、肉だけでなくコメ、野菜、電気、ガス、人件費まで上昇するなか、客に提示する価格だけを原価に合わせて引き上げることが難しい構造は見えてくる。
大手チェーンなら大量仕入れや物流の効率化、メニュー変更などでコストを吸収できる余地がある。
一方、1店舗あるいは数店舗を運営する町の焼肉店では、仕入れ数量による価格交渉力が弱く、厨房設備や店舗運営に必要な固定費も店舗数で分散できない。
「肉が高くなったから値上げする」という単純な対応では客離れを招きかねず、値上げしなければ利益が削られる。
さらに日本人の「牛肉消費」そのものが減っている
もう一つ見逃せないのが需要側の変化だ。
農林水産省によると、日本人1人当たりの年間牛肉消費量は2019年度の6.5キロから、2024年度には5.9キロまで低下した。
約5年間で9%程度減った計算になる。
これに対し、2024年度の豚肉は13.2キロ、鶏肉は14.9キロだった。物価高が続くなか、家庭では牛肉より比較的安価な豚肉や鶏肉を選びやすい環境になっている。 (農林水産省)
焼肉店には「外食だからこそ牛肉を食べる」という需要もあるため、家庭消費の減少がそのまま焼肉店の客数減少を意味するわけではない。
それでも、牛肉価格が上昇する一方で、牛肉消費量が伸びていないという需給環境は、焼肉店にとって追い風とは言い難い。
大手でも客数は伸びていない
大手やチェーンなら安泰というわけでもない。
日本フードサービス協会の2026年6月調査では、「焼肉ファミリーレストラン」の売上高は前年同月比99.5%、客数98.8%、客単価100.7%だった。
外食産業全体の売上高が103.3%だったのに対し、焼肉業態は前年をわずかに下回っている。 (一般社団法人日本フードサービス協会 |)
つまり現在の焼肉市場は、「焼肉人気がなくなった」という単純な話でも、「大手だけが絶好調」という構図でもない。
市場全体の成長が鈍るなかで、資金力や仕入力、広告力、店舗運営の効率で勝る企業ほど耐えやすく、その余力を持たない小規模店から市場退出を迫られているとみる方が実態に近い。
焼肉店倒産の本質は「肉高」より経営規模か
2026年上半期の焼肉店倒産26件のうち、販売不振を原因とするものは23件、88.4%を占めた。
原材料価格が高いだけなら、価格を転嫁できれば経営は維持できる。
問題は、客が離れるため十分な価格転嫁ができないことにある。 (株式会社日本インタビュ新聞社)
牛肉価格の上昇、光熱費、人件費、需要の伸び悩み。
これらが同時に押し寄せた結果、最後に差となって表れているのが「企業規模」と「資金力」なのかもしれない。
焼肉店の倒産増加を「物価高倒産」とだけ捉えると、この変化を見落とす。
2026年上半期に倒産した焼肉店がすべて負債5000万円未満だったという数字は、焼肉業界でいま起きていることが、単なる不況ではなく、町の小規模店を中心とした業界再編である可能性を示している。
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