【北海道】「馬追和牛」の長沼フアームが破産 負債12億5600万円、コロナ禍と飼料高騰響く
北海道夕張郡長沼町で肉牛の生産・販売を手掛けていた(有)長沼フアーム(北海道夕張郡長沼町東7線北5番地、法人番号:1430002050890)は、2026年8月31日、札幌地裁へ破産を申請し、同日、破産手続き開始決定を受けた。
負債総額は一般債権者37名に対して約12億5,600万円。
同社は1969年12月設立の肉用牛生産業者で、長沼町の「長沼本場」と安平町の「安平分場」で肉牛を飼育。黒毛和牛の自社ブランド「馬追和牛」を展開し、出生から育成、肥育、出荷までを一貫して管理する生産体制を構築していた。
ピーク時には交雑種を含め約1,500頭規模を飼育していたが、以前から赤字や債務超過を抱えるなか、新型コロナウイルス禍による和牛需要の落ち込みや輸出停滞、その後の飼料価格高騰などが重なり、資金繰りが限界に達した。
長沼フアームの会社概要と破産
| 法人名 | 有限会社長沼フアーム |
|---|---|
| 法人番号 | 1430002050890 |
| 所在地 | 北海道夕張郡長沼町東7線北5番地 |
| 設立 | 1969年12月 |
| 主要事業 | 肉用牛の生産・肥育・販売 |
| 自社ブランド | 馬追和牛 |
| 破綻形態 | 破産手続き開始決定 |
| 決定日 | 2026年8月31日 |
| 裁判所 | 札幌地方裁判所 |
| 負債 | 約12億5,600万円(一般債権者37名) |
正式な法人商号は「長沼フアーム」だが、会社公式サイトなどでは「長沼ファーム」の表記も使用されていた。
自社ブランド「馬追和牛」を展開
長沼フアームは、黒毛和牛の自社ブランド「馬追和牛」を生産していた。
「馬追和牛」は、長沼町を中心に出生から育成、肥育、出荷までを一貫して管理する体制で生産され、同社がブランド和牛として展開していた。
長沼町の「長沼本場」と安平町の「安平分場」を生産拠点とし、安平分場で繁殖・育成した牛を長沼本場で肥育するなど、一貫生産体制を構築していた。
生産された馬追和牛は、関東や関西など都市圏向けにも出荷され、自社通販でもステーキ、すき焼き用、ローストビーフ用などの商品を販売していた。
また、長沼町のふるさと納税返礼品としても、馬追和牛のももステーキやサイコロステーキなどが採用されていた。
「馬追和牛」は長沼フアームが自社ブランドとして展開していた黒毛和牛です。一方、馬追和牛を原料として使用した他社商品や、過去に馬追和牛を取り扱った飲食店などは長沼フアームの自社ブランド・自社店舗ではありません。本記事ではこれらを区別して記載しています。
ピーク時は約1500頭を肥育、売上高9億円超
長沼フアームは事業規模を拡大し、ピーク時には交雑種を含め約1,500頭の肉牛を飼育していた。
2014年12月期には売上高約9億3,921万円を計上するなど、道内でも一定規模の肉牛生産事業を展開していた。
一方、同年度には約1億6,872万円の赤字を計上し、債務超過に陥ったとされる。その後も減収傾向が続き、赤字を計上する年度もあるなど、財務面では厳しい状態が続いていた。
胆振東部地震、コロナ禍で和牛需要が低迷
長沼フアームは、経営再建を進めるなかで複数の外部環境の悪化にも直面した。
2018年9月の北海道胆振東部地震では、安平町の安平分場が震度6強の揺れに見舞われた。同社はその後、復旧・復興を進めていたが、さらに新型コロナウイルス感染拡大による影響を受けた。
外食や観光需要が大幅に落ち込み、同社は2021年時点で、A3ランク和牛の市場相場が大幅に下落したとして経営への影響を公表していた。
東京商工リサーチなどによると、コロナ禍以前は中国や台湾、香港など海外への販路拡大を図っていたものの、新型コロナウイルスの感染拡大で輸出が停滞。国内需要の低迷も重なり、2021年12月期の売上高は約3億4,353万円まで減少した。
飼料価格高騰で生産コスト上昇
コロナ禍後も経営環境は改善せず、近年は飼料価格などの高騰による生産コストの上昇が収益を圧迫した。
畜産業では飼料費が生産コストに占める割合が大きく、価格上昇の影響を受けやすい。長沼フアームでも経営規模を縮小し、2025年の飼養頭数は約600頭まで減少したとされる。
2025年12月期の売上高は約3億8,880万円にとどまり、この期も大幅な赤字を計上。債務超過額は4億円を超えるまでに拡大していた。
| 時期 | 主な状況 |
|---|---|
| 2014年12月期 | 売上高約9億3,921万円、約1億6,872万円の赤字となり債務超過 |
| 2018年 | 北海道胆振東部地震で安平分場が被災 |
| 2020年以降 | コロナ禍で外食・観光需要や海外販路が打撃 |
| 2021年12月期 | 売上高約3億4,353万円 |
| 2025年 | 飼養頭数約600頭まで縮小 |
| 2025年12月期 | 売上高約3億8,880万円、債務超過額4億円超 |
| 2026年8月31日 | 札幌地裁へ破産申請、同日開始決定 |
農場HACCP・JGAP取得、安全管理にも注力
長沼フアームは、生産規模だけでなく安全性や生産管理にも力を入れていた。
2019年には農場HACCPとJGAPの認証を取得。牛の出生から肥育、出荷まで個体ごとに管理するなど、安全・安心な牛肉生産を打ち出していた。
自社ブランド「馬追和牛」の認知拡大にも取り組み、インターネット販売やふるさと納税などを活用して販路を広げていた。
以前からの債務超過にコロナ・飼料高騰が重なる
長沼フアームの破綻は、コロナ禍や飼料価格高騰だけを原因とするものではない。
同社は2014年12月期の段階ですでに大幅な赤字を計上し、債務超過に陥っていた。その後、海外販路の開拓や自社ブランド強化などで業績改善を目指していたものの、売上高は減少傾向が続いた。
そこへ北海道胆振東部地震、新型コロナウイルスによる和牛需要の急減、輸出停滞、さらに飼料価格などの生産コスト上昇が重なった。
飼養頭数の削減などで事業規模を縮小したものの、赤字と債務超過を解消できず、最終的に資金繰りが限界となり、今回の破産手続きに至った。
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