2016年 オピオイド系鎮痛剤 アメリカの平均寿命縮める 薬物中毒・麻薬
米疾病対策センター(CDC)の調査で薬物中毒死が急増していることが明らかになっている。
とりわけ、医療用麻薬オピオイドによる被害が深刻で、米国人の平均寿命を縮める一因になったとみられている。
医療用麻薬オピオイド(原料アヘン/常習性あり)を製造するメーカー「インシス・セラピューティクス」が医師に働きかけ、医師が緩和供与・大量供与を進めた結果とされる。インシスのCEOは逮捕されたが、すでに後の祭り。
同社は経営不振からオピオイド系鎮痛剤の拡販により高収益企業に変身していた。
CDCが21日公表した統計によると、2016年は約6万3600人が薬物中毒で命を落とした。人口10万人当たりの死者数は、前年の16.3人から19.8人に増加。1999年の3倍超に上っている。
(米国でオピオイド系鎮痛剤の処方を受けていたのは1000万人以上、うち200万人以上が中毒患者と見られている)
このうち鎮痛剤として使われる「フェンタニル」など合成オピオイドによる中毒死は、人口10万人当たりで2015年の3.1人から2016年は6.2人に倍増。
専門家は米紙ワシントン・ポスト(電子版)に、統計に反映されないケースを含めれば「オピオイドによる死は、ピーク時のエイズより多い」との見方を示している。
米紙ニューヨーク・タイムズなどによると、米国では1990年代から、製薬会社の働き掛けもあって医療用麻薬が急速に普及し、医師の過剰な処方で依存症に陥る患者が増加。一方で、近年、ヘロインなど違法麻薬の価格下落に加え、入手が比較的容易な非合法フェンタニルのメキシコや中国からの流入が、中毒死急増の背景にあるとみられている。
こうした事態に、当局よりオピオイド系鎮痛剤の処方が制限されたことから、中毒患者たちが、こうした違法麻薬に手を出し、死亡者数が急増したとの見方もなされている。
一方、21日公表された16年の米国人の平均寿命は、男女平均で78.6歳と2年連続で短くなった。
ポスト紙によれば、2年連続で縮まったのはインフルエンザが流行した1962~63年以来となる。
死因別では、トップ2の心臓病とがんの死亡率がいずれも下がったのに対し、薬物中毒死の多くが含まれる「不慮の死」は上昇した。
薬物中毒による死亡率は、男性が女性の約2倍、年代別では25~54歳の層が高く、平均寿命を縮めた。
オピオイド系鎮痛剤メーカー「インシス・セラピューティクス」
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連結/千$
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16/12期
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15/12期
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14/12期
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13/12期
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12/12期
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売上高
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242,275
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330,797
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222,125
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99,289
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15,476
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営業利益
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7,326
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92,430
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64,023
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32,559
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-23,440
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税引前利益
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8,424
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92,968
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64,176
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31,577
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-24,378
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当期利益
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7,590
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58,476
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37,977
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40,377
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-24,378
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・オピオイド系鎮痛剤=医療用麻薬は2016年から社会問題表面化。
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・オピオイド系鎮痛剤を拡販させたことにより急成長していた。
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・2017.10.26日CEO逮捕/上場企業
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