2018年上半期 韓国の自動車産業 下請け事情 3社に1社赤字 現代・GMは
今年上半期(1~6月)の自動車部品会社(現代車グループ系列会社除く)の経営実績が大幅に悪化したことが分かった。
韓国国内の自動車産業が沈滞する中、自動車企業の経営実績が悪化し、自動車系列会社→1、2次協力会社の順に経営負担が転嫁されるという見方が現実化している。
<下請け企業の悪化顕著>
韓国産業研究院が9月13日、現代車グループ系列会社でない自動車部品会社のうち「株式会社の外部監査に関する法律」(外監法/ほとんど上場会社)対象の100社を調査した結果、上半期に営業赤字を出した会社は31社にのぼった。
自動車企業の系列会社でない中堅自動車部品会社3社のうち1社が赤字だった。
調査対象会社は前年上半期に比べて売上高が▲3.8%減少し、営業利益は半減(▲49.2%減)した。
現代車グループをはじめとする国内自動車4社の輸出と国内販売が減り、収益性が急激に悪化している。
調査対象のうち売上高が減少した会社は63社にのぼる。営業利益が増加したところは18社にすぎなかった。
前年上半期の黒字から赤字に転換したところは21社で、2年連続で上半期に赤字となった11社のうち6社は赤字幅が拡大した。
<現代自動車の営業利益率は上半期3.5%増>
国内最大自動車企業の現代車グループは、今年上半期の営業利益率が3.5%増だったものの、2007年(3.8%)以来11年ぶりに3%台に落ちた。2016年の5.5%、昨年の4.7%と比較すると収益性の悪化が進んでいる。
自動車業界は、自動車企業の収益性悪化が協力会社に転嫁されれば、さらに深刻な実績不振につながると懸念してきた。
今回の調査結果で「大企業がくしゃみをすれば中小企業は風邪をひく」という通説が実証されている。
収益性の悪化で雇用も減少し、調査対象のうち雇用動向の把握が可能だった95社の雇用者数は1026人減の5万1,464人(1社当たり平均従業員数は542人)だった。
人員削減をした会社は半分を超える56社で、新規採用をしないところも6社あった。
韓国中央銀行の業種別就職誘発係数によると、自動車業種は8.6人と、製造業のうち高い。就職誘発係数とは財貨10億ウォン(約1億円)分を生産するために発生する直接・間接就業者数を意味する。
<自動車産業の雇用状況>
雇用情報院によると、自動車製造業の雇用保険被保険者数は、昨年7月の40万988人から今年7月には39万1,132人に減少した。
産業研究院側は「自動車産業全体の雇用は昨年8月から減少し始め、7月には前年同月比▲1万1000人減、8月には同比▲8,900人減となり、2ヶ月間に2万人近い雇用が消えた」と明らかにしている。
<韓国政府も支援体制に乗り出す>雇用問題が一番大事な韓国政府
政府も自動車部品産業の沈滞が深刻だという判断のもと、(9月)12日から産業通商資源部・企画財政部など関係部処と共同で現場実態調査を実施している。
今年に入って現代車の1次協力会社リハンが(企業再生作業)を申請し、ダイナメック・イウォンソリューテックなど中堅部品会社が法定管理(会社更生法に相当)に入るなど、自動車部品業界の「連鎖産恐怖」が現実化するという懸念が強まっている。
政府は実態調査を終えしだい追加の資金支援をはじめ
▼今年末に終わる個別消費税引き下げの期間延長
▼企業構造調整促進法の再立法
▼各種税制支援
▼銀行貸出満期の延長
など可能な支援をすべて検討するという。
専門家は大手自動車企業に依存する部品産業の生態系が変わらなければ、自動車部品産業の競争力を確保するのは難しいと指摘している。
ソウル大経営学科のキム・スウク教授は「国内の自動車部品会社は、これまで販売台数が拡大し続け、自動車メーカーに依存してきたため、市場が悪化すれば自活力を発揮できない」とし、「2・3次協力会社の場合、短期間に生存能力を高めるのも難しく、適当な政策的代案も見いだすのが難しい」という見方を示した。
<構造問題とコスト上昇問題>
現代自動車と起亜自動車、韓国GM、ルノーサムスン、双竜自動車の韓国の大手5社の売上に占める人件費率は平均12.29%。一方、トヨタは半分以下の5.85%に過ぎない。
さらに、現政権が圧力を持って進める非正規雇用の正規雇用化、労働時間短縮によるコストアップも加わってくる。また、末端下請業者では、最低賃金の大幅増や労働時間短縮の影響を受け、材料コストは上昇するばかりになってくる。
トヨタより2割安価に販売し、そのコストパフォーマンスで成長を遂げてきた韓国勢のビジネスモデルが崩れ去ろうとしている。
さらに中国勢の追い上げは、吉利がボルボを買収し、ダイムラーの筆頭株主に躍り出るなど脅威だが、自社製品の品質面にいたるまで大幅に向上させ、それも韓国勢より何割も安価に販売している。
2017年、中国での現代自動車は、THAAD問題で売上台数が激減する中、また、新工場が2つも稼動したのに生産車がない状態が続き、合弁の北京汽車(経理財務担当)が、値引きせよと下請業者に支払いを一時ストップする事態に至った。下請企業は2016年にも現代自から2割近い値引き要請を受け値引きしており、もうこれ以上値引きできないとして断っていた。そうした中でも昨年、現代自は世界では営業利益率を3.8%確保していた。しかも大市場の中国や米国では大幅なインセンティブ販売で販売しており、利益率も落としていた。しかし、全体ではそれほど営業利益を落としていなかった。
直系グループ外の下請企業は、常に儲けさせてもらえず、財務体質は脆弱な企業が多く、すでに耐えられなくなっている企業が多くなっている。
<撤退しなかったGM>失敗か
世界で見直しをかけていたGM、韓国では郡山工場を閉鎖、政府系金融機関に出資させることで、韓国工場を維持し、グローバル生産体制の枠組みを維持、新モデル生産など組み込むとした。しかし、欧州も主力販売先としていたものの、欧州での一部販売体制では、GMの見直しで韓国GMが販売提携していた傘下のオペルを売却しており、今後、オペル系列店が販売してくれるかどうかはわからない。
数ヶ月前、韓国政府から非正規雇用を正規雇用にするよう圧力をかけられたが、経営実態から断っていた。労働組合は非正規雇用については相手にしないが、自らの利害関係では平気でストを打ち、近い将来、生産問題が発生する可能性もある。
GMは2017年406万台を売り上げた中国では不買運動にさらされており、米トランプ大統領は輸入自動車の制裁も検討しており、韓国GMからも米市場へ輸出しており、もしも実施されれば、大きなダメージを受ける。
GMは韓国GMの存続問題では、韓国政府と駆け引きばかりしており、その駆け引きが正解だったどうか、今のところ、韓国内の販売も回復せず、グローバルでもマイナス、大失敗に思えてならない。
GMも女性CEOであり、ヤフーの元女性CEOのように、結果何もプラスにならなかったということにもなりかねない。
<対中国競争、経済全般>
<経済全般の中国勢の追い上げ>
現代経済研究院による韓国と中国の技術格差は2014年1.4年から2016年には1年までに縮まったと報告している。
電子・情報・通信技術格差は1.8年⇒1.5年に
医療部門は1.5年⇒1年に、
エネルギー・資源・極限技術は0.9年⇒0.4年に
バイオは1.7年⇒1.5年に、
機械は1.7年⇒1.3年に、
ナノ素材は1.1年⇒0.7年に縮まった。
中国が優位な航空宇宙技術格差は4.3年から4.5年に拡大している。
韓国と中国の輸出競合は、全体品目を対象にした輸出競合度指数(ESI)は2000年0.331から2016年0.390に上昇。
うち、石油化学、鉄鋼、機械、情報技術(IT)、自動車など主力8大品目のESIは0.470と半分近くに及び、石油化学に至っては0.700に達している。
これは技術格差が縮まり、製品の技術的優位性の差別化が測られていないことを意味する。
こうした指標は、2016年段階であり、2018年にはさらに技術格差は縮まり、競合指数も拡大しているものと見られる。
米中貿易戦争では、中国企業は国内向けの強化や輸出先を米国以外に求めることから、更に競争は激化するものと見られる。
華為(ファーウェイ)のスマホにしても米政権から圧力がかかる米国市場を捨てでも、66億人(世界人口70億人)を相手にする方が、圧倒的に得策だと考え、一帯一路の国家戦略にも乗じ、相手国に通信インフラを借款で整備し、スマホの販売域を世界に広げ続けている。サムスン電子のスマホでさえ大市場のインドではすでに中国勢に駆逐されつつある。
韓国勢の自動車販売台数
|
||||
|
うち韓国国内
|
世界販売
|
||
|
台数
|
前年比
|
台数
|
前年比
|
2013年
|
1,373,902
|
-2.1%
|
8,605,654
|
5.0%
|
2014年
|
1,453,811
|
5.8%
|
8,946,585
|
3.8%
|
2015年
|
1,579,706
|
8.7%
|
9,011,463
|
0.7%
|
2016年
|
1,588,572
|
0.6%
|
8,890,620
|
-1.3%
|
2017年
|
1,550,080
|
-2.4%
|
8,196,053
|
-6.9%
|
2018年
|
1,017,131
|
-1.4%
|
5,349,583
|
1.6%
|
韓国大手5社の販売状況 2017年
|
|||||
2017年
|
うち市場
|
世界市場
|
|||
販売台数
|
前年比
|
シェア
|
販売台数
|
前年比
|
|
現代
|
688,939
|
4.6%
|
44.4%
|
4,504,825
|
-6.5%
|
起亜
|
521,550
|
-2.5%
|
33.6%
|
2,746,188
|
-7.8%
|
韓国GM
|
132,377
|
-26.6%
|
8.5%
|
524,547
|
-12.2%
|
双竜
|
106,677
|
3.0%
|
6.9%
|
143,685
|
-7.8%
|
ルノーサムスン
|
100,537
|
-9.5%
|
6.5%
|
276,808
|
7.6%
|
合計
|
1,550,080
|
-2.4%
|
100.0%
|
8,196,053
|
-6.9%
|
2018年の月別販売状況/韓国大手5社合計
|
||||
2018年
|
うち韓国販売台数
|
世界販売台数
|
||
|
台数
|
前年比
|
台数
|
前年比
|
1月
|
112,452
|
5.9%
|
613,796
|
0.4%
|
2月
|
105,432
|
-11.9%
|
567,919
|
-9.8%
|
3月
|
139,432
|
-4.4%
|
719,003
|
0.7%
|
4月
|
134,197
|
1.1%
|
703,826
|
7.5%
|
5月
|
133,663
|
-1.3%
|
704,111
|
5.2%
|
6月
|
131,827
|
-5.7%
|
746,483
|
9.9%
|
上半期
|
757,003
|
-3.0%
|
4,055,138
|
2.4%
|
7月
|
133,792
|
2.4%
|
639,099
|
-3.0%
|
8月
|
126,336
|
4.5%
|
655,346
|
1.0%
|
1~8累計
|
1,017,131
|
-1.4%
|
5,349,583
|
1.6%
|
・現代+起亜+サムスンルノー+双龍+韓国GM
|
撤退しなかった韓国GM
|
||||
|
うち韓国
|
世界販売
|
||
2016年
|
180,275
|
13.8%
|
597,165
|
-4.0%
|
2017年
|
132,377
|
-26.6%
|
524,547
|
-12.2%
|
2018年1~8
|
58,888
|
-37.1%
|
306,533
|
-15.3%
|
|
||||
18/1月
|
7,844
|
-32.6%
|
42,401
|
-9.5%
|
2月
|
5,804
|
-48.3%
|
36,725
|
-19.0%
|
3月
|
6,272
|
-57.6%
|
41,260
|
-18.9%
|
4月
|
5,378
|
-54.2%
|
38,575
|
-21.5%
|
5月
|
7,670
|
-35.3%
|
40,879
|
-5.1%
|
6月
|
9,529
|
-16.8%
|
46,546
|
6.5%
|
7月
|
9,000
|
-16.7%
|
37,046
|
-10.5%
|
8月
|
7,391
|
-26.1%
|
23,101
|
-44.1%
|