アイコン 倒産を追って見た (株)徳増興産 トーマスタワーマンション/福岡・今泉の失敗


(株)徳増興産(北九州市戸畑区新池1-11-24、代表:德増雄三)は11月8日、福岡地裁小倉支部より破産開始決定を受けた。
破産管財人には小倉知子弁護士(ナリッジ共同法律事務所/電話:093-531-3515)が選任されている。 負債額は約45億円。

同社は1967年7月に設立されたもともともとLPガス販売会社、賃貸マンションを自社の資産安定化のため開発していた。
1989年4月にLP瓦斯販売部門を(有)徳増商会に分離移管し、同社は不動産開発事業に専念。
 
賃貸マンションを展開し、天然やスーパー銭湯の「華の湯」(トーマスタワー内)、飲食店「せせらぎダイニング」、ネットカフェ、美容室などグループで多角化も図っていた。
2008年2月には、25階建・129戸の大型タワー賃貸マンション「トーマスタワー」(北九州市小倉北区馬借町)を完成させ、北九州でも勢いのある不動産会社と認知された。

 

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しかし、翌年の2009年8月期に福岡市中央区今泉の土地(国体通りから1筋目の元2階建駐車場)を12億5000万円で取得したことにより、借入金は90億円を超えた。
しかも、2008年9月にはリーマンショックで不動産市場が金融機関の不動産に対する融資を引き締めたことにより一気に冷めており、同土地の開発が頓挫してしまった。
さらに投資ファンドへの売却目的で約28億円を投じ完成させた大型賃貸マンションが、リーマンショックで投資ファンドが購入せず、同社は資金繰りを急速に悪化させた。

このため、同社は2010年8月期に主力行が中心となってDDS(貸付債権の株式化)による事業再生を選択した。
主力行は同社の専務として行員を出向させ、グループ企業のリストラを断行、2012年8月期には大型物件などを売却した。しかし、赤字売却で▲12億円の赤字を計上し、財務体質はさらに悪化した。

主力行は有名なトーマスタワーを除き金目の物件の処分を終え、2015年10月に德増氏を代表に復帰させたものの、資産は毀損し、その後は売上高が3~5億円にとどまり、赤字経営が常態化していた。

2022年4月に融資行がトーマスタワーに差し押さえ、9月には北九州市が差し押えの登記を設定するなど、借入金の弁済に目処が立たず、信用不安に陥り、今回の事態に至った。
以上、東京商工リサーチ等参照

2006年~2007年には外資ハゲタカ不動産投資ファンドが日本から撤退、リスク不動産ローンをまとめて証券化したサブプライムローン問題が2007年には米国で発生し出しており、米ハゲタカ不動産投資ファンドは資金調達しにくくなり、資金調達のため日本の投資物件を高値で売却して撤退を急いでいた。
日本の金融機関によっても開発などの不動産担保融資を減少させてきていた。2008年9月のリーマンBの経営破たんにより、サブプライムローン問題は世界金融問題に発展し、不動産市場は冷えついた。
当時、多くの不動産開発会社が倒産したが、いずれも不動産投資ファンドが購入予定して開発したものの、リーマンショックで、不動産投資ファンドが資金調達できなくなり、購入をキャンセルしたことから破綻したものだった。不動産開発会社は宿命的に拡大路線を取り続けることからこうした情勢分析ができず、勢いのまま破綻にいたる。

最近、米超大手ハゲタカ投資ファンドが顧客に、投資した不良財務体質の会社もごちゃ混ぜにした債権をまとめ証券化した証券を販売しており、今後、米景気が金利高で大きく後退すれば、大きな問題になる可能性もあると指摘されている。1度あることは必ず2度ある。
今回は金融機関や証券会社ではなく、米当局の監視の目が行き届かないハゲタカ投資ファンドが顧客に販売している分が注目されているもの。米ハゲタカは仮想通貨取引所へも多額の投資を行っている。

 

[ 2022年11月28日 ]

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