「海砂の値段は波まかせ?」ー玄界灘をめぐる静かな訴訟劇の顛末記!
玄界灘の底に眠るのは、ただの砂じゃない。
それはコンクリートという街の骨格を支える“金の砂”——。
その砂をめぐって、地元の漁協の中で波が立っている。
組合員 vs 組合長──静かな漁協の中で損害賠償事件が勃発している。
佐賀県の玄界灘沿岸で、海砂を採取している団体がある。
コンクリートや建設工事に使われる、いわば“基礎の基礎”である。
その採取にあたって、地元の漁協「佐賀玄海漁協」に協力金が支払われている。
言うなれば、「海を使わせてもらう代わりの感謝料」だ。
ところが——
お隣の長崎県側の業者が、佐賀の1.5倍もの協力金を漁協に払っていることがわかり、佐賀側の組合員たちはこう言い出した。
「ウチも値上げ交渉せんばいかんやろ!」

しかし組合長らは、これに動かず。
その結果、組合員たちは怒りの矛先を内部に向けた。
「交渉を怠ったせいで、漁協は損しとる!」と主張し、
約5,700万円の損害賠償を求める訴訟を起こしたのだ。
裁判の行方は…
10日に開かれた第1回口頭弁論では、被告の組合長らは出席せず。
「訴えは退けられるべきだ」との答弁書を提出し、争う構えを見せた。
一方、原告側は「契約書類を公開せよ」と求め、
“海砂マネー”の流れを可視化しようとしている。
次回の審理は12月22日。
漁協の内部統治と、地域資源の扱い方をめぐる真実が、少しずつ明らかになるだろう。
玄界灘の砂が語ること
今回の訴訟は、単なるお金の話ではない。
それは“地域の海”をどう扱うかという自治の物語でもある。
海砂を掘るスコップの先には、
地域の信頼、環境の持続、そして「誰が地域の利益を代表するのか」という問いが突き刺さっている。
静かな海の底で、じわじわと沈殿してきた不信と疑念。
裁判という波が、それを巻き上げようとしている。
海の砂が、町のビルになる。
それは美しい循環にも見えるが、
その循環の裏側で、海と人と金の線引きが、
どこまで透明でいられるのか——そこに注目したい。

JC-net・日刊セイケイ編集長・中山洋次





