アイコン 「働いても破綻」現実に 自己破産3年連続増の構造要因


2025年の自己破産申立件数が14年ぶりの高水準に達した。かつては過剰融資や浪費が主因とされた個人破産だが、足元では様相が大きく変わっている。背景にあるのは、物価上昇と賃金停滞が同時進行するなかで、家計が限界点に達しつつあるという構造的な問題だ。

法務省統計などによると、2025年の自己破産申立件数は約8万3100件と、リーマン・ショック後の影響が残っていた2011年以来の高水準となった。前年から8.8%増と伸び、2023年以降は3年連続の増加。貸金業法改正以降、長らく減少傾向にあった流れが明確に反転した格好だ。

今回の特徴は、その「質」にある。従来は消費者金融の過剰貸付や高金利による多重債務が主因だったが、現在は生活維持そのものが困難になっているケースが目立つ。物価上昇が続く一方、実質賃金は2022年から4年連続でマイナス。名目賃金が上昇しても、食料品や光熱費など生活必需品の値上がりに追いつかず、可処分所得はむしろ減少している。

 

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こうした状況の中で、家計の資金繰りは急速に悪化している。貯蓄を取り崩した後、クレジットカードのリボ払いや消費者金融で「生活費」を補填する構図が常態化。従来のような「欲しいものを買うための借入」ではなく、「生きるための借入」へと変質している点が、今回の破産増加の本質といえる。

さらに、コロナ禍で実施された特例貸付の返済開始も重荷となっている。低所得世帯を中心に返済と日常生活費の両立が難しくなり、結果として債務整理の余地が乏しいまま自己破産に至るケースが増えているとみられる。

過去との比較も象徴的だ。2003年前後のピーク時は、グレーゾーン金利のもとで貸付が膨張し、任意整理などで対応可能なケースも多かった。一方、現在は総量規制により借入自体が抑制されているにもかかわらず破産が増えている。裏を返せば、すでに資産や返済余力が乏しく、「整理の余地がない層」が拡大していることを意味する。

今後のリスク要因としては、金利上昇が挙げられる。日本銀行が金融政策の正常化を進めれば、住宅ローンやカードローンの金利負担が家計を直撃する可能性がある。また、正規の金融機関から借り入れができなくなった層が、SNSを通じた個人間融資や違法金融に流れる懸念も現実味を帯びている。

今回の自己破産増加は、一時的な景気変動では説明しきれない。物価上昇と賃金停滞という「構造的な歪み」が、家計の耐久力を超えつつあることを示している。真面目に働いても生活が成り立たない――そうした「生存のための破産」が広がっている点に、現在の日本経済の深刻さが表れている。

 

 

[ 2026年3月19日 ]
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