米・イスラエル対イラン軍事作戦でホルムズ海峡緊迫 日本のエネルギー安保に最大級の試練
2月28日に始まった米国・イスラエルによる対イラン軍事作戦「壮絶な怒り作戦(Operation Furious Anger)」は、日本のエネルギー安全保障を直撃している。とりわけホルムズ海峡を巡る緊張は、供給そのものよりも価格急騰を通じて日本経済に深刻な影響を及ぼす局面に入った。
「事実上の封鎖」状態 海運大手3社が航行停止
ホルムズ海峡は物理的に封鎖されているわけではない。しかし、イラン革命防衛隊が通航船舶への攻撃を警告したことで、商船の航行は事実上停止した。
日本の海運大手である
・日本郵船
・商船三井
・川崎汽船
の3社は、海峡周辺での航行を全面停止。ペルシャ湾内の船舶は安全海域へ退避し、航行予定だった船舶は海峡手前で待機している。
3月1日にはパラオ船籍の石油タンカーが攻撃を受け、負傷者が発生。戦時増担保保険料が急騰し、民間商船にとって商業ベースでの運航は極めて困難な状況となっている。
ガソリン「200円台」現実味 減税効果は一瞬で消失
エネルギー価格はすでに国内生活を直撃している。
政府は2025年末にガソリン税の暫定税率(約25円/L)を廃止した。しかし、原油価格の急騰により、その減税効果はほぼ相殺された。米WTI原油先物は80ドルを突破し、リスクプレミアムが急速に上乗せされている。
仮に価格抑制補助金が再発動されなければ、来週以降の店頭価格は200〜210円台に達するとの試算もある。これは物流コストを通じ、食料品や日用品価格の再上昇を招く水準だ。
GDPを0.96%押し下げ 実質賃金再びマイナス懸念
エネルギー価格上昇は、マクロ経済にも無視できない打撃を与える。
第一生命経済研究所の試算では、原油高が続けば日本のGDPを0.96%押し下げる可能性がある。日本の潜在成長率が1%前後であることを踏まえると、成長率をほぼ消失させる規模だ。
2025年後半にようやくプラスへ転じた実質賃金も、電気・ガス料金や輸送費の上昇を通じて再びマイナス圏に沈む恐れが強い。
産業面では建設業への影響が大きい。燃料費に加え、アスファルトなど石油派生製品、LNG火力発電依存の鋼材製造コストが上昇し、利益率を圧迫する構図となる。
備蓄254日分の「盲点」 LNGは2〜3週間分
政府は石油備蓄が約254日分あると説明する。しかし、これは原油・石油製品に限った話だ。
液化天然ガス(LNG)は長期保存が難しく、実質的な備蓄は通常2〜3週間分程度にとどまる。カタールなど中東からの供給が滞れば、電力需給逼迫は数週間以内に顕在化する可能性がある。
米国やアフリカからの代替調達も可能ではあるが、航行日数を要し、その間のスポット価格高騰は避けられない。
現時点で日本が直面しているのは、供給断絶というより「価格ショック」による経済失速の局面だ。ホルムズ海峡の緊張が長期化すれば、エネルギー価格を通じて日本経済の回復基調は大きく揺らぐことになる。





