経常黒字3.9兆円、実像は「輸出復活」より海外投資収益 円安が膨らませる日本の稼ぎ
財務省が発表した5月の国際収支は、経常収支が3兆9683億円の黒字となった。黒字は16カ月連続で、前年同月比でも大きく増えた。半導体関連や自動車の輸出増、海外で保有する株式などからの配当増が寄与した。
ただし、その中身をみると、かつてのように貿易で大きく稼ぐ日本の姿とは異なる。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は69億円の黒字にとどまり、サービス収支は103億円の赤字だった。貿易・サービス収支全体では34億円の赤字である。一方、海外投資に伴う利子や配当を示す第一次所得収支は4兆2756億円の黒字に達し、経常黒字全体を支えた。
輸出は9兆3602億円と前年同月比14.7%増えた。半導体等電子部品や自動車が伸びたが、通関ベースでは輸出数量の伸びは小さく、価格上昇の影響が大きい。自動車も金額では増えた一方、数量は前年を下回った。輸出額の増加をそのまま国内生産の力強い回復と読むには注意が必要だ。
円安も黒字を押し上げた。5月のドル円相場は月中平均で1ドル=158円台となり、前年より円安が進んだ。海外子会社からの配当や証券投資収益は、円に換算すると膨らみやすい。一方で、原油や資源、部品の輸入価格も上昇し、家計や中小企業にはコスト高として重くのしかかる。
今回の経常黒字は、日本企業が海外で稼ぐ力を示す一方、その果実が国内の賃金や地域経済に十分還流しているのかという課題も浮かび上がらせた。貿易黒字で国内工場が潤う時代から、海外資産の運用益が国全体の黒字を支える時代へ。数字の大きさとは裏腹に、生活実感との距離は広がっている。





