青森のリンゴ卸「有津川」が2度目の倒産 ピーク売上33億円、民事再生から自力再建も再び破綻
青森県北津軽郡板柳町の青果物卸「有津川(株)」は、2026年6月23日までに全従業員を解雇して事業を停止し、同年8月20日、青森地裁五所川原支部から破産手続開始決定を受けた。負債総額は約11億9,000万円で、大半が金融債務とみられている。同社は2005年にも民事再生法の適用を申請しており、今回が2度目の経営破綻となった。
有津川(株)の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | 有津川株式会社 |
| 所在地 | 青森県北津軽郡板柳町大字辻字松元80番地33 |
| 創業 | 1963年(昭和38年)8月 |
| 事業内容 | リンゴを中心とする青果物の仕入れ・卸売、国内市場および海外向け販売 |
| 事業停止 | 2026年6月23日までに全従業員を解雇し事業停止 |
| 破産開始決定 | 2026年8月20日 |
| 裁判所 | 青森地方裁判所五所川原支部 |
| 今回の負債 | 約11億9,000万円 |
| ピーク売上高 | 1992年7月期 約33億3,800万円 |
愛知で創業、ピーク時には売上高33億円
有津川は1963年8月、先々代が経営していた会社の青果物卸部門を分離する形で、愛知県蒲郡市に設立された。
地元の東三河地区にある食品スーパーや生協関連をはじめ、全国各地の青果市場へ販路を拡大。主力商品であるリンゴについては産地にも営業拠点を設け、仕入れから販売までの体制を構築していった。
事業規模は拡大を続け、ピークとなった1992年7月期には売上高約33億3,800万円を計上した。現在の事業規模からみれば、かつては全国規模で青果物流通を手がける相応の規模を持った企業だったことが分かる。
2005年に最初の経営破綻 負債14億5,000万円
その後、設備投資負担などが重くのしかかり、赤字経営が続いたことで財務内容が悪化。2005年10月には名古屋地裁豊橋支部へ民事再生法の適用を申請した。
当時の負債総額は約14億5,000万円。これが同社にとって最初の経営破綻となった。
ただし、会社そのものは清算せず、民事再生手続の下でリンゴ移出業者として営業を継続。2006年7月には本店を愛知県から、主要産地である青森県北津軽郡板柳町へ移転した。
スポンサー企業による再建ではなく自力で経営改善を進め、2010年1月には再生手続を終結。最初の経営破綻から約4年余りで法的整理を脱した。
60年以上の歩み 倒産から再建、そして再び破綻
| 年 | 主な動き |
|---|---|
| 1963年 | 愛知県蒲郡市で設立。青果物卸事業を開始。 |
| 1992年 | 7月期売上高約33億3,800万円を計上し、業容のピークを迎える。 |
| 2005年 | 名古屋地裁豊橋支部へ民事再生法の適用を申請。負債約14億5,000万円。 |
| 2006年 | 本店を愛知県蒲郡市から青森県板柳町へ移転。 |
| 2010年 | 自力再建を進め、1月に民事再生手続が終結。 |
| 再生後 | 台湾など海外向け販売にも取り組み、年間約3億~5億円の売上高を維持。 |
| 2026年6月 | 全従業員を解雇し事業を停止。 |
| 2026年8月 | 破産手続開始決定。負債約11億9,000万円で2度目の経営破綻。 |
青森移転後は台湾など海外市場にも販路
青森への本店移転後は、リンゴ移出業者として事業を継続した。有津川の公式サイトでは、青森県産リンゴを国内の卸売市場だけでなく、台湾や香港の高級マーケットにも供給していたとしている。
なかでも台湾向けの販売は同社の事業を支える販路の一つとなり、再生手続終結後も年間約3億~5億円の売上高を維持していた。
1992年のピーク時と比較すれば事業規模は大きく縮小したものの、一度経営破綻した会社が産地へ本拠を移し、その後約20年間にわたり事業を継続してきた点は特徴的である。
リンゴ不作で仕入価格が上昇 卸業者には重い資金負担
再建後の有津川を取り巻く環境も近年、大きく変化していた。
青森県の2025年産リンゴ収穫量は35万1,400トンとなり、40万トンを下回るのは3年連続となった。供給量が伸び悩む一方、産地価格は高値で推移している。
2025年産の平均価格は、弘果弘前中央青果で20キロ当たり6,514円、板柳町の津軽りんご市場でも6,352円となり、いずれも過去2番目の高値となった。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 有津川のピーク売上高 | 約33億3,800万円 |
| 2005年民事再生時の負債 | 約14億5,000万円 |
| 再生後の年間売上高 | 約3億~5億円 |
| 今回の負債 | 約11億9,000万円 |
| 2025年産 青森県リンゴ収穫量 | 35万1,400トン |
| 弘果弘前中央青果 平均価格 | 6,514円/20kg |
| 津軽りんご市場 平均価格 | 6,352円/20kg |
リンゴ価格の上昇は生産者にとって販売単価の上昇につながる一方、産地から商品を買い付けて市場や小売業者へ販売する移出・卸業者にとっては、必要な仕入資金そのものが増えることになる。
リンゴ卸を取り巻く資金負担
収穫量の減少・品薄
↓
産地でのリンゴ仕入価格が上昇
↓
同じ数量を確保するための仕入資金が増加
↓
販売価格への転嫁や追加の資金調達が十分に進まなければ、資金繰りを圧迫する
有津川についても、近年はリンゴ不作に伴う仕入価格の高騰などから資金調達に苦戦し、事業継続が困難になったとされる。
2025年には記録的な豪雪によるリンゴ樹への被害や、夏場の少雨など厳しい生産環境も重なった。青森県産リンゴの販売額自体は高値によって押し上げられているものの、卸流通業者にとっては「リンゴ価格の上昇=そのまま収益改善」とはならない点に注意が必要である。
再生から16年後、再び法的整理へ
有津川は2005年の民事再生申請後、青森県へ本店を移して自力再建を果たし、2010年には再生手続を終結した。
しかし、ピーク時には30億円を超えていた売上規模は再生後には3億~5億円程度となり、その一方で今回判明した負債総額は約11億9,000万円に達した。大半が金融債務とみられており、売上規模と比較しても重い債務負担を抱えていたことになる。
リンゴ産地へ本拠を移し、台湾など海外市場も開拓しながら一度は経営再建を果たした有津川だったが、近年の仕入環境の悪化や資金調達難を乗り切ることはできず、最初の民事再生から約21年を経て2度目の経営破綻となった。
今回のポイント
・1963年創業、60年以上の業歴を持つ青果物卸会社
・ピーク時の売上高は約33億3,800万円
・2005年に負債約14億5,000万円を抱え民事再生を申請
・青森県板柳町へ本店を移し、2010年に自力再建を完了
・台湾など海外向けリンゴ販売を展開
・近年はリンゴ不作と仕入価格高騰で資金需要が増加
・2026年6月に事業停止、8月に負債約11億9,000万円で2度目の倒産
参考資料
※負債額、売上高などは判明している資料をもとにした概算値を含みます。
※リンゴ市場全体の価格上昇と同社の経営破綻との関係については、同社の仕入価格高騰・資金調達難が報じられている範囲で整理しており、個別の取引条件までは確認されていません。
※記事は2026年8月27日現在の情報をもとに作成しています。
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