アイコン 2018年11月、中国経済7つのリスク

 

 

米中貿易戦争の長期化により、中国経済に7つの危機的リスクが迫り、国民生活への圧力がいっそう強まっている。中国の経済指標も急悪化してきている。

 
1、資金流出
投資家の悲観的心理や米中貿易戦の影響で、ホットマネーの流出や企業の海外移転が加速した。今後、ドル高・元安がさらに進むことで、資金流出と中国の外貨準備(現在3兆0,530億ドル/最高は2014年3月の4兆ドル)の減少が続くとみられる。貿易額から3兆ドルは必要とされる。
 
中国政府は一昨年から外貨流出を食い止めるため、中国国内に利をもたらさない海外の不動産やサービス業への投資規制を強化、世界でも不動産大手に伸し上がっていた万達、安邦生命、海南などに対して融資規制、海外所有不動産の売却を加速させ、安邦は潰した。海南は会長が仏観光地で事故死するなど不振な動きも伴っている。海外渡航者の持ち出し金額も制限され、仮想通貨も取締りを強化した。
 
しかし、中国は香港との貿易において仮想輸出入が浸透しており、実質的な対策はいまだ確立されていない。こうした資金がシャドーバンキングのそのまた裏資金の源泉ともなっているが、当然、経済縮小では引き上げも加速し流出する。こうした資金が、リスクから金利を高くすれば、シャドーバンキングに依存している高金利借入者の負担は支えきれなくなり企業危機が早まる。地方政府経営の国営企業も入る。
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<外貨準備高が必要な輸入額推移1年>1億USD
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2、経営難の企業が増加
中国企業は現在、関税引き上げ、受注減少のほかに、従業員の福祉厚生である「五険一金(年金保険、医療保険、失業保険、労災保険、出産・育児保険、住宅積立金)」による社会保険費用の増加、党組織の設置強要などさまざまな難題に悩まされている。
10月の中国人民銀行が発表した10月の新規人民元建て融資は6970億元(1002億3000万ドル)と、9月の1兆3800億元から急減し、10月の中国融資データの激減は、企業の融資需要の低さを反映する一方、企業の倒産、また、資金流出を伴う非制裁国への海外移転の拡大を浮き彫りにしている。
 
↓失業者数(数千万の出稼ぎ農民工数が未知数)
 
 
 
3.失業人口の増加
中国農業農村部は8日、約740万人の出稼ぎ労働者が「起業のため地元に帰った」と発表した。この740万人が失業のために、帰郷したという見方が出ている。
これまで就業者数を牽引してきた自動車産業も、10月まで4ヶ月続いて工場出荷台数が減少している。それも9月・10月は2桁減となっている。
 
いまや世界のスマホの生産基地になっている中国にあり、今年の世界の販売台数は前年割れが予想されている。中国勢のシェアが大きくなったとしても中国のスマホ出荷台数が大きくなるわけではない。

 

中国汽車協会による工場出荷台数ベース(輸入車含まず)(商用車含む)
 
2016
2017
2018
 
万台
前年比
万台
前年比
万台
前年比
1
250.06
7.7%
251.95
0.2%
280.92
11.5%
2
158.09
-0.9%
193.92
22.3%
171.76
-11.1%
3
243.97
8.8%
254.29
3.9%
265.63
4.6%
4
212.24
6.3%
208.40
-2.2%
231.86
11.4%
5
209.17
9.8%
209.60
-0.1%
228.77
9.6%
6
207.07
14.6%
217.19
4.5%
227.37
4.7%
7
185.19
23.0%
197.12
6.1%
188.91
-4.0%
8
207.10
24.2%
218.60
5.2%
210.34
-3.7%
9
256.41
26.1%
270.91
5.6%
239.41
-11.5%
10
264.99
18.6%
270.35
2.0%
238.01
-11.7%
11
293.87
16.5%
295.76
0.6%
 
 
12
305.73
9.4%
306.03
0.1%
 
 
合計
2,802.82
13.6%
2,887.89
3.0%
2,287.09
-0.1%
 
2,793.89
 
2,894.12
 
2,282.98
 
中国自動車販売台数年推移
 
 
万台
前年比
2012
1,948.08
 
2013
2,198.41
13.9%
2014
2,349.19
6.9%
2015
2,459.76
4.7%
2016
2,802.82
13.6%
2017
2,887.89
3.0%
2018年※
2,287.09
-0.1%
・※2018年は1~10月累計値
・工場出荷ベース/商用車含む
 
<失業者数推移>万人
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4、物価の上昇
輸入関税の引き上げ、元安と国内食糧の不作などが原因で、中国の物価、特に生鮮食品やガソリンなどが大幅に値上がりした。当局は10月の消費者物価指数(CPI)は前年比で2.5%上昇したと発表。今後、元が対ドルでさらに下落するとの見通しから、物価は引き続き上昇するとみられる。
米中貿易戦争により、米国産大豆も報復課税で、現在はブラジルを主輸入国に変えているが、中国の買い付けでブラジル産が高騰している。こうした輸入穀物や食材の値上がった輸入は、物価上昇要因となる。今後、さらに表面化してくる。
 
↓物価指数CPI
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5、GDP成長率が鈍化
中国経済を支える投資、貿易、個人消費と財政のうち、投資と貿易と個人消費の鈍化が鮮明になっている。
中国当局の公表では、今年7~9月期の国内総生産(GDP)は前年比で(年率換算)6.5%増と10年ぶりの低水準になった。中国政府系シンクタンクの国家信息センターは、10~12月期のGDP成長率は6.4%とさらに減速するとみている。
中国共産党政権は10月31日の中央政治局会議で、国内経済の現状について、「経済の下押し圧力が高まっている」と経済の失速を認めている。
 
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6、債務増加
国内外の専門家は、中国の地方政府債務とその隠れ債務の急増による金融リスク拡大に対して警戒感を強めている。
賀鏗・元国家統計局副局長は今年5月の講演で、中国の地方政府債務は40兆元(約652兆円)に膨れ上がったと発言している。
また、米格付け大手のS&Pグローバル・レーティングは10月、中国地方政府の隠れ債務(簿外債務)は40兆元に達したと指摘している。
 
一方、中国の家計債務も近年急拡大している。人民銀行が今月発表した金融安定報告では、2017年末時点の家計債務残高は40兆5,000億元(約660兆1,500億円)で、家計債務は対GDP比で49%とされている。
 
<2017年のGDP>
中国の2017年のGDPは81兆2,038億元(0.1440ドルで11兆6,933億ドル/16.2417円で1,318兆円/為替は11/15現在)
 
7、住宅市場の低迷
中国国家統計局は14日、不動産投資などの統計を発表した。ロイターによると、中国の10月の不動産投資は前年同月比7.7%増と、9月の8.9%増から縮小した。
10月の不動産販売(床面積ベース)は▲3.1%減となった。9月も▲3.6%減だった。
10月以降、債務返還や利息返金に追われている一部の不動産業者は、住宅物件の販売価格を値下げして販売を促進した。このため、各地で高値購入した住宅所有者らが不満を噴出させ、抗議デモを行った。
国内の不景気と不動産市場の低迷に伴い、不動産企業の債務不履行、住宅ローンを抱える市民の債務不履行、銀行の不良債権急増、住宅価格の急落による社会不安の急拡大などが予測される。
(不動産開発の潜在需要は人口14億人のうち都市部人口8億人を対象にすれば、まだかなりの需要があるとされるが、景気が悪化すれば買い控えが当然支配する。これまで不動産バブルが崩壊せず、政策による規制強化の調整で逃れてきたのはその懐の深さにあるとされる)
 
<固定資産投資額指数推移(農家含まない)>1月からの累計値前年比
ただ、9月の主要都市の新築価格指数は若干伸びているものの、GDPの伸び率より大幅に減じている。
 
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10月の新築住宅価格指数
主要都市抜粋
2018
前月比
前年比
2015/100
定基
北  京
100.2
100.8
135.9
天  津
100.1
101.9
131.1
大  連
100.7
113.8
123.4
  春
100.9
110.6
122.3
上  海
100.1
99.6
144.8
南  京
100.2
99.0
145.3
杭  州
101.2
103.7
138.0
福  州
101.0
106.1
136.0
厦  
99.9
100.6
152.6
青  
100.6
110.7
129.5
武  漢
102.5
107.9
139.9
広  州
100.2
104.7
145.0
深  圳
99.5
99.6
145.7
重  慶
100.8
110.6
129.6
成  都
101.7
110.0
134.7
 
以上、報道参考に考察した。

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[ 2018年11月16日 ]

 

 

 

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