アイコン マクロン大統領の日産統合の野心再燃が墓穴 ゴーン・西川・マクロン各氏の略歴

 

 

カルロス・ゴーン容疑者の逮捕を機に、日産自動車は再度ルノー支配からの脱却を試みようとしており、マクロン・フランス大統領は新たな悩みの種を抱えることになった。しかし、この問題はマクロン氏の「身から出たさび」と言えるかもしれないとロイターが次のように報じている。

2015年4月、当時経済相だった37歳のマクロン氏は、政府によるルノー株買い増しという驚きの命令を下した。
国の議決権倍増の是非が問われる同月末の株主総会で、倍増を確実にするための工作だった。一夜にして下されたこの命令が、ルノー日産連合の日産側に深刻な波紋を広げた。
その後8ヶ月にわたるマクロン氏側と当時日産ナンバー2だった西川廣人現社長との闘いが、今日の危機の種をまいたと多くの関係者はみている。

「マクロン大統領自身がどっぷりと関わっている」と語るのは資産運用会社アライアンスバーンスタイン(ニューヨーク)のアナリスト、マックス・ウォーバートン氏。
2015年の決断が、「最終的にフランス政府の支配下に組み込まれてしまう」という日産側の危機感に火を付けたことを、マクロン氏は認識すべきだという。

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昨年5月、大統領に就任したマクロン氏は現在、街頭デモや過去最低の支持率(33%)に見舞われている。
同氏の大胆な介入主義は、かつては新鮮に映ったが、ルノー日産連合の危機を契機に、その負の側面に注目が集まるかもしれない。

マクロン氏が、政府保有ルノー株の拡大に動く前年、当時のオランド大統領は「フロランジュ法」を定めていた。
「フロランジュ法」は、全上場企業について、株主投票により適用除外(オプトアウト)を選択しない限り、フランス政府など長期株主の議決権を2倍にするものだった。

<ゴーン氏との対立>
マクロン氏は2014年末から数ヶ月にわたり、ゴーン氏とルノー取締役会に対し、翌年4月30日の株主総会でオプトアウトを提案しないよう説得を続けたが、ルノー側は首を縦に振らなかった。政府の持株比率は15%、議決権はそれを小幅に上回る比率だったため、政府は株主投票で負ける公算が大きかった。

そして4月7日の夕方、マクロン氏からゴーン氏に「礼儀上の」電話が入る。政府がルノー株を4.73%買い増したこと、そして翌朝にはそれを発表し、オプトアウト案を否決に追い込んだ後に買い増し分を売って持ち株比率を15%に戻すことを告げたのだ。

これについては、マクロン氏の批判派も称賛者も口をそろえて政府による前代未聞の「奇襲」だったと言う。
くすぶりつづけていたゴーン氏とマクロン氏のエゴのぶつかり合いが、この時爆発した。
マクロン氏は、周囲の警告をよそに事を進め、オプトアウトを否決に追い込んだ。これによりフランス政府は事実上、ルノーの「可決阻止少数」株主となった。
そのルノーは日産株の43.4%を保有して株主総会を支配している。

<東京は殺気立った>
日産は取締役会の構成や資本関係などに関する協定(RAMA)からの離脱をちらつかせた。
離脱すれば自身より小規模な親会社ルノーの株式を自由に買うことができるようになり、ルノー支配を覆せる。

<西川氏の反撃>
西川氏は、2015年9月3日付のルノー取締役会宛ての書面で「連合の信頼の基礎であるルノーのガバナンス、ひいてはルノーの自主的経営に重大な影響が及ぶだろう」と告げている。書面はロイターが入手した。

西川氏はルノーに対し、日産の支配株を売却し、日産が保有するルノー株15%の議決権を元に戻し(現状、議決権がない)、連合に対する支配を放棄するよう求めた。
しかし、マクロン氏のスタッフは当初、ゴーン氏が振り付けたものだと考えてこれを無視した。
フランス政府の株式保有を管轄していた機関の高官は当時、「ゴーン氏が日産と日本側の考えを語るとき、彼は自分の考えを語っているのだ。私からすれば全部たわ言だ」と話していた。

<見誤ったマクロン氏>
3年後の今、ゴーン氏は逮捕されたが、日産は再び同様の要求を突き付けようとしている。
元フランス政府高官の投資銀行バンカーは言う。「専門用語も言い回しも語彙も、2015年とほとんど同じだ。日本の立場を代表しているというゴーン氏の話をわれわれは信じていなかったが、本当に彼の作り話ではなかったことが分かった」

<フランス政府の議決権18%に制限>
大統領になったマクロン氏が、ルノーと日産の完全合併を求めて圧力をかけたことも、逮捕劇の数ヶ月前から日本側を警戒させていた。

両社と三菱自動車の首脳は29日夜、今後の連合の在り方を協議する予定で、主導権を巡り日仏の確執が深まる恐れもある。

そうした中、ルノーはマクロン氏が結んだもう1つの合意に手足を縛られている。
日産が連合を離脱する可能性を巡り緊張が高まっていた2015年末、フランス政府は大半の非戦略的決定に関して、ルノーの議決権を18%に制限することに合意した。

マクロン氏が支持したこの「安定」合意には、ルノーが日産の株主総会で取締役会に反対しないとの拘束力のある約束まで盛り込まれている。これは主導権争いのハンデとなっている。

<RAMA協定>
日産とルノーの間には「改定アライアンス基本合意書(RAMA=ラマ)」という協定があり、ルノーは、日産の合意がなければ日産の株を買い増せない。これに対し日産は、ルノーの筆頭株主であるフランス政府などから経営干渉を受けたと判断した場合、ルノーの合意がなくてもルノーの株を買い増せるという取り決めがある。
(日本の証法では、ルノーが持つ43.4%の株の議決権行使は、日産側が15%株を保有しており、25%超に増加させれば(議決権がなくても関係なくとも)、ルノーの議決権行使は出来ないとされている)

パリの議決権行使助言会社プロキシンベストのロワ・ドゥサン最高経営責任者(CEO)は「ルノーは主要な資産に対する権利を放棄したも同然だ」と指摘している。
「彼らはもうすぐ、交渉力が損なわれたことに気付くだろうが、もう手遅れだ。連合のパワーバランスは既に覆された」と述べている。

<気もそぞろ>
当時の判断について当時のある閣僚は、マクロン氏が大統領選をにらんで政党「共和国前進」の立ち上げ準備を進めていた時期にあたり、そちらに気を取られていたようだと振り返る。
同党のウェブアドレスが登録されたのは2016年1月7日。ルノーと日産が合意を結んでから4週間も経っていなかった。
この元閣僚は、ゴーン氏にも2015年の闘いをエスカレートさせた責任の一端があると言う。

「ゴーン氏は、閣僚らより自分の方が上だという鼻持ちならない自信を持っていた。話し相手としては首相しか念頭になかっただろうから、やはり自分の偉さを重々認識しているマクロン氏には気に入らなかっただろう」
以上、ロイター等参照

筆頭株主のフランス政府には変わりはない。
大統領になったマクロン氏に対して頭が上がらなくなったゴーン氏
ルノーCEOの任期を今年6月に控えていたゴーン氏。
今年3月には、ゴーン氏はフランス政府の持ち株を日産が買い取る画策を講じていたが、肝心のフランス政府に対しての交渉はまだしていなかった。
推定だが、
マクロン氏は大統領になり、再度ルノーに対して日産を統合させようと動いた可能性が高い。相手はCEOのゴーン氏に対して動いたものと見られる。
ゴーン氏にとってもフランス政府次第=マクロン大統領次第では任期の更新が出来ない可能性があった。

<2014年・2015年当時>
元ロスチャイルド家のバンカーで37歳のマクロン経済担当大臣は2015年4月当時、政府資金を1500億円あまりの巨額を投じ、ルノー株を買い増している。
それほど、ルノーによる日産吸収統合または吸収合併に自信があったものと見られる。当時のオランド大統領もよく承認したものだ。いくら金融に素人の大統領だとしても、承認させるほど理知整然とした説得力をマクロン氏は持ちあわせていたのだろう。

しかし、ルノーの抵抗と日産の反撃にあい、マクロンの計画はすべて頓挫。
マクロンは、大統領に1500億円以上の政府資金を投資させていたことから、頓挫はどれほど悔しかっただろうか。

<2015年を再現させたマクロン氏>
しかし、大統領になった今、ルノーをコントロールできる立場になった。前回は日産側に立ったゴーン氏も、CEOの任期を控え駒として使用できる。
そしてマクロン氏は動いた。ゴーン氏を駒として日産を吸収統合すべく動かした。

しかし、今回もそれを察知した日産側が、ケリを付けるべき反撃に出た。

超ワンマンの代表時代が長く、続けば続くほど垢は出る。ゴーン氏の欲の深さも相当なもの。
内部告発があったかどうかは別に、日産経営陣が把握できる証券等監視委員会や監査法人がすでに指摘していたことだけでも反撃材料になる。

西川氏にしてみれば、年齢もほぼ代わらぬがゴーン氏とは師弟関係、しかし、ゴーン氏が日産に対して牙を向けた以上、時間はなく(年末、遅くとも3月までに日産を吸収統合の動き)、日産マンとして衝撃の対応をせざるを得なかったと見られる。

そして、用意周到に調査を進め、検察ともあらゆる角度から精査し、検察がゴーン氏逮捕に踏み切ったものと見られる。

いまだ解せないのは、ゴーン氏が今年3月に、フランス政府が所有しているルノー株を日産に買い取らせる動きを、報道機関にリークし、報道させていること。しかも、まだフランス政府にも諮っていない段階だという。
善意に解釈すれば、文面どおりだが、すでにマクロン大統領からゴーン氏に対して圧力をかけていたならばまったく別の話。
日産側は文面どおり読み、ゴーン氏さま様だったことだろう。しかし、裏でゴーン氏がルノーによる日産の吸収統合を図っていたとすれば、裏切られた思いでいっぱいだったろう。

ルノーに不利な点は、ゴーン氏逮捕に基づき、ゴーン氏の代表権の剥奪と会長職の解職について、ルノーが派遣している2人の取締役も含めて全会一致でゴーン氏を更迭したこと。
4時間以上もかかった会議、ルノー派遣の取締役はTV会議での参加だったという。当然、会議の内容は逐次、ルノーの経営陣にももたらされていたものと見られる。

フランスでギャーギャー言っているのは、経産相の世耕と両国政府は関与しないことで合意したはずのル・メール経済財務大臣、マクロンはまたしての失敗に、日産側に対して激怒しているものと見られ、メール大臣にフランス政府として日産側に対して強い姿勢の発言をさせ続けている。
こうしたフランス政府の介入は、RAMA協定により、日産がルノー株の買い増しを水面下でしている可能性すらある。

フランス政界でエアースポットから誕生したマクロン大統領、当初は高い人気を誇ったが、最近はマクロンに愛想を尽かし、信望の厚い環境大臣など数名が矢継ぎ早に辞任、支持率も9月には25%まで急落(10月33%まで回復)。

弱り目に祟り目、ツキがない時に再び仕掛けたルノーによる日産の吸収統合、またツキから見放されたようだ。

マクロンが焦れば焦るほど、日産は離れていく。ルノーは日産の業績を持分法で決算に組み込んでおり、また、日産車をルノー工場で一部生産してルノーは収益に挙げており、喧嘩別れにでもなれば、ルノー自体の経営がおかしくなる。ルノーは日産の配当金だけでも巨額を受けている。

G20ブエノスアイレスで、安倍首相がマクロン大統領に、やんわり、ルノー・日産のことは悪いようにはしないから任せなさいと話しすれば、マクロンも救われると思われるが・・・。
メール大臣やマクロンが動かなければ、アライアンスは維持され、関係の急激な変化もないと見られるが・・・。
欧米紙を見るに、限りなく日産に対する批判記事で埋め尽くされている。ゴーン氏の会社資金の私的流用など欧米人も嫌う事案を先に欧米に流布させる必要があったのではなかろうか。最近は少しは冷静な記事も目立つようになってきたが・・。人種的な違いも影響しているようだ。

 

ゴーン氏の略歴(64歳)
 
ミシュランタイヤ18年間在籍
1996年10月
ルノー入社(ヘッドハンティング)
1996年12月
同社上席副社長・再建に尽力
1999年6月
当社取締役、最高執行責任者
2000年6月
当社取締役社長、最高執行責任者
2001年6月
当社取締役社長、最高経営責任者
2003年6月
当社取締役共同会長兼社長、最高経営責任者
2005年4月
ルノー取締役社長兼最高経営責任者(CEO)
ルノー・日産会社取締役社長兼会長
2008年6月
当社取締役会長兼社長、最高経営責任者
2009年5月
ルノー取締役会長兼最高経営責任者(現)
2016年12月
三菱自動車工業㈱取締役会長(現)
2017年4月
当社取締役会長(現)
2017年5月
ルノー・日産取締役会長兼最高経営責任者(現)
2017年6月
Nissan-Mitsubishi B.V.取締役会長兼最高経営責任者(現)
 
西川氏の略歴(65歳)
1977年4月
当社入社
2000年10月
当社購買企画部長
2003年4月
当社常務(執行役員)
2005年4月
当社副社長(執行役員)
2005年6月
当社取締役、副社長(執行役員)
2006年5月
ルノー取締役
2013年4月
当社取締役、副社長(執行役員)、CCO
2014年4月
当社取締役、CCO
2015年6月
当社取締役、副会長、CCO
2016年11月
当社共同最高経営責任者
2017年4月
当社取締役社長兼最高経営責任者(現/CEO)
2017年6月
Nissan-Mitsubishi B.V.取締役(現)
 
マクロン氏の略歴(40歳)
2008年
ロスチャイルド家中核銀行のロチルド & Cie入行
2010年
副社長格に昇進、年収200万ユーロ
2012年
オランド政権・大統領府副事務総長就任
2014年
経済・産業・デジタル大臣に就任
2016年4月
政治運動「アン・マルシュ!/前進」結成
2017年5月
大統領選挙勝利
2017年6月
マクロン与党「共和国前進」6割超の議員獲得
2018年8月
環境相辞任
2018年9月
スポーツ相辞任
2018年10月
政権重鎮のコロン内相辞任
徴兵制を公約としたが、反対にあい頓挫、1ヶ月の福祉等代賛案通過
支持率2018年9月25%に急落、10月33%に回復
 
 

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[ 2018年11月30日 ]

 

 

 

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