ワクチン不足さらに拍車か 米DPA政策により海外生産量大きく損なう恐れ
「世界のワクチン工場」インドに緊急事態が起きている」
世界最大のワクチン製造受託企業(CMO)であるインド血清研究所が、米国による禁輸措置で英アストラゼネカ製、米ノババックス製のワクチンの生産を中断する危機に追い込まれている。
自国のコロナワクチン備蓄を増やしたい米政府が、「国防物資生産法(DPA)」を発動し、ワクチン製造に関連する37種類の原料、設備の輸出を規制した。
(DPAの発動は新コロナ対策で昨年3月にトランプ前大統領が発動、今年バイデン大統領がワクチンに関する37種類に対しても発動した)
米国以外では、最大のワクチン生産国のインド、中でも最大のインド血清研究所は月にコロナワクチンを1億6000回分生産し、それを拡大させるとしているが、禁輸措置が続けば、4~6週間以内に生産に大規模な影響が避けられないという。
焦った同社のアダル・プーナワラ最高経営責任者(CEO)が、今月16日、ツイッターを通じ、バイデン米大統領に「コロナワクチンの原料禁輸措置を解除してほしい」と訴えた。
<先進国がワクチンの「武器化」を本格化>
ファイザー、モデルナなど米国製ワクチンでなくても、米国が引き締めればコロナワクチンの生産ができないという厳しい現実をインドのケースは物語っている。
ファイザー製は同社のベルギー・アントワープ工場でも生産され、そこでの生産分が欧州や日本などに回されている。
欧州連合=EUはワクチン不足に、ベルギー産ワクチンの輸出を認可制にし、域内優先主義を採用している。日本はEUからお裾分けを受けている状態。
欧州はほかのワクチンを合わせて15%前後の接種回数率であるが、日本は2%台の接種回数率でしかない(2回接種ではそれも人口比では半減する)。
それでも欧州は英国を除き米国(2億13百万回/人口比接種回数率63.8%)からは大きく出遅れ、日本は蚊帳の外のレベル(219万回/2%)でしかない。
インドに続き、欧州のワクチン生産にも原料不足で支障が生じ、海外供給が止まっているという。日本が安定的にワクチン確保できない理由は、この2点にある。
菅首相が訪米中にファイザーのCEOと電話会談、5000万回のワクチンをさらに確保して、合計1億9400万回分をファイザー社から確保したと報じられている。
しかし、ファイザー側は日本側と協議中との公表しかしていないことも事実。
ファイザーがEUと今月14日、5000万回分の増加で合意したとの公表したこととは異なっている。
1月、河野ワクチン大臣が、既存契約の1.2億回分を1.44億回分に増加させたと公表したが、それと裏腹に全量上半期の納期がなくなった。
欧米と比較する水準にもなく、今だ200万回しか接種は進んでいない。
米ファイザー、モデルナが開発したメッセンジャーRNA(mRNA)型ワクチン。
両社のワクチンは欧米のみで生産されている。
ベクター型のアストラゼネカとヤンセンファーマ(J&J)のコロナワクチンで血栓ができる副作用が起き、ファイザー、モデルナの地位は青天井で高まっている。
河野ワクチン大臣とファイザー側の交渉では、納期や量についての交渉は、米国ではDPAが発動されており、埒が明かず、訪米中の首相が交渉に当たるようにファイザー側が要求したとも言われている。
ワクチンの話を訪米中の菅首相がバイデン大統領に持ち出すことは会談で禁止されていた。
日本でのmRNA型ワクチンの生産は不可能。
今回初めて商品化されたものであり、日本に生産能力があったとしても、特許権問題があり、米国政府の特許権使用認可、技術移転、材料の輸出を許可しない限りできない。
世界のノーベル賞受賞科学者100人が、新型コロナウイルスによるパンでミックに対して、特許権を開放すべきだと米国に呼びかけるほど、世界は新コロナウイルスの危機に瀕している。
今回の疫病、新コロナウイルスの世界大流行=パンデミックは、現在のワクチン接種により収束はしようが、向こう4~5年は終息しないとされている。
それを見据えた量の確保と生産技術確保が求められている。インフルエンザワクチンのように数年間毎年必要になる。
日本でも各社が新コロナ用ワクチンの開発に当たっているが、医療・科学の研究開発予算を削ってきた過去20年間の遅れは如何ともしがたい。
これまで、米国に依存した経済と安保、今や20%以上を中国に依存している日本の輸出。
新コロナウイルスを前に、米国のDPA発動、日米安保同盟という意味は何ももたらさない。
なお、日本はほぼ昨年9月までに、ワクチンメーカー3社と契約し、当時、開発資金として多額の契約金を支払っている。契約には当然、量と納期が示されていた。
スクロール→
SARS-CoV2 ワクチン |
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型 |
有効率 |
米ファイザー/独ビオンテック |
mRNA型 |
96.0% |
米モデルナ |
mRNA型 |
94.5% |
英アストラゼネカ |
ベクター型 |
70.0% |
米J&J・ヤンセン(1回型) |
ベクター型 |
66.0% |
露ガマレア |
ベクター型 |
接種中不明 |
中シノバック |
不活性化型 |
50~83% |
中シノファーム |
不活性化型 |
79.4% |
中シノファーム |
不明 |
72.5% |
追、米承認7月頃予想 |
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米ノババックス |
組換蛋白質 |
96.0% |
2回型 |
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開発中の日本勢ワクチン(ワクチン後進国) |
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アンジェス |
DNA型 |
結果次第で2022年中に投入見込み |
KMバイオロジクス |
不活性化型 |
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塩野義 |
組換蛋白質 |
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第一三共 |
RNA型 |
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IDファーマ |
ベクター型 |
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日本の購入ワクチン |
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米ファイザー製 |
1億4,400万回分 |
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追加(菅首相) |
5千万回分 |
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英アストラゼネカ製 |
1億2,000万回分 |
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米モデルナ製 |
5,000万回分 |
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何れも2回接種必要分 |
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武田薬品は、J&Jとノババックス製ワクチンを受託製造。 AZ製はJCRファーマが原液製造、第一三共とKMバイオが瓶への充填作業を行い出荷予定。 |