アイコン フォード×SKonに亀裂か(2) 本社工場近くにCATL-LFP電池ライセンス生産工場


SKオンのバッテリーが搭載された米フォードのピックアップトラックEV「F-150ライトニング」が、最近、品質検査中にバッテリー火災が発生し、同車の生産を一時中止した。
その前の1月27日にもすでに販売された「F-150ライトニング」を対象に高電圧バッテリーの性能低下を予防するために部品を交換するサービスを始めた。約100台規模と少数に行われた措置に対し、フォードは「バッテリーモジュールの問題のため実施した」と嫌味たっぷりに説明している。

フォードにとって、米国で一番売れているピックアップトニックFシリーズ(年間70万台前後)、その看板シリーズ初のEV「F-150ライトニング」、有償予約でも12万台を超え、これまでに20万台も受注するほど同EVも人気が高まっている。

モデルイヤーの昨年は1万5千台納品、今年は5万台の生産を計画している。しかし、昨年は資源価格の高騰により、EVの車両原価率が高くなり、昨秋、株価が急落した場面もあった。
同社は、EVで早期に利益が出る体質にする必要にも迫られている。それほどフォードはEVに投資も含めて注力もしている。

 

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そうした中、フォードは中国の寧徳時代新能源科技(CATL/バッテリーメーカー世界第1位)と米ミシガン州にバッテリー工場建設で2月13日までに合意した。

バイ・アメリカンの米中貿易戦争により、中国企業の米国進出には壁があるが、フォードは総投資額全額の35億ドルを自社投資し、バッテリー生産工場を建設、CATLはフォードに対して「リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池」のライセンス生産技術を供与するもの。

フォードは新工場に対する巨額補助金受領のため関係当局の承認を事前に取り付けこうしたバッテリーの自社生産工場計画を進めている。
しかし、これに対して中国政府は知財問題からCATLに対してまだ認可していないという。中国は米国に対して巨額貿易黒字問題もあり、中国当局の認可は形式的なものにとどまると見られている。

今回の投資決定の利点としては、
1、これまで自動車メーカーは、バッテリー専業メーカーから購入するか、専業メーカーと合弁したバッテリー生産会社から購入するしか道はなかったが、第3の道としてこれまでの方式より安価に調達できる自動車会社が直接ライセンス生産する方法を可能にした。
(残る第4の道は自動車メーカーがEV用バッテリーを自社開発して生産する方法が残っている)


2、価格競争力は当然、合弁会社などからの供給よりはるかに優れ、さらに、韓国勢がGMやフォード、旧クライスラーのステランティスと組み生産するバッテリーはコバルトを使用する3元系、CATLのLFP電池はコバルトを使用しないことから、EV用バッテリー価格が3元系より2~3割安いことも価格競争力、収益率から見ても注力に値する。

3、さらに、安全性の面からも3元系よりバッテリー内部の安定性が高く、熱暴走(=火災/5秒で800度)しにくい点も評価に値する。

マイナス面もある、
1、ただ、LFP電池のマイナス点は、1回満タン充電が3元系より走行距離が短いという点だろう。
しかし、CATLのLFP電池は改良を重ね、現在では400キロ超を達成しており、日常車としては遜色ない。
3元系はパワーと走行距離を伸ばすためにはバッテリー搭載量を増加させる必要があり、その分車両販売価格も高くなっている。スポーツタイプのパワーや長距離を要する車両にはLFPは比較して不向きとなる。

フォードは、そうしたことから、「F-150ライトニング」のEVバリエーションを増やし、低価格帯から高価格帯まで設定するものと見られる。

GM×LGの21年のEV火災問題、そのリコールでは15万台あまりで2000億円あまりの巨額リコールとなった。バッテリー供給のLG負担が7割、GMが3割負担となった。バッテリー問題ではこうした負担割合が定着するものと見られるが、品質や安全性に問題が発生した場合、リコール費用は巨額になる。(GMがバッテリー火災の原因を突き止め、LGは突き止めできなかった。)
また、安全の信用も損ない、ほかの車種のEVの販売にも影響する可能性も出てくる。

 フォードとしては看板シリーズのEVであり、火災問題など発生することは許されない問題。そうした問題が、納品前の品質検査の段階とはいえ現実のものとなり、FORDが怒っているのはそうした点にある。

フォードは、より安定的なバッテリー供給を図るため、「F-150ライトニング」の生産基地があるミシガン州ディアボーン工場(本社工場)、と近い同州カルフーン郡マーシャル市近郊(本社工場と300キロ圏内) にLFP電池生産工場を建設する。 

フォードはSKとの合弁工場をテネシー州とケンタッキー州で建設中。現在、フォードに供給しているのはSK独自のジョージア州の第1・第2工場で生産されたバッテリーと見られる(ジョージアには韓国勢車両メーカーの生産基地があり、現代のEV工場も2025年完成予定で建設中/ジョージア州には韓国企業が多く進出している)。

そうしたフォードの本社工場の「F-150ライトニング」の生産基地近くにEV用電池工場を建設し、供給することになる。

フォードの定番商品、マスタングはカルフォルニア州、テキサス州、ミシガン州の工場で製造されている。欧州向け輸出車の「マスタング マッハE」(メキシコ工場で生産)にはLFP電池を搭載すると2月16日に発表している。CATLからLFP電池を購入し、搭載して欧州で販売する。

なお、LFP電池は中国のBYDも生産し、自社製車両にも搭載しているほか、ベンツやBMWも搭載車を有している。CATLはドイツ中部チューリンゲン州に生産工場を有し21年から生産している。バイデン頼りの韓国勢はLFP電池を有していない。

資源価格は、今後、高給取りの米人やカナダ人がカナダやアメリカの鉱山で採掘するリチウム(現行、EV用バッテリーの材料構成価格の40%前後を占めるリチウム価格/そのほとんどが中国製) を使用することになり、当然価格は高くなり、商品相場も連れて高くなる。
リチウム鉱の粉砕石を溶融してリチウムを取り出す電炉を動かす電力価格も、世界一の生産量の石炭をボンボン燃やして発電する中国とは比べ物にならないほど高い。
バイ菌マンのバイデンのバイ・アメリンカン政策のIRA法とは、名ばかりで、インフレ推奨政策ともいえる。


 

[ 2023年2月22日 ]

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