アイコン フォードとSKとの蜜月に軋轢か ドル箱のEV「F-150ライトニング」生産停止


★亀裂1、火災問題
フォードは2月初め、人気の電動ピックアップトラック「F-150ライトニング」(ドル箱車種)の生産を急遽中止、原因が電池火災にあると詳細を公表した。生産停止は3週間の予定。

フォードは2月15日、「今月4日、完成車の品質検査中に火災が発生し、隣の車に延焼した」とし、「自社が立てた対策を電池生産工程に適用するために数週間かかる可能性がある」と説明した。

ただ、当火災がEV用電池にあるのか、配線・電気制御機器やプログラムにあるのか定かにされていない。
ただ、SKオンはこれに対して「個別の問題であり、原因究明を完了し、再発防止策も立てた」と表明している。こうした見解によりその責任はSKonにあるようだ。

 

スポンサーリンク

★亀裂2、バッテリー性能低下.
さらに17日にも同モデルでの別の電池問題が公表され、さらに悪化している。
米経済専門局CNBCは、フォードの広報担当者の話として、「フォードが1月27日にもF-150ライトニング約100台の電池性能低下を防ぐために部品交換を行った」と報じた。
これも電池の品質なのか制御機器の問題か定かではない。

フォードのFシリーズは、全米最大の販売台数を誇るドル箱のピックアップトラック、21年の販売台数は72万6千台、半導体不足に陥った22年でも65万3千台販売したダントツ1位の超人気車。
その人気シリーズ初のEVが「F-150ライトニング」であり、予約が20万台も頷ける。一方でバッテリー問題により生産できない事態はメーカーにとって、サプライチェーン問題として由々しき問題となっている。
ロイターの報道では、EV「F-150ライトニング」だけでも2023年5万5千台、24年8万台の生産計画をしているという(モデルイヤーの22年は1万5千台納品)。

★ 亀裂3、
<フォード、中国CATLへと提携先多角化>
 フォードとSKオンとの関係に、異常が読み取れる事件はそれ以外にもある。
フォードは2月13日、中国の世界最大の電池会社メーカー寧徳時代新能源科技(CATL)の技術提供を受け、米ミシガン州に大規模な電池工場(総投資額35億ドル、より安全で低価格のりん産鉄リチウムバッテリー=LFPバッテリー)を建設すると発表した。(SKonのバッテリーは3元系)

中国製バッテリーの使用を事実上禁止する米インフレ抑制法(IRA)を回避するため、工場はフォードが100%所有するという奥の手まで使い大きな話題となった。当然、工場建設するからには、巨額補助金問題もあり、政府や州から承認を得たものと見られる。

 そんな物議を覚悟でフォードがCATLと手を組んだことについては、フォードがSKオンにバッテリー供給を全面的に依存する構造から脱却しようとしているとの見方が出ている。

中国のCATL(BYDほか中国勢開発)のバッテリーは、3元系より安全で低価格であり、競争力を持つLFPバッテリーであり、フォードとしてもサプライチェーンを多角化し、韓国メーカーの依存度を減らす、サプライチェーンリスク分散の意図があるとみられる。

ベンツは、すでに普及車にCATL製LFPバッテリーを搭載している。
LFPバッテリーはこれまで200キロ台までしか走れなかったが、中国勢は製造方法の研究開発を進め、400キロ以上走れるようになったことに起因している。コバルトを使用しない分、3元系より2~3割安価になるという。
ただ、スポーツタイプや長距離用にはまだ3元系が優位な状況下にある。
日常乗るには400キロ走れば十分と見るかどうか、自宅に充電スタンドがあれば問題ないだろう。
また、3元系も韓国勢のパウチ型とテスラ+パナ社勢の円筒形4680電池の戦いとなっている。
円筒形は特許権もなく汎用性を持たせやすく、時代は円筒形に向かっているとされる。3元系の4680型ではCATLが過去最高の1000キロ走る電池を開発したと発表している。CATLはテスラ(中国)にも供給している。
韓国勢は円筒形型・4680型やLFP系では後手に回っている。

3元系は材料がバッテリー原価の75%以上を占め、その中でも高額なのがリチウムとコバルト、自動車メーカーとバッテリーメーカーとの長期納入契約では、材料費は時価契約となっており、資源価格の高騰で自動車メーカーはEVを高額販売するしかなくなり、内燃機車との価格差が大きく、EV普及に時間がかかる。

テスラの最廉価版のモデル3の販売価格が販売当初から上昇し続けたのもそうしたバッテリー材料価格の上昇にある。
また高額すぎれば、米国が今年から導入したIRA法による7500ドルの購入補助金は対象外となる。
IRA法補助金の車両販売価格の上限は、バン、スポーツ用多目的車(SUV)、ピックアップトラックは8万ドル、乗用車を含むそのほかの車両は5万5千ドルと定めている。

★ 亀裂4、昨年合意したトルコでの合弁工場建設の白紙撤回
それに加え、最近フォードとSKがトルコでの合弁工場計画を撤回した。22年に合弁工場を建設すると発表したばかりだった。両社は特に価格交渉で見解の相違を狭めることができなかったという。

昨年9月に韓国を訪れたフォードのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)が、SKonなど韓国のバッテリーメーカーを訪問し、納品数量が期待に及んでいないと強く抗議したとの話も伝わっている。

韓国のバッテリー業界では、フォードが供給量を増やすよう無理な要求を行い、SKonが増産を急いだところ、さまざまな問題が発生したとの見方もある。
ただ、受注した限りにおいてこうした見方は言い訳けに過ぎない。

<フォードの計画>
フォードは、「EV転換に2025年までに300億ドル(約4兆円)をつぎ込み、20世紀初めのフォード初の量産モデル『T型フォード』に匹敵する大変革を成し遂げる」と表明していた。
フォードはEVシフトにより、1万人余りをリストラし、EV転換への投資用資金を捻出している。それを実現させるためには安定的なバッテリー量を確保する必要があり、これまでSKonと強い同盟関係を結んできていた。

SKpnはフォードなどにバッテリーを供給するため、米ジョージア州に自社工場(稼働中/第1・第2工場)を建てたほか、テネシー州とケンタッキー州の合弁工場(21年)、トルコ合弁工場(22年)の設置を決定していた。
 しかし、フォードはまだEV部門で目に見える成果を出せずにいる現実がある。

21年にフォードが発表した「F-150ライトニング」は事前予約だけで20万台に達したが、生産量がまったく追い付いていない。
「F-150ライトニング」は、昨年、顧客に約1万5千台(生産計画通り)納品したものの、同社は全車的な半導体不足も災いして年間▲20億ドルの純損失を出している。
CNBCは「今年第1四半期の業績が回復しなければ、フォードに対する信頼にヒビが入るだろう」と警告している。CEOには創業家や株主からの圧力もかかる。
以上、

<安全意識と技術>
SKのEV用バッテリーは LGのパクリ、LGの社員らを大量に引っこ抜き完成させた。しかし、LGが、特許権の侵害だとして米国でも告訴、米貿易委員会(ITC)は特許侵害を認め、LG技術がなければSKは10年遅れたとみていた。
当時、すでにSKは米国のジョージア州で工場建設に入っており、バイ・アメリカン主義のバイデン大統領がEV化を加速化させるため、仲裁に入り、直接両社を(実質強制)和解させた経緯がある。

基礎からの研究力はLGにあろうが、LGでさえGMのEV火災問題では、原因を突き止めることができず、GMが原因を突き止め、15万台あまりを1900億円(LG1300億円/GM600億円負担)でリコールしていた。

 韓国勢は現代自動車もシータ2エンジン搭載車の火災による大量リコール(起亜含め約3000億円引当)も、現代自はユーザーの車両管理問題だとしていた(米裁判でもユーザー側は車両問題だと証明できず現代自側の勝訴となっていた)が、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)がNGO団体からの要請を受け調べ上げたところ、エンジンの製造工程に問題があり、製品にばらつきあることを突き止め、当局は現代自に対して罰金+安全検査データ解析システム(1システム2千万ドル)を韓国と米国での整備設置を命令を科した。
 韓国勢はイケイケドンドンタイプ、安全基準に神経が希薄になっている可能性もある。

リチウムイオン二次電池はもともとソニーが量産化に成功させたが、それを車両搭載用まで進化させたのは韓国と中国勢(NEC+日産のバッテリー会社は中国企業に売却済み)だが、日も浅く、それでいて性能だけは高くなりつづけている。
しかし、半導体のように材料段階から製造各工程のすべてに至るまで細かく検査されていない可能性もある。
3元系バッテリーでは一旦熱暴走が始まれば5秒で800度まで温度が急上昇、電池パック全体で熱暴走が始まり爆発的に炎上する。火災死亡リスクが高い。

半導体の場合、かつて世界一だった半導体生産量の日本、現在では日本企業の半導体検査装置が各工程の必須アイテムとなっており、ほぼ確立している(日本企業各社は、市場ニーズにより半導体が微細化し続けており、その対応技術の開発に鎬を削っている)。

バッテリーでは、パウチフィルム、二次電池の電極安定の正極・負極バインダー、電解液添加剤、銅箔製造設備など日本企業製が絶対的に優位にあるが・・・。

製造工程でそうした検査装置がなければ歩留まりが悪くなり、商売にならないどころか、長期品質問題にも直面し、また納品先自動車メーカーに迷惑をかけることになる。
特に自動車の場合、EVバッテリーは代賛が効かず、車両自体が生産できない、販売できないという車両メーカーにとって死活問題に発展する。
その前に火災という安全面では半導体以上に神経も必要な製品でもある。世界で見ればまだまだEV火災は発生し続けている。
 バッテリー性能に由来するリコールともなれば、前述のGMのリコールのようにとてつもないリコール費用が必要にもなる。


スクロール→

国際商品価格の推移 (主にシカゴ先物価格)

トレーディング・エコノミックス、日経リアル等より/単位通貨はドル等

 

相場/月末

 

コロナ前

 

19/12.

21/12.

22/8.

22/12.

2/20.

上昇

原油WTI

63

75

89

80

77

22.2%

EV用

 

スチール

3,774

4,568

3,873

4,019

4,213

11.6%

ナフサ

548

698

654

591

717

30.8%

アルミ

1,807

2,818

2,359

2,378

2,438

34.9%

マンガン・EV

31.5

31.25

31.75

31.25

33.75

7.1%

銅・EV

2.796

4.393

3.549

3.805

4.172

49.2%

ニッケル・EV

13,950

20,880

21,323

29,866

25,571

83.3%

コバルト・EV

32,750

70,500

51,955

51,955

35,690

9.0%

リチウム・EV

49,500

268,500

492,500

519,500

427,500

763.6%

 

[ 2023年2月21日 ]

スポンサーリンク
 

 

 


HTML Comment Box is loading comments...



※記事の削除等は問合せにて。

スポンサーリンク
 

 

関連記事

 

 



PICK UP


破産・小口倒産一覧