アイコン EVの今後と中国勢の低価格戦略、中国の輸出


地球温暖化抑制という大きな世の流れの中心にあるEV、そのため2050年に向け大きな変化はないだろうが、まだまだ世界で普及させるにはバッテリー価格にしてもその域にはなく、米国では高額所得の環境派とアーリーアダプター(初物喰い)へ一巡した途端、政府補助金がありながら中折れ状態となっている。
それは米国にとどまらず、欧州や中国でもEVがマイナスに見直され、HVやPHVがプラスに見直されている点は今後の動向を注視する必要がある。

Ⅰ、<新エネ車の現在の問題点>
1、補助金入れても高い
2、充電時間が長い
3、充電インフラ整備が不十分
4、安全性問題
ほか
5、リサイクル問題
6、中古車価格問題
・・・1年落ちで半額、内燃機車が10%未満であり、その差は大きすぎる。

 

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Ⅱ、これまでに解決できた問題、できそうな問題
1、価格問題
中国BYDが昨年から1万ドルカーなど200万円以下のEVを矢継ぎ早に発売開始し、爆発的な販売増をもたらしている。
しかし、米国勢にはその恩恵はない。テスラは2023世界目標180万台を死守するため大規模値下げを繰り返しやっとこさ達成している(第4四半期は前年同期比営業利益が半減し8%台まで落ちている)。

ポイントはバッテリー価格
価格が高い3元系バッテリー(高出力・安全リスク比較高い)・・・韓国勢=米国勢
3元系より3割安価なリン酸鉄(LFP)系(低出力・より安全)・・・中国勢
次世代電池⇒価格高い、全固体電池系(高出力+より安全)

BYDはバッテリーでも中国最大手の一角、自社製LFP電池搭載によりEV価格を極限まで下げる勢いにある。現在そのターゲットになっているがテスラではないだろうか。
米国でもLFPを導入しない限り価格を下げるにはバッテリーの材料比率が8割前後もあり、限度がある。
フォードは唯一、中国最大手のCATLのLFPをライセンス生産するとし、ミシガン州に工場建設すると発表していたがEV販売不振、5000億円の投資でもあり、中国という米国内の風圧もあり昨年9月計画を中断している。

韓国勢は中国勢の走行距離を大幅に延ばしたLFPの生産については、21年にそれぞれ開発を開始したが、いまだ開発には至っていない。中国勢の特許の壁も高い。
(韓国勢は2017年、中国のEV補助金から追い出された時にLFPを開発すべきだったが、3元系は高出力で当時はLFPの走行距離は短かったため、見向きもしなかった)

結果、コバルトとニッケルという高価なレアメタルを使用する韓国勢の3元系バッテリーでは価格を下げるにも限度があり、レアメタルの相場に依存し、米国でのEV不振の現状は変わらないと見られる。
米国勢はEV開発に膨大な投資を行っており、これ以上のリスクをとるには限界がある。2023年下半期のEV販売不振に、GMもフォードもEVに関する計画をすでにいくつか先送りしている。

2、充電時間・インフラ問題
  高電圧の高速充電設備普及は遅れている
   中国新開発・・・12分80%超高速充電可能に・・300キロ以上走行可
   韓国開発・・・・8分150キロ可能
  米国の場合は高速充電インフラはディーラー店舗や高速道中心、長距離にはまだ不向 
  き。海外では家庭用充電設備は(高いことから)普及していない。

3、安全面
  より安全設計されてきた。
しかし、根本問題は解決されておらず、衝撃などにも弱く、また製品の均一性の問題から火災の発生も多い、屋内での駐車は危険かも。より安全とされるLFP電池でも火災は発生している。衝撃などによるバッテリー暴走では5分で800度に達し火災。

既存のリチウムイオン電池の電解質は液体かゲル状、全固体電池は固体であり、セルが破壊されても熱暴走を起こさないためより安全性とされる。
搭載は2027年予定、普及は2030年とされる。・・・量産技術と価格しだい。

4、リサイクル問題は2030年以降大量に発生してくるが、まだなんら解決されていない。リサイクルできるものはリサイクルされ、資源の循環利用が可能となるが、それまでは環境を破壊し続ける。EVが急速に普及すればするほど環境破壊スピードは増す。環境を破壊する銅にしても既存の自動車よりモーター類などに3倍使用し、リサイクルが可能になるのは2035年以降になるという。一部循環が始まる2030年前後までは大量に生産し続けることになる。
(バッテリーの保証期間は8年、16万キロ//内燃機車の廃車平均年数は12年)
 
Ⅲ、<新エネ車の今後リスク>・・・中国の識者見解
1、「全固体電池の急発展に伴って技術的な勢力図が一気にひっくり返るリスク」、
2、「大規模な買収などの商業的なリスク」、
3、「米電気自動車(EV)大手テスラの完全自動運転技術の急発展」、
4、「普及推進政策の停滞によりEVが化石燃料車よりも高コストで薄利な状態が続くリスク」、
5、「中国の新エネ車産業の発展ペースが鈍化し、リソースの浪費が生じるリスク」
の5点を指摘している。

自動車は環境面からEVばかりがもてはやされているが、急激な普及により、そのレアメタルや銅などの生産量が急増し、その生産過程で地球規模の環境破壊をもたらしている。自動車が環境に行き詰れば、再度、完全自動運転車がクローズアップされてくる。それまで各種データを高速処理することで安全を確保してきた完全自動運転車、現在は生成AIも導入され、AI単独処理もしくは各種データ処理とAIにより処理させ走行するタイプとなりつつあり、急速に人に近いAI単独処理に動いている。それは膨大なデータに基づき、AIが瞬時に自動判断、計算処理が圧倒的に早いNVIDIAのGPUが持て囃されているが、すでに多くの半導体開発会社から超高速処理を可能とする専用半導体がリリースされ続けている。
こうした分野が再度、紙面を賑わしてくることになる。

↓中国の今後の計画

年間販売台数を24年からは一律2800万台と仮定

  中国外はEVやPHVより、利便性・環境面・価格面からHVが見直されている。

ただ、予想どうりに行くかは中国政府の政策と自動車メーカー、購入者にかかっている。


スクロール→

中国の新エネ車の予想  /万台

 

新エネ車EV+PHV

内燃機車

23

32%

949

2.059

24

40%

1,120

1,680

27

50%

1,400

1,400

30

70%

1,960

840

 

↓中国の自動車販売台数推移と、うち新エネ車の販売構成

23年は新コロナ明けもあり販売台数は急増しているが、24年は経済低迷もあり、その反動から大幅に販売台数は減少する可能性が高い。そうなればさらに中国経済が低迷する原因になる。ただ、中国勢は輸出を急拡大させており、23年は前年比

57.9%増の491万台(商用車含む)に達しており、さらに輸出が伸びれば国内減を緩和することができ、経済への影響も少なくなる。

 


スクロール→

中国の自動車販売台数推移/工場出荷ベース

商用車含む

新エネ車(EV+PHV+FCV)

 

/万台

前年比

/万台

前年比

構成率

2016

2,848.0

 

 

 

 

2017

2,887.9

1.4

 

 

 

2018

2,808.1

-2.8

125.6

 

4.5%

2019

2,576.9

-8.2

120.6

-4.0

4.7%

2020

2,531.1

-1.9

136.7

10.9

5.4%

2021

2,627.5

3.8

352.1

157.5

13.4%

2022

2,686.4

2.1

688.7

93.4

25.6%

2023

3,009.4

12.0

949.5

35.8

31.9%

 

↓中国の新エネ車推移とEVPHVのシェア(前比は前年比)


スクロール→

 

新エネ車

うちEV

うちPHV

 

/万台

前比

/万台

前比

構成率

/万台

前比

2018

125.6

 

98.4

 

78.3%

37.1

 

2019

120.6

-4.0

97.2

-1.2

80.6%

23.2

-14.5

2020

136.7

10.9

111.5

11.6

81.6%

25.1

8.4

2021

352.1

157.5

291.6

160.0

82.8%

60.3

140.0

2022

688.7

93.4

536.5

81.6

77.9%

151.8

151.6

2023

949.5

35.8

668.5

24.6

69.7%

280.4

84.7

 中国の経済支配が強い国への輸出は、今後とも中国からの自動車輸出台数は増加しようが、そうでない国は、その国の自動車に対する型式認証が必要であり、中国の大手でない限り輸出には高い垣根がある。

また、東南アジアや東欧など新興国などは、経済発展のため自動車産業もしくは製造工場の誘致を交換条件にしているところも多い。

 


スクロール→

中国輸出台数推移 商用車含

 

/万台

前年比

月平均

2018

104.1

-

8.7

2019

102.4

-1.6

8.5

2020

99.5

-2.9

8.3

2021

201.5

101.1

16.8

2022

311.1

54.4

25.9

2023

491.0

57.9

40.9

2024

24/12.

82.2

30.5

41.1

 ↓自動車もスマホ同様絶対的な年間販売総数が横たわっており、市場争奪戦の中にある。

2030年に2000万台販売するというテスラ、トヨタを傘下に収めるつもりだろうか。

テスラは2023年実績は180万台、24年は220万台を計画。

23年の180万台計画達成は営業利益を前年同期比半分になるまで値引き販売してやっとこさ達成している。

中国ではテスラはBYDの1万ドルからの超廉価版EV(2車種)に駆逐される可能性もある。

 


スクロール→

世界の自動車販売台数推移

出典:仏OICA=国際自動車工業連合会版

 

/万台

前年比

2010

7,497

 

2015

8,968

1.5%

2016

9,385

4.6%

2017

9,589

2.2%

2018

9,564

-0.3%

2019

9,124

-4.6%

2020

7,878

-13.7%

2021

8,275

5.0%

2022

8,162

-1.4%

2023

8,310

5.0%

2023年は米GCF

 

↓自動車関連材料・資源の価格推移

自動車製造における材料の資源価格は落ち着いてきている。しかしまだ新コロナ以前より高く、EVの基本材リチウムは一時10倍以上だったが、現在も2.3倍と高い。

リチウムは将来的には露天掘り可能な世界最大の鉱脈が米国で発見されており、中国でも四川省で東洋一の鉱脈が発見され、そうした鉱脈での採掘が始まれば価格はさらに下がる可能性もある。

2030年までにリサイクル技術での再利用が可能となければ、2030年前後までに自然資源採掘がピークを迎え、その後はリサイクルと併用になり、2035年にはリサイクル品で調達できる水準とされる。循環は遅れても5年だろうか。

 

追、豊田会長が自らのEV戦略は正しかったと述べているようだが、1万ドルや1.5万ドル未満のBYD車が米市場を駆逐しない米中貿易戦争の前提がある。

こうした価格帯のBYD車の浸透は、足元の東南アジア等新興国で販売台数を多く持つトヨタにとって、HVに胡坐をかいている暇はない。

鍵は全固体電池でも何でもない、安価で安全な高出力および高出力長時間維持のバッテリーの開発にある。


スクロール→

自動車およびバッテリー関連材料の国際商品価格推移 

トレーディング・エコノミックス、日経指標等より/単位通貨はドル.ユーロ等

 

19/12.

22/5.

22/12.

23/12.

24/3/15.

19/12

原油WTI

59.8

109.7

76.5

71.6

81.1

35.7%

スチール

3,774

4,522

4,019

3,928

3,451

-8.6%

アルミ

1,807

2,787

2,378

2,384

2,277

26.0%

2.796

4.296

3.805

3.880

4.112

47.1%

ネオジム()

362

1,195

955

555

442

22.1%

マンガン

31.50

33.5

31.25

29.25

30.25

-4.0%

ニッケル

13,950

28,343

29,866

16,375

17,866

28.1%

コバルト

32,750

74,000

51,955

29,135

28,550

-12.8%

マグネシウム()

15

29

22

21

18

20.0%

リチウム()

49

468

519

96

116

136.7%

 

↓出典がバラバラで参考まで


スクロール→

2023年新エネ車の 販売台数

 

総数

前比

NEV

前比

PHV 

前比

中国 自工業会

3,009.4

12.0%

949.5

37.9%

 

 

 工場出荷数

 

 

EV  668.5

24.6%

280.4

84.7%

 

欧州 ACEA

1,284.7

13.7%

201.9

28.2%

99.0

-2.4%

 

 

 

 

HV

339.7

28.3%

 

 

 

 

EV+PHV

 

HV

 

米国

1,560.0

12.3%

120.0

8.0%

120.0

 

 乗用車のみ

ちゃんとしたデータがない

 

米中日14ヶ国

6,134.0

 

1,196.2

28.3%

 

 

 

 

 

HV

421.0

29.6%

・注)米国は商用車入らず。14ヶ国はマークラインズ社版、

 


 

[ 2024年3月18日 ]

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