次世代半導体技術はパッケージ先端技術が鍵・・・
3月に中国の上海半導体見本市に行った韓国のパッケージング装備企業代表は驚いた。中国企業の躍進に、韓国の素材・部品・装備企業代表は「10年以内にわれわれみんなだめになる」と危機感を露わにしたという。
エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、6月の台湾電子見本市コンピューテックスで「TSMCを囲む生態系は豊富でパッケージング技術は驚くほどだ」として台湾に投資を続けるとした。
しかし、NVIDIA-GPUの実力を引き出し広帯域メモリー(HBM)を供給するSKハイニックスとサムスン電子に対しては「メモリー供給企業、それ以上でも以下でもない」と一蹴していた。(NVIDIAはGPUを過去、サムスンにも生産委託していたが、発熱問題から発注を取りやめ、TSMCに全量を戻した経緯があり、今回は今年5月ころ、SKに続くHBM(広帯域DRAMメモリー)のNVIDIA認定試験を受けたが、発熱問題=消費電力問題から保留扱い、今9月に再試験を受けるようだ。認証されても今年中に発注が間に合うかは不明。ただ、AI向けでもNVIDIA以外の
メーカーには納品している。
こうしたことから、サムスンは、半導体設計部門と試験製造ラインの実戦力がSKやTSMCより劣っていることが窺える。NVIDIAとしてもここまで生産量が拡大し、GPUにしても、セットするHBMにしてもTSMCやSKだけにしておくリスクを回避する動きにある。HBMは米マイクロンも開発しているが生産量は限られる。サムスンはHBMメーカーであり、GPUを製造できるファンドリーメーカーでもあるが、道は遠いようだ。)
半導体の尻尾(最終工程)が、胴体を揺さぶる「パッケージング革命」が始まった。
チップを3ナノ(ナノは10億分の1)以下に小さくする微細化技術が限界に達し、ロジック、メモリー、センサーなど多様な複数のチップをまとめて性能を高めるパッケージング技術が、人工知能(AI)半導体と高性能コンピューティング(HPC)のカギになっている。
これまで軽視されてきた半導体後工程であるパッケージングが革新の最前線になっている。
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は最近の報告書で「先端パッケージングで価値を創出する企業を中心に、既存の半導体産業の構図が急激に変わるだろう」と分析した。
中国がパッケージング素材・部品・装備の国産化に国の力を注ぎ、先端パッケージングに優れたファウンドリー(委託生産)世界1位の台湾TSMCの前にエヌビディアやアップルのようなビッグテックが長い列を作った理由の一つとなっている。
韓国は、今回の半導体革命の主体ではなく、生贄になる可能性もある。
先端技術で押された韓国のパッケージング市場での世界シェアは2021年の6%から2023年に4.3%と低くなり、今年上半期の証券市場で半導体銘柄の好調が続く中でも韓国の後工程代表企業のネペスやハナマイクロンの株価はむしろ下落した。
韓国のある素材・部品・装備企業役員は「韓国はHBMが得意というが、これをAI半導体に付着する先端パッケージングはすべて台湾で行われ、韓国の装備企業の10社に8社は売上高が減少」している。
産業通商資源部の資料によるとサムスン電子とSKハイニックスは先端パッケージング核心素材・装備の95%以上を海外に依存する。
世界の半導体供給網が再編されている。
ポステック(浦項工科大)のイ・ビョンフン教授は「人件費などの費用で韓国の伝統パッケージング競争力が消えており、先端パッケージングを育てなければならない」と話している。
韓国でパッケージングを強化するには、「場所」と「人材」の問題も解決しなければならない。
台湾TSMCは、先月、台湾・台南の工場を買収して先端パッケージング基地にすると明らかにしたが、ここは最先端半導体を生産する南部科学団地と隣接している。
しかし、韓国は京畿道の華城、竜仁、平沢など既存のファブが位置する首都圏では各種規制によりクリーンルームを増やすのが容易でない。地方に行こうとすれば人材需給が難しい。
サムスン電子が先端パッケージング研究陣を天安に送ると相当数が首都圏勤務の競合企業に転職したという。
忠清南道のあるパッケージング企業関係者は、「新入社員教育で荒野に置かれた工場を見て失望し退社する社員も多い。青年層が地方に居住するためには個別の企業の努力を超え政府次元のインフラ支援が切実だ」と話している。
以上、韓国の報道ほか参照
韓国政府は、ソウル都市圏の京畿道南部に半導体メガクラスター構想を打ち出している。
• システム半導体における10%以上の市場シェアと、50%のサプライチェーン自立率(self-reliance rate)の達成を目指す。
• 2047年までに622兆ウォンの投資を行い、16施設(13ヶ所の製造施設と3ヶ所の研究施設)を新設するなどとなっている。
パッケージは、スマホ同様人海戦術の作業、そのためマレーシアやインド・ベトナムなどにも集積している。(新コロナで日産工場がストップした原因に、マレーシアの新コロナ感染拡大によるパッケージ会社の生産減が挙げられていた。マレーシアはパッケージング市場の20%近くのシェアを有する。)
ベトナムは、韓国勢がスマホ工場や家電工場を多く有しており、そうした工場向けの半導体パッケージング会社を有している。また、台湾半導体企業もベトナムにパッケージング工場を合弁で何社も進出させている。
しかし、こん日の先端パッケージは最先端技術により、GPU+HBM+αなど電子製品の用途に合わせてパッケージングする。そのため、労務コストより歩留まりが最優先される。
インドでは、政府も関係した大規模先端パッケージング工場の建設を進めている。これまでのパッケージング工場はそのニーズに合わせて生産活動は持続されるが、ゆくゆくは、最先端パッケージング工場により生産されることになる。
TSMCも熊本工場にパッケージング工場の増設を計画している。今後、最先端のシステム半導体なり、メモリー半導体+αを合体させるパッケージング技術が次世代コンピューティングを左右することになる。当然、技術者、製造装置等も必要となる。