コーワ・オーシャンポリが民事再生申請 再建に向けた現実的な一歩とは
埼玉県に本社を構える建材卸のコーワ(株)と、その子会社でポリ合板卸を手がけるオーシャンポリ(株)は、2025年6月23日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。2社合計の負債総額は約27億円にのぼる。
両社は、化粧合板やフローリング材といった商業施設向け建材を主力とし、特にポリエステル化粧合板の製造・販売においては、宮崎の自社工場を有し、首都圏の設計会社や内装業者から一定の評価を受けてきた実績がある。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大による商業施設の工事減少や、超円安による原材料コストの高騰が直撃。加えて、回復期においても消費低迷の影響から改装・出店投資が戻らず、売上はピーク時の約41億円(2019年)から、2024年には約24億円へと大きく後退した。
■ それでも見えた「強み」は確かにあった
業績悪化の一方で、両社には再建の余地も多く残されている。第一に、自社製造体制を持つことによる調達安定性と品質管理の強み。国内で合板製造まで一貫して行える体制は、サプライチェーンの信頼を得るうえで有利だ。第二に、首都圏の設計・施工業者との継続的な取引関係。これは再生後の需要回復局面において、大きな商機をもたらす可能性がある。
■ どうすれば乗り越えられたのか?
今回の民事再生は、時流と構造変化が複合的に影響した結果だが、教訓としては以下の点が挙げられる。
1. 顧客の多様化と業種依存の回避
外食・アパレル向けに偏った販売構造がリスクを増幅させた。病院、教育施設、物流拠点など、非景気連動型セクターへの販路開拓が求められた。
2. 製造と流通の分離による資本負担の軽減
宮崎工場という固定資産を自社保有する重厚な経営スタイルは、固定費の重荷となった。製造を外部委託・OEMに切り替えるなど、フレキシブルなコスト構造を取ることで、資金繰りに余裕を持たせることができたかもしれない。
3. 市況連動型の価格改定ルールの整備
原材料価格の上昇を販売価格に反映できる仕組みが整っていれば、粗利率の急落を防げた可能性もある。
■ 今後への期待
民事再生とは、あくまで「再出発」のための制度である。信用を失うのではなく、改善の機会ととらえ、経営資源を選別し、筋肉質な事業体への再構築を進めていくことが期待される。ポリ合板というニッチな分野で確かな供給力を持つ同社には、業界の変化に柔軟に対応できる潜在力がある。
今後、DXや脱炭素といった新たなトレンドと連動した建材需要も見込まれており、過去の経験を活かした再構築こそが、次の成長戦略の起点となるだろう。