アイコン 唐揚げグランプリ金賞常連も...「からあげ とり多津」運営会社が破産へ


~なぜ、名店は姿を消したのか~

唐揚げ専門店「からあげ とり多津」などを展開していた(株)エフアンドビー・プロジェクト(神奈川県横浜市)は、6月10日付で破産申請に向けた準備を開始。すでに弁護士に一任し、今後法的整理に入る見通しだ。負債総額は約10億円にのぼる。

同社は2007年設立。唐揚げの味で高い評価を受け、「からあげグランプリ」では4年連続で金賞を受賞。コロナ禍前には直営・FC合わせて30店舗超を展開し、上場も視野に入れるなど飛躍が期待されていた。

しかし、その急成長が、結果として自らの首を絞めることになった。

 

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■ 成長戦略の落とし穴――「先行投資型モデル」の限界

エフアンドビー・プロジェクトは、唐揚げ専門店「からあげ とり多津」のヒットを背景に、店舗網の急拡大に舵を切った。地方都市や商業施設への出店、フランチャイズ展開、さらには新業態開発と、“攻めの経営”を象徴するような動きを続けた。

しかし、こうした成長戦略は、「初期投資先行・回収は後」となるビジネスモデルを伴う。飲食店の出店には、物件取得費・内装設備費・人件費・宣伝費など多額の初期費用がかかる一方で、利益の回収には時間がかかる。とりわけ、食材原価や人件費比率が高い中小飲食業では、1店舗あたりの粗利率が限られており、複数店舗を構えることで固定費が膨らむリスクも大きい。

加えて、急速な出店により経営の「見える化」が難しくなった可能性もある。現場任せのオペレーションや、収益のばらつきが大きい店舗群をマネジメントしきれず、儲かっている店が赤字店の穴埋めをするという「自転車操業」に近い状態に陥っていたとも見られる。

さらに重要なのは、出店を支える資金の多くが借入に依存していたとすれば、利払いの負担が利益以上に先行していた可能性だ。これは資金繰りがひとたび悪化すると、一気に経営破綻に傾く構造である。

結果として、味やブランド力には定評がありながら、利益体質が構築されないまま負債だけが積み上がった。それが、コロナ禍という外部ショックを受けた際、耐えきれずに崩れたというのが実情ではないか。
 

■ 編集後記:成長と持続のバランスの難しさ

“金賞の味”という確かなブランドを持ちながらも、経営基盤の未熟さや急成長のリスクが表面化した今回の事例は、飲食業界における「規模拡大=成功」とは限らない現実を示している。特に、外部環境の激変にどう備えるかが、今後の飲食企業にとって最大の課題となりそうだ。

 

[ 2025年6月30日 ]
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