アイコン サムスン電子と運命共同体の韓国

 

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2018年のサムスン電子の売上高は1.6%増243兆51百億ウォン、営業利益は9.7%増の58兆89百億ウォンと過去最高を更新した。
しかし、10~12月期で見ると事態は豹変している。サムスン電子が発表した暫定値では、売上高が前期(7~9月期)比▲9.8%減の59兆ウォン(約5兆73百億円)、営業利益は▲38.5%減の10兆80百万円億ウォンだった。
<半導体>
これは、儲け頭の半導体の価格が下落に転じてきているもので、米中貿易戦争などにより需要が低迷、もしくは半導体の生産増加率が、需要増加率を上回っていることを表している。半導体部門の営業利益はサムスン電子全体の8割(1~9月期)に達している。
汎用半導体のDRAMとNANDは、サムスン電子+SKハイニックス+米マイクロン3社の独占状態。しかし、中国勢が「中国製造2025」の国策により、半導体領域に展開してくる。遅れたとしても時間の問題でしかない。

<スマートフォン>
一方、3年前まで利益の中心だったスマートフォンは、中国勢に追い立てられ、調査会社SAによると、2018年のスマートフォン販売台数は2億9460万台で、2017年の3億1,750万台から▲7.3%減、▲2,200万台減だった。(アップルは▲620万台減の2億960万台、ファーウェイは+5,000万台増の2億70万台、中国勢はファーウェイ+小米+OPPOの合計は4億4,610万台)

2018年はスマートフォンの世界販売台数がピークアウト、前年を下回った。
その大きな原因は、米国から仕掛けられた米中貿易戦争にあるが、もともと不安定な国内経済の琴線が切れ本格的に低迷しだした中国経済、中国勢は中国市場から世界へ進出を加速させ、サムスン電子がこれまで強かったインド市場などを攻略している。
GALAXY10を販売予定だが、その最大の売り物である折り畳み型は、すでに中国の新興勢力が昨秋販売開始している。
スマホ自体が、目新しい機能といってもVRとAIスピーカーを内蔵させるくらいしかなく、すでに限界に近づいている。
今年、5Gになったとしても、世界の先進国だけの話、機能もVRが検討されているだけでコンテンツも不足、価格だけは上がることから、ニーズがどれほどあるか疑問視されている。

世界のスマホ市場のブランド力はプレミアム市場ではアップルは揺るがず、サムスン電子は中国勢の競争にさらにさらされる可能性が高い。
カウンターポイントリサーチ社によると、2018年7~9月期の
800ドル以上の高価格帯のアップルのシェアは79%、
600~800ドル市場でもアップルは61%とサムスン電子21%を圧倒
400~600ドル市場ではサムスンは25%、ファーウェイは17%に追い上げられている。
スマホ市場の最大のシェアを握るサムスン電子の実態は、すでに自社製半導体のチップセットの量産効果により収益を出しているようなものになっているようだ。

<OELD有機ELディスプレイ>
スマホ用の小型のサムスン電子、TV用大型のLGと大きくは棲み分けされている。サムスン製は自社スマホのほか、アップルにも提供しているが、利益はそれほど出ていない。すでに中国勢が進出してきており、今後は競争にさらされることになる。
LGは半導体部門を持たず、収益頭にする意向のようだが、中国勢が台頭すれば、利益頭にするのは難しいと見られる。8Kは宣伝文句にはなるが、放送はまだ4K段階に入ったばかりで、海外ではまだこれから。価格の安価な液晶も4Kに対応してきており、価格下落要因になっている。
ちなみに、LG電子の2018年通期業績は売上高が前期比▲0.1%減の61兆3399億ウォン、営業利益は9.5%増の2兆7029億ウォンだった。しかし、10~12月期(第4・四半期)を見ると、売上高は▲7.0%減の15兆7705億ウォン、営業利益は▲79.5%減の753億ウォンと大幅に悪化している。

<韓国が期待する二次電池市場>
韓国は二次電池を次のターゲットにしているようだが、EV市場の爆発的拡大は世界経済低迷で予想できず、最大の自動車市場の中国では、これまでの中国政府の保護政策によりCATLとBYDの2強がのし上がり、市場が拡大しても価格競争に巻き込まれ、すでに、スマホや半導体のような利益を確保するのは難しい状況にある。
韓国勢は、欧米自動車メーカーと多く提携しているものの、地元の現代自動車すら自社生産している。
EVを世界で先駆してきた日産自動車は、自社開発生産するより購入した方が安上がりだとして、すでにNECと提携した合弁の二次電池会社を売却しているほどだ。

それも飛躍的に性能が高くなるいろいろな二次電池が開発途上にあり、既存分野でいくら優秀な電池を製造しても、スマホや半導体のように独占的な地位を獲得することはできない。
中国と米テスラを除けば納品する自動車会社への数量も乏しい。韓国勢はLG化学が3兆ウォンの大型投資をしているものの、難しい状況は続く。
韓国紙がいくら二次電池は世界一だ、韓国勢の領域だと書きたてても、サムスンSDIに至っては新たな投資は工具用の蓄電池に注力すると弱音を吐いているほどだ。

SNEリサーチによると2018年1月~11月までの出荷量は、
1位はテスラ供給のパナソニックの17.6GWh、2位は中国販売とBMW供給のCATL16.1GWh、3位は中国販売とEV自社製造のBYD9.3GWh(3社の市場占有率は30%)。
市場合計では前年比で73%伸び76.9GWhで約6000億円。2020年には3倍以上の2兆円規模に激増するという。
その中核は中国の販売規制策にあり、中国勢が有利な点は揺るがない(中国は、新エネルギー車販売を今年、メーカー販売台数の10%、20年には12%まで引き上げ、未達成メーカーにはペナルティを課す/2017年の総販売台2,887万台)。
中国の1~11月までの新エネ車の販売台数は前年比55%以上伸び102万台(総販売台数は2541万台、率にして4.0%)。

<家電>
サムスンとLGの家業である家電製品については、いくらプレミアム市場で高価な製品を出し続けても、普及価格帯には中国勢が、欧米にもライバルが、巨大化した屋台骨の収益頭になることはもはや不可能、利益を出すことで精一杯だろう。

<真似の限界、真似で格上の中国>
真似ることが得意な韓国企業であり、これまで韓国経済を世界第7位まで巨大化させてきたが、国家も手助けして資本を手に入れる中国企業の真似企業はその数段上を行く。

日本勢の家電・半導体業界が韓国勢に駆逐されたのとまったく同じ現象が、中国により、韓国にもたらされている。韓国は内需が小さいだけにその影響はさらに大きいともいえる。
それに加え、韓国経済を蝕む文大統領の社会主義実験(最低賃金を2年間で30%引き上げ)により、輸出製造企業がベトナムなど海外へ逃げ出す動きを加速させていることも雇用問題や内需問題を拡大させているともいえる。
企業がベトナムやタイに逃げた日本のように貿易収支より経常収支を重視する時代に突入する日も近いかもしれない。

<サムスン電子>
売上高上位1000社の上場企業の総売上高のうち、サムスン電子の売上高が10%前後占める。
サムスン電子+SKハイニックスの半導体の売上高は、韓国の国内総生産(GDP)の15%に相当し、韓国の輸出全体に占める割合は21%強を占めている。
サムスン電子の利益の80%が半導体事業の利益となっている。

韓国経済における「サムスン依存度」はあまりにも大きく、そのリスクも大きいものとなっている。

[ 2019年1月14日 ]

 

 

 

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