世界で構造改革を進める自動車業界 現代自動車G今度はどこへ進出?
韓国の現代と起亜自動車グループは、世界各地に工場を設け、販売台数増および地域販売シェア確保に動いているようだ。しかし、各地に工場を作ったものの全体から見れば販売台数増に結びついておらず、自動車革命が生じている中、無謀とも思える工場進出にとどまるところを知らないようだ。
また、ソウルの韓国電力本社跡地を時価評価の3倍で購入した新本社の569メートルの超高層ビル+複合施設の講じ認可もおり、5000億円をかけて開発に当たる。
相変わらず、労働組合の活動は活発、政府の圧力で光州市立自動車受託生産工場への生産委託にも合意、今秋インドに新工場を完成させ、インドネシアへも工場進出する。
大局、EVへのシフトでは内燃機関は不要となり、変速機(トランスミッション)も原則不要となる。工場のロボット化はますます進み、モーターや制御装置もパッケージ化し、自動車産業において、従業員は大幅に減る方向に向かっている。
<本文>
自動車関連会社間の合従連衡と生産効率化のための人員整理が迅速に進行している。
フィアット・クライスラー(FCA)とプジョー・シトロエン(PSA)は18日の共同会見で、両社の合併に最終合意したと発表した。
合併手続きを終えれば、フォルクスワーゲン、トヨタ自動車、ルノー日産同盟に続いて世界で4番目の規模の自動車企業が誕生する。
新会社の生産能力は年間最大1400万台となる見通し。両社が折半出資する。
両社は声明で「合併で毎年37億ユーロ(約4500億円)を削減し、新しい自動車産業に投資する」と伝えた。
生存のために協力する企業はFCAとPSAだけではない。ライバル関係のダイムラー(ベンツの親企業)とBMWは今年2月、レベル4(運転者の介入なく自動走行)の自動運転技術を共同で開発することにした。
フォルクスワーゲンとフォードは6月、商用車の共同開発を決めた。
ホンダとゼネラルモーターズ(GM)は燃料電池車技術の開発を決め、トヨタは広州自動車と燃料電池車の生産および販売を推進している。協力すればコストを削減でき、巨額を要する完全自動運転車開発に向け、資金面から開放され、技術も速やかに開発できるという思惑もある。
FCAとPSAの合併は量的な成長よりも未来型自動車時代に対応するための戦略であり、今後、投資の負担に対応できない企業は、市場淘汰される運命が待ち構えている。
人員削減も進んでいる。
フォード、GM、日産、ホンダ、VWなど主要自動車企業8社が最近発表した人員削減規模は8万人以上。
ダイムラーは内燃機関からEVへの転換に対応するため2022年までに1万人を減員。
アウディも2025年までに9500人減らす。
日産は来年1万2500人を削減、
フォードは1万7000人を削減する。
GMは世界的な工場再編を進め、牙城のカナダ・米国でも着手している。
以上、報道各紙参照
現代・起亜グループは、人員削減の必要性は認めているものの、リストラに反対する文政権を無視して断行できる韓国の経営事情ではない。労働組合も許さず、すぐストも打つ。
自動車業界では完全自動運転車開発に向け、EV化は進み、産業革命が生じている。
産業IOT、ロボット&ロボットSIはさらに進化し続け、製造現場は人を要しないロボット工場化が進み続ける。
こうしたことにより、従来の販売世界戦略や工場進出戦略などは通用しなくなる恐れも高い。
現代Gは目先では、スト、鋼板価格の値上げ、最低賃金増に伴うコストプッシュが今後表面化し、これまでのような世界でのコストパフォーマンス戦略は通用しなくなる。
すでに中国勢は輸出に動き出しており、ブランド力に乏しい韓国勢は東南アジア・中央アジアやロシア・東欧など新興市場で中国勢と対峙させられることになる。
現代・起亜自動車グループの世界販売台数
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|
総販売台数
|
|
/万台
|
台数
|
前年比
|
2013年
|
754.84
|
5.9%
|
2014年
|
800.51
|
5.8%
|
2015年
|
801.57
|
0.1%
|
2016年
|
788.02
|
-1.7%
|
2017年
|
725.10
|
-7.0%
|
2018年
|
739.80
|
2.0%
|
2019年※
|
654.91
|
-2.0%
|
・※2019年は1~11月の累計値
|
韓国勢の工場進出等の投資最近推移
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完成時期
|
メーカー
|
進出地
|
年生産キャパ
|
投資額等
|
2016年夏
|
起亜
|
メキシコ
|
30万台
|
|
2016年秋
|
現代
|
中国河東省
|
30万台
|
|
2017年春
|
現代
|
中国重慶市
|
30万台
|
|
2018年
|
起亜
|
中国
|
30万台
|
販売不振閉鎖
|
現代
|
中国
|
30万台
|
販売不振閉鎖
|
|
2019年秋
|
起亜
|
インド
|
30万台
|
|
2019年秋
|
現代
|
インド工場拡張
|
|
既存60万台
|
|
315億円
|
|||
2021年予
|
現代
|
インドネシア
|
15~25万台
|
1700億円
|
2022年予
|
現代
|
光州市立工場
|
新車
|
生産委託決定
|
2025年予
|
現代
|
ソウル市
|
本社ビル等
|
5000億円
|
2019年 インドのおける現代自動車 の100万台へ道
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||||||
|
現代
|
インド全体
|
||||
|
2019年
|
2018年
|
2019年4輪車
|
|||
|
台数
|
前年比
|
台数
|
前年比
|
台数
|
前年比
|
1月
|
45,803
|
0.6%
|
45,508
|
8.3%
|
367,716
|
-0.9%
|
2月
|
43,110
|
-3.1%
|
44,505
|
5.1%
|
359,720
|
-0.9%
|
3月
|
44,350
|
-7.6%
|
48,009
|
7.3%
|
400,836
|
-2.1%
|
4月
|
42,005
|
-10.1%
|
46,735
|
4.4%
|
316,221
|
-14.9%
|
5月
|
42,502
|
-5.6%
|
45,008
|
7.1%
|
308,194
|
-18.4%
|
6月
|
42,007
|
-7.3%
|
45,314
|
20.8%
|
296,503
|
-16.3%
|
7月
|
39,010
|
-10.3%
|
59,590
|
1.1%
|
257,656
|
-29.9%
|
8月
|
38,205
|
-16.6%
|
45,801
|
-2.8%
|
248,421
|
-33.2%
|
9月
|
40,705
|
-14.8%
|
47,781
|
-4.5%
|
281,736
|
-27.5%
|
10月
|
50,010
|
-3.8%
|
52,001
|
4.9%
|
351,800
|
-5.2%
|
11月
|
44,600
|
2.0%
|
43,709
|
-0.7%
|
325,680
|
-3.9%
|
12月
|
↓1~11
|
|
42,093
|
4.8%
|
↓1~11
|
|
|
472,307
|
-9.9%
|
566,054
|
|
3,514,483
|
-14.0%
|
・同グループの起亜自動車は2019年秋に初の工場完成
|
・インドにおける現代グループの年生産キャパは現行100万台を超えている。
インドでは、政府のシャドーバンキング監視強化により、自動車ローンが組めず、大幅に販売台数が落ち込んでいる。その対策として、自動車ローンの緩和策や自動車税率の上昇先送りなどし、やっとマイナス幅が小さくなってきている。
現代+起亜の米国販売推移
|
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|
販売台数
|
前年比
|
2012年
|
1,260,606
|
|
2013年
|
1,255,962
|
-0.4%
|
2014年
|
1,305,952
|
4.0%
|
2015年
|
1,387,528
|
6.2%
|
2016年
|
1,400,823
|
4.3%
|
2017年
|
1,275,223
|
-10.4%
|
2018年
|
1,267,619
|
-0.4%
|
2019年
|
1,207,171
|
4.5%
|
・2019年は1~11月累計値
|
米国では評価機関へのロビー活動の成果か高評価される車両が続出し、今年は全体が▲0.8減(1~11月累計)となっているものの同社は4.5%増となっている。
特にSUVが好調という。ただ、ピークの2016年の140万台にはまだ10万台足りない。今後のリスクは、リコールなどで問題(米当局は昨年夏100台あまり出火した調査に入っている)が発生すれば、米国ではすぐ販売台数に影響してくる。
メキシコ 2019年1~11月累計販売台数
|
|||
|
2019年
|
2018年
|
前年比
|
起亜
|
87,220
|
85,917
|
1.5%
|
現代
|
40,950
|
45,525
|
-10.0%
|
現代G計
|
128,170
|
131,442
|
-2.5%
|
・ 現代Gの2015年の年間販売台数37,272台(工場進出前)
|
メキシコは工場進出で大きく販売台数を伸ばしたが、肝心のアメリカ向け輸出は、販売台数の減少で伸びていない(2015年比)。メキシコで大量生産し米国へ輸出すれば、勧告での生産量が減少することになり、労働組合が許さない。
現代・起亜Gの中国販売台数推移
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||
|
中国
|
|
/万台
|
台数
|
前年比
|
2013年
|
157.75
|
17.7%
|
2014年
|
176.61
|
12.0%
|
2015年
|
167.88
|
-4.9%
|
2016年
|
179.20
|
6.7%
|
2017年
|
114.46
|
-36.1%
|
2018年
|
118.05
|
3.1%
|
2019年※
|
86.54
|
-15.2%
|
・※2019年は1~11月の累計値
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・輸入車含まず
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今年は100万の大台を切る可能性が高くなっている。
最近ではTHAAD不買から、信頼性・中古引取価格などによる購入心理にも変化が出てきているようだ。主力の中国勢車は、エンジンは三菱GDIエンジン+トランスミッションは日本製かドイツ製を搭載しており、パワートレインでは韓国勢に見劣りせず、韓国勢車より2割安い。
[ 2019年12月20日 ]