県警幹部とのテープ内容 基山女性暴行死事件、佐賀県警本部長「対応に不備なし」
昨年10月、福岡県太宰府市で、乗用車内で佐賀県基山町の女性(36)が暴行され死亡しているのが見つかった事件。福岡県警が捜査し、福岡地検は傷害致死罪などで無職の女(41)や元暴力団組員の男(47)らを起訴した。
家族側は事件前、佐賀県鳥栖署に女性を、女らから「引き離してほしい」などと繰り返し相談。昨年9月25日には、女性の夫(35)が、女らから金銭を要求された際の電話のやりとりのテープを鳥栖署に持参。被害届の受理を求めたが、対応した署員は、担当者が当直時間帯で不在であることを理由に、後日来署するよう求めた。当事件を巡って、事件前、昨年6月から家族が佐賀県警鳥栖署に11回にわたり繰り返し相談していた。
佐賀県警の杉内由美子本部長は12月2日の県議会で、「(鳥栖署の)対応に不備はなかった」との従来の説明を繰り返した。
佐賀県警は11月28日、当事件の署の対応についての調査結果を発表し、「相談内容は、金銭貸借に関するトラブルで、身の危険を訴えるものではなかった」として、対応に不備はなかった」と説明した。しかし、県警は家族への聞き取りを行わなかった。
被害を相談した夫は、「警察が迅速に動いてくれていたら、事件を防げた」と訴えている。
一方、県警は、金銭要求のテープも「後日、刑事が対応すると回答したが、家族は来なかった」と述べている。
しかし、家族側は、「対応した署員から、金銭要求された際のやりとりを録音した音声データを文字起こしするよう求められた」と主張していることについては、「確認できなかった」とした。
佐賀県警の井手栄治刑事部長も11月20日、記者会見で「(家族に対して謝罪したのは)県警の事実確認の結果と、家族の認識に違いがあったため。『警察の対応に不備があって申し訳ないという脈絡ではない』」と主張した。
佐賀県警は調査で鳥栖署に対応の不備はなかったとしたが、今年7月、家族が「署が迅速に対応してくれていたら事件は防げた」として提出した質問状に対し、県警本部の幹部らが口頭で回答していた。
その家族と佐賀県警との主なやりとりを、県警側の承諾を得た上で約5時間40分に及ぶやりとりを録音していた。その内容は次の通り。
<県警幹部と家族の対話テープ>
家族
「相手は暴力団をちらつかせていた。そのことを署員に伝えても『(暴力団の)代紋を見たのか』と言われた」
県警
「『何で相手が暴力団と分かるのか』という聞き方をした職員は確認できている」
「要は、誤解されるようなせりふを言っているのはよくないよ、と。実際、説明不足のところが非常に、今回調査をやってみて…」
家族
「説明不足でなくて、言い訳としか聞こえない」
家族
「『(金銭を要求された際の)録音データを抜いてほしい』と言ったら、『うちじゃできません。他の媒体に落として来てください』と言われた」
県警
「そのときは改めて来てもらった方がいいと考えたようだが、やっぱりお預かりすべきだった」
家族
「署員から『録音データを文字起こしして持って来るように』とも言われた。それができるまでは、署に行けなかった」
県警
「署員は『テープ起こしをして持って来いというつもりで言ったのではない』と説明している」
「そうであるなら、翌朝にでも(家族に)電話をかけて、都合を聞いて『データを持ってきてもらえますか。こっちで他の媒体にコピーします』という対応を、当然やるべきだったと考えている」
県警
「(相談内容は)署長まで報告される。その中にあって、確かに相談の回数が頻繁に多いとか、話の内容が最初は家庭内のトラブルみたいな話だったのが、恐喝の話が出たりとかだんだん事件性が高くなっているんじゃないか、というような判断が、報告される中でできてなかったと言わざるを得ないと思う」
家族
「上司は、対応した署員に指示をしていたのか」
県警
「組織として、配慮が足りなかったり、指導が足りなかったり、指示が足りなかったり、いろんなものがあるので、そういうところに問題があったとは思っている」
家族
「こちらの思いや切羽詰まっている状況は、どこまで情報共有されていたのか」
県警
「(相談を受けた際には)相談内容と対応結果を書くようになっているが、その中身が薄っぺらになってたりした部分もあったりして、署長まで報告する中で、(家族が)これだけ訴えているのがどれだけ伝わっているんだというところが、各段階でなかなか伝わってなかったのかな、と」
「それであの…、見抜くことができずに、適切な指導をできていなかった部分は多分にあったんだな、と。(対応した署員の)話の聞き方に対しての指導も、なかなかできていなかったのかなと考えたところだ」
「1人の警察官が相談を受けているが、対応は所属(署)でやるので、各級の幹部それぞれが報告を受けた時点で、全体を見渡して適切な指示ができてなかったのかなと。そういう点では非常に申し訳ないところがあった」
家族
「どうすれば緊急性を理解してもらえたのか」
県警
「それはこの場では何とも言えない。ただ、(対応した署員)1人のフィルターで、相談の内容が正確に伝わってなかったんじゃないかというのは、そうだったと思う。報告を受ける中で、一言でも『もう一回こちらから連絡して話を聞け』とか、そういう声掛けができていなかったのは、非常に申し訳ないと思うし、報告書そのものが、切迫感を感じるようなものでもなかったというのも事実だし、そこを非常に、警察側も確認不足だったなと、お答えする以外にない」
家族
「県警の説明には納得できない」
県警
「納得いただけるような説明ができているとは思ってないし、いろいろと(法的に対応)できない部分もあったかと思うが、一つ一つの相談に対して、きちんと誠意を持ちながら対応すべきだったと思っている」
家族
「対応した署員は『足りない部分があった』という認識は持っているのか」
県警
「本人は持っている。知識も不足している部分もある。だからこそ、担当の係に尋ねたりしたこともあるが、尋ねた上で引き継ぎができていない。そういうもろもろのミス。相談の内容によって、それぞれの担当が聞くという話になっているから、その辺の引き継ぎができてない。その部分について(署員は)至らなかったと反省はしている」
以上、西日本新聞参照。