米国経済 雇用増数の大幅減をどう見る 日本経済への影響
米景気はまだ新コロナの感染数に影響されており、経済過熱化に備えたテーパリンク(緩和の修正)の問題を抱え、株価も頭打ちとなっている。
金融緩和策は、資産買い入れと金利が主なものであり、その修正は、資産買い入れ規模の縮小、金利を上げることにあり、景気次第となる。過度なインフレを誘引する過熱化を避ける策、一方で大型景気刺激策のインフラ投資の予算も執行段階に入っており、その調整が必要となっている。しかし、足元の景気はまだ新コロナからの脱出には至っておらず、9月の非農業雇用者の増加数が大幅鈍化として現れている。
しかも、外部要因も景気に影響しだしている。
欧米の景気回復、それを支える輸出国の経済も回復途上にあり、すでに資源・燃料価格が暴騰、物流経費も高騰、賃金上昇などインフレ圧力は限りなく増加している(金余り現象が相場の投機的な動きに拍車をかけている)。
自動車は台湾の半導体部門の生産は改善されたものの、マレーシアの新コロナロックダウンによる半導体を組み込んだパッケージ生産が滞り、生産できず、玉不足で大幅に販売機会を喪失している。10月1日にロックダウンは解除されたものの、改善にはさらに時間を要するものと見られる。
米国では、自動車産業も販売増を予定して大量に雇用しており、ここにきて雇用者増の大幅鈍化となっているようだ。
米景気の9月の調査時点は規制大幅緩和の中、コロナ感染拡大(9/1日19万人感染)時期と重なろうが、その感染数は10月少し落ち着いてきている(10/8日10.7万人)いる。しかし、ワクチン接種が頭打ちになり久しく、ブースターショットに時期も重なり、ピークアウトしているものの感染者数の減少率も鈍化している。
電力不足・不動産市場の大混乱に陥っている中国経済、国内外に大きな影響を与える可能性があり、米国ではクリスマス商戦の品不足から来る物価高騰の可能性もある。
物流経費は港湾の新コロナ混乱は続き、燃料価格まで急騰している。自動車では半導体不足という外部要因により生産が滞り、販売機会を喪失している。
米国の場合、燃料価格の高騰も生産は自国消費で賄われ相殺されるもののGDPの7割近くを占める消費経済を悪化させる。
トランプ前大統領はOPECに対して直接、恫喝を入れ生産を増加させ、高騰を押さえ込んでいたが、EVにシフトしているバイデン大統領は消費者の景気が悪化することさえ考えず放置するものと見られ、自動車生産もまだ半導体不足の影響を受け、中国経済が低迷すれば10~12月の景気すら危うくなってきている。新自由主義は中国ににじり寄ったオバマ時代に全盛を向かえた。トランプは新自由主義を掲げながら、景気第一策を採り、統制経済の一面も有していた。バイデンはオバマに近い。
そうした中、米国ではここ3ヶ月国債の長期金利の上昇も一段落しており、減少した雇用増数にテーパーリンクの速度を調整するものと見られる。
慎重に対応しなければ、景気悪化の中、物価上昇というスタフグレーションのスパイラルに陥る可能性すらある。
日本は米中依存度が物だけではなく精神的にも大きく、両国が風邪を引けば、日本は寝込むことになる。日本のGDPに占める消費はバブル以降、賃金が下がり続け、縮小が続いている。その恩恵で企業はボロ儲けしても従業員に還元せず、株主だけに還元し、消費低迷が続くデフレの悪循環に突入して久しい。
スクロール→
米国の自動車販売台数 |
|||||
|
2019年 |
2020年 |
2021年 |
21/20 |
21/19 |
1月 |
1,133 |
1,144 |
1,110 |
-3.3% |
-2.0% |
2月 |
1,265 |
1,373 |
1,196 |
-12.7% |
-5.5% |
3月 |
1,609 |
990 |
1,605 |
61.9% |
-0.2% |
4月 |
1,332 |
860 |
1,512 |
110.4% |
13.5% |
5月 |
1,590 |
1,111 |
1,586 |
42.2% |
-0.3% |
6月 |
1,510 |
1,111 |
1,309 |
16.4% |
-13.3% |
7月 |
1,396 |
1,227 |
1,291 |
4.7% |
-7.5% |
8月 |
1,650 |
1,319 |
1,096 |
-17.2% |
-33.6% |
9月 |
1,273 |
1,352 |
1,007 |
-26.1% |
-20.9% |
10月 |
1,344 |
1,362 |
|
|
|
11月 |
1,414 |
1,214 |
|
|
|
12月 |
1,534 |
1,519 |
|
|
|
9月迄計 |
12,758 |
10,487 |
11,712 |
11.7% |
-8.2% |
|
|
-17.9% |
|
|
|
年計 |
17,050 |
14,582 |
|
|
|
|
|
-14.5% |
|
|
|
スクロール→
米国の景気動向 |
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|
GDP |
消費者景気信頼感指数 |
消費者物価指数 |
ISM 製造業景気指数 |
失業率 |
非農業雇用増加数 |
|
|
1985=100 |
1982~84=100 |
50好不調 |
|
|
20/1月 |
|
130.4 |
258.0 |
51.1 |
3.6 |
31.5 |
20/2月 |
|
132.6 |
258.7 |
50.3 |
3.5 |
28.9 |
20/3月 |
-5.1 |
118.8 |
258.1 |
49.7 |
4.4 |
-168.3 |
20/4月 |
|
85.7 |
256.4 |
41.7 |
14.7 |
-2067.9 |
20/5月 |
|
85.9 |
256.4 |
43.1 |
13.3 |
283.3 |
20/6月 |
-31.2 |
98.3 |
257.8 |
52.2 |
11.1 |
484.6 |
20/7月 |
|
91.7 |
259.1 |
53.7 |
10.2 |
172.6 |
20/8月 |
|
86.3 |
259.9 |
55.6 |
8.4 |
158.3 |
20/9月 |
33.8 |
101.3 |
260.3 |
55.7 |
7.9 |
71.5 |
20/10月 |
|
101.4 |
260.4 |
58.8 |
6.9 |
68 |
20/11月 |
|
92.9 |
260.2 |
57.7 |
6.7 |
26.4 |
20/12月 |
4.5 |
87.1 |
260.5 |
60.5 |
6.7 |
-30.6 |
21/1月 |
|
88.9 |
261.6 |
58.7 |
6.3 |
23.3 |
21/2月 |
|
90.4 |
263.0 |
60.8 |
6.2 |
53.5 |
21/3月 |
6.3 |
109.0 |
264.9 |
63.7 |
6.0 |
78.5 |
21/4月 |
|
117.5 |
267.1 |
60.7 |
6.1 |
26.9 |
21/5月 |
|
120.0 |
269.2 |
61.2 |
5.8 |
61.4 |
21/6月 |
6.7 |
128.9 |
271.7 |
60.6 |
5.9 |
96.2 |
21/7月 |
|
125.1 |
273.0 |
59.5 |
5.4 |
109.1 |
21/8月 |
|
115.2 |
273.4 |
59.9 |
5.2 |
36.6 |
21/9月 |
|
109.3 |
|
61.1 |
4.8 |
19.4 |
スクロール→
バルチック海運指数 |
||
19/6月 |
1,354 |
|
19/9月 |
1,857 |
|
19/12月 |
1,123 |
|
20/3月 |
556 |
|
20/6月 |
1,749 |
|
20/9月 |
1,667 |
|
20/12月 |
1,366 |
|
21/3月 |
2,178 |
|
21/6月 |
3,255 |
|
20/9月 |
4,644 |
|
10/8日 |
5,650 |
|
・資源や穀物のバラ積船の船賃指数:新コロナにより荷揚げが大幅減速、湾外での滞留船舶大幅増で船舶不足、+燃料価格の高騰 |
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