中国 経済危機 恒大を筆頭に不動産危機 これまでの経過
野村證券は、中国の不動産開発業界の債務残高は約5兆ドル(約560兆円)と推計している。それも2016年から5年間でほぼ倍増している。
2020年8月、不動産価格の上昇に業を煮やした習政権は、天下の宝刀「共同富裕」を旗印に不動産業界に対して「三道紅線(3本のレッドライン)」を導入、住宅ローンを含む不動産関係への融資に対する総量規制を金融機関に命じ、また、総負債に対する自己資本率、新規借り入れの条件として既存債務返済の義務付けを命じている。
「三道紅線」政策の結果、債務不履行を起こした不動産会社や、中国恒大のように今春から建設代金が支払えず訴訟沙汰となり、ここにきて、ほとんどのマンション建設現場の工事はストップ、社債の利息さえ支払えない事態に陥っている不動産会社もある。
これを受け、これまでの中国の慣行である購入者がマンション契約時に代金全額の支払いをしなくなり、不動産会社は新たに建築代金の調達が必要となったものの、「三道紅線」政策で金融機関からは借り入れできず、資金繰りに大きな重石となっている。そのためか最近のドル建て社債の金利は10%以上の高い金利で、超低金利時代に発行して資金を捻出してきている。
今回の問題以前から、中国不動産市場は全国各地に膨大な数の売れ残り物件が存在し、悪化の一途をたどっているという見解もある。キャピタルエコノミクスのアジア担当チーフエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏の試算によると、中国不動産市場は依然として約3000万件の売れ残り物件を抱え、さらに、購入されたものの実際には誰も住んでいないとみられる投機物件が1億件ほど存在するという。以前から地方政府主導の乱開発によりゴーストタウンの存在は知られていたが、経済成長にこれまで封印されてきていたものの、今回の問題で再びクローズアップされているようだ。
10月15日、中国不動産開発会社の中国地産集団(CPG/チャイナ・プロパティーズ・グループ)は、子会社が発行した社債について、同日の償還期限までに元本と利息を支払うことができず、デフォルト(債務不履行)に陥ったと発表した。
期限を迎えた社債は2億2600万ドル(約260億円)で、金利は年15%。CPGは債務の借り替えや資産売却が償還期限に間に合わなかったと説明している。
10月15日、中国の不動産会社、キン苑地産(鑫苑/シンユエン)は、10月15日が償還期日の2億2900万ドル(約260億円)のドル建て社債について、新たな社債2億0540万ドルおよび現金1910万ドルと交換する提案に保有者の90%以上が同意し、デフォルト(債務不履行)を回避したと発表した。
10月13日、格付会社のS&Pグローバルは緑地控股集団(グリーンランド・ホールディング・グループ)について、資金繰りが難しく、苦境を乗り切る力も限られるとして格付けを引き下げた。目先の社債償還には対応できる見込みだとしながらも、販売および資金回収の悪化に伴い、今後1年で現金が減り続ける可能性があるとして、格付を「BB」から「B+」に下げた。
10月12日、中国で不動産開発を手掛ける新力控股集団は、今月18日に期限を迎える社債2億5000万ドル(約280億円)相当を償還できるとは見込んでおらず、その他2銘柄でクロスデフォルトを招く可能性があると発表した。新力のドル建て債発行残高は6億9400万ドルであるという。すでに中国内では9月、社債の支払いができず債務不履行を生じさせている。
10月4日、中国不動産中堅の花様年控股集団(ファンタジア・ホールディングス・グループ)が4日に返済期限を迎えたドル建社債約2億600万ドル(約230億円)を償還できず、格付会社から部分的な債務不履行(デフォルト)と認定された。
花様年は、広東省深圳市を拠点にし、中国の主要都市で住宅や商業施設などの不動産開発を手掛けている。習国家主席の政敵である江沢民元国家主席の最側近である曽慶紅元国家副主席の親族が創業した不動産開発会社。
9月23日、中国恒大集団はドル建て社債8350万ドル(約92億円)の利息の支払いがに期限を迎えたが支払えなかった。デフォルトまでには30日間の猶予期間がある。
なお、恒大は小口投資家にシャドーバングを通じて販売した運用商品400億元(約6850億円)相当は既に支払いができず全国で抗議活動が起きている。同社のほとんどの工事現場がストップしている。
恒大の資産は約2兆元(約34兆円)
10月11日、恒大の2022年償還債(表面利率9.5%)と2023年償還債(同10%)の利息が支払われていない。2024年償還債(同10.5%)を合わせた計3本が11日に利払い日を迎え、合計利払い予定額は約1億4800万ドル(約168億円)に上る。
同社は香港本社ビルを売却しようとしたが白紙になった。新興のEV会社や本業外の傘下企業の売却を進めているが進んでおらず、直系の不動産開発会社1社の売却も進めているがその後不明。
今年1~3月にかけ大手不動産開発会社の華夏幸福基業(北京市/157億元債務不履行)や国有不動産会社の天津地産集団(天津市)が債務不履行に陥っている。
今年の上半期で中国の不動産会社12社が債務不履行に陥り、不履行総額は約192億人民元(約3400億円)に上るという。
中国の不動産開発会社には、国営企業もあり、それも中央政府系と地方政府系があり、そうした不動産会社でも財務健全会社とそうでない会社に分かれ、国営の不動産開発会社であっても安心できない。
とはいえ、不動産産業は関係する業界も多く、一説によるとGDPの28%に達するといい、消費に次ぐGDPの構成要素となっており、天下の宝刀を抜き限れば、GDPも滅多切りにする可能性を秘めている。
中国の不動産問題について、キャピタルエコノミクスのアジア担当チーフエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏の試算によると、中国不動産市場は依然として約3000万件の売れ残り物件があり、8000万人が暮らせるだけの住居が余っている計算、さらに、購入はされたものの実際には誰も住んでいないとみられる物件が1億件ほど存在し、ざっと2億6000万人分の空き室を生み出しているという。
韓国でも・・・・
似たような政策は、不動産バブルを演じ続ける韓国でも採られている。政府の不動産政策はことごとく失敗し、そのたびに不動産価格が上昇している。
そうしたところに、中央銀行の韓国銀行が主導して、不動産バブルと共に危惧されている家計負債の膨張を食い止めるため、金融機関に対し、家計負債に対する総量規制を実施している。
結果、家計負債の6~7割を占める不動産関係の借り入れを抑制させることになり、不動産価格の上昇を食い止める効果もあり二法作戦。しかし、チョンセ(住宅代金を一度に支払い、家賃が発生しない借家制度)融資に苦慮しており、抜け殻になる可能性もある。また、失敗や極端すぎれば、バブル崩壊の危機にも直面する。
(日本のバブル沈静化政策は総量規制と金利の大幅上昇により強制的にバブルを崩壊させたが、そのハードランディング政策は失敗であった。その直後からの経済立て直しの膨大な公共投資策は、日本を国債の漬物にする元凶ともなった。バブル当時、米国を買い占めていたことから米政権の強力な圧力もあり、時の脳なき政権者と日銀総裁がハードに崩壊させた。)
ただ、韓国の場合、不動産取得に関する法人借り入れについては甘く、外国人の不動産買い付けにはさらに甘い規制にとどめている。
一方、中国の投資市場は「共同富裕」策により先行き暗くなるばかり、行き場を失った中国の投資金が、2018年4月の南北板門店会議を前後して大量の中国資本が北朝鮮の開発拠点としてソウル首都圏の不動産を買い漁ったように、再び韓国へ向けられる可能性もある・・・。
ソウル首都圏のマンション価格の高騰は、文政権の首都圏の再開発抑制政策により需給バランスが大幅に崩れたことに起因しており、ここにきて、韓国政府は郊外に大規模住宅団地の造成計画など発表している。しかし、担当する開発公社の不正が後を絶たず、なかなか前に進んでいない。それでも5万戸程度、需給バランスだけから見れば沈静化させるには程遠い開発数量であり、民間による再開発規制を緩和しない限り、ラチはあかないようだ。
文政権になり不動産価格高騰の規制をこれまでに20数回、大きなものでもうち4回実施したにもかかわらず高騰し続けているのは、朴政権時代首都圏での供給量は約5万戸、文政権になり約3万戸まで減じたことにすべての原因がある。机上の空論の左派系経済学者を青瓦台の責任者に据え、不動産対策を講じさせたことに問題が帰結している。
中国政府は、これまで何回ともなく、不動産バブルの規制策を講じてきた。しかし、景気が低迷するたびに不動産に対する金融緩和策をとり、景気回復を図ってきた経緯もある。
GDPに占める不動産関連投資は3割弱と大きく、三道紅線の手綱を締め続ければ、多くの不動産会社が危機に陥り、全国に多くの開発を行い、すでに代金を支払っている購入者も多く(中国は契約段階で全額支払う慣習あり)、不動産にかかわる経済・金融問題が一挙に表面化することになる。
スクロール→
中国・不動産業者 危険度リスト |
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2021年9月版 |
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1 |
恒大地産(不履行) |
2 |
華夏幸福基業(不履行) |
3 |
天津地産(不履行) |
4 |
泰禾地産 |
5 |
花様年(不履行) |
6 |
鑫苑置業 |
7 |
新力地産(不履行) |
8 |
四川藍光発展 |
9 |
陽光100 |
10 |
融創中国 |
11 |
嘉凱城集団 |
12 |
格力地産 |
13 |
京投発展 |
14 |
新華聯 |
15 |
鴻坤地産 |
16 |
恒泰地産 |
17 |
実地地産 |
18 |
藍光発展 |
19 |
宝能集団 |
20 |
栄盛発展 |
21 |
天房集団 |
22 |
建業集団 |
23 |
三盛宏業 |
24 |
協信遠創 |
25 |
広州富力地産 |
26 |
中南建設 |
27 |
祥生地産 |
28 |
新城集団 |
29 |
金地集団 |
30 |
緑地集団 |
31 |
碧桂園 |
32 |
華南城 |
33 |
融信中国 |
順不同 |