ウクライナ侵攻後で、どう変わる日本の平和教育
ロシアによるウクライナ侵攻の衝撃
2022年2月24日、プーチン大統領がウクライナへの軍事作戦を決行すると発表、以降約4か月近くにわたり軍事侵攻・侵略行為を続けており、国連によればウクライナ側の一般市民の被害は3000人を超えたとしている。
一方、欧米諸国は協力を求めるウクライナに対し、武器弾薬や兵器、食料などを供与しているが、大戦になることを恐れロシアとの直接の対決は避けている。
日本でいえば、日中戦争に表向きは中立の立場だった欧米が、中国国民党に協力していた時のようなものだろうか。
これからの日本の国防
遡ること81年前、昭和16年(1941年)の12月8日、日本軍はハワイ・オアフ島の真珠湾を奇襲、続いてマレー半島に奇襲上陸をもってアメリカ・イギリスらに宣戦布告。
1939年9月1日にナチス・ドイツのポーランド侵攻から始まった第二次世界大戦に新たな、それも特大の火ぶた(太平洋戦争)が切って落とされた。
アメリカが待ち望んでいたといわれる日米戦争は約4年続いたが、ナチスドイツが降伏後、アメリカが2つの核を日本本土に落すことで終わりを迎える。
大戦中は、日本国民が一丸となり、戦争や政府への反対などは一切できない情報統制された閉鎖空間だったことは知られているとおり。
現在のロシア国内においても、プーチン批判はもちろん、戦争反対などとはネット空間ですらいえない状況であり、どれだけ年月が経とうとも戦争中の国家国民の行動はそうそう変わらないようだ。
ロシア国営タス通信によると、タウンホールミーティングの形を取ったこの番組には、12歳の少女をはじめとする若者たちとプーチンが出演した。その中でのこの少女とプーチンのやり取りは、ロシア政府が「プロパガンダ戦争」におけるターゲットを、子どもたちを含む若い国民にまで拡大していることを改めて浮き彫りにしている。
思うに、大戦前から欧米と日本との間での中国大陸の利権争いや、国共内戦による中国と他国の関わりなどが現代とは状況が違っているものの、戦争という行為だけみれば、日中戦争からの太平洋戦争と、今のロシアとウクライナの戦争は、かなり比較しやすい戦争ではないだろうか。
そして、太平洋戦争においての日本軍の所業がどういうことだったのか、今でも変わることなく悪であると断定されていることが、違った見方に変わる切っ掛けになるのではないだろうか。
また、今回のロシア・ウクライナ戦争以降、日本はこれからの国防をどう強化していくかを問われるであろうし、これからのロシアとの関わり、延いては中国や北朝鮮との関わりも、政治家だけでなく国民みんなが真剣に考えていかなければならない課題となるだろう。
しかし遺憾ながら、日本の野党の中にはロシアより「九条改正を企む自民党の方が許せない」とまでいう輩もおり、野党が憲法改正を死守しようとする限り、日本の国防の前途は暗澹としているとしか言いようがない。
ロシアに共感する人たち
少し前、「ロシアよりウクライナの方を疑う」といった元教師の知人がいた。
曰く「なぜテレビはロシアだけを非難するのか、ウクライナも成人男性を強制的に徴兵しており、軍国主義的立場ではないか。
もともと紛争当事者らからの救援でありロシアは正しくは侵略ではないともいえる。核の件も米国もけん制しており50・50だ。
日本のメディアはこの戦争を正しく伝えていない。」というのだ。
まず、日本においては、どう贔屓目に見ても、戦争を仕掛けたのはロシアであり、一般市民を殺しているのもロシアで、テレビに映るウクライナは被害国に見えているはずである。
テレビ局はそう報道し、普通の人ならばロシアの侵略戦争だと断じてもおかしいことは一つもない。
日本自身も太平洋戦争において不可侵条約を破られ、北方領土をも不法占拠され、未だそれが続いているロシアがどんな国かを知っているはずなのにだ。
その元教師は、共闘世代でもあり日教組で活動していた、戦争反対、九条改正反対の良くみる左翼系の人である。
ただ、いつもはとても大人しい、穏やかな人なのだが、もともと戦争や自衛隊などのキーワードに敏感ではあった。
そうはいっても、状況が変われば、「日本が窮地に陥れば」、そんな人でも意見は変わると思っていた。
そして彼にこの戦争をどう思うか尋ねてみた。
いつも日本を対象に「戦争は悪」「侵略は悪」「過去に市民や女子を巻き込んだ―」というのだからきっとロシアを咎めるに違いないと。
さらにいえば「核廃絶、原発反対」でもあるのに、その答えは想像と違った。
彼ら共闘世代は鬼畜米英から一転、アメリカ様万歳と言い始めた「大人を信じられなくなった世代」より10年ほど下ではあるものの、先生などの大人たちや権力を信じない空気の中にいたと思われる。
そんな彼らは以前と変わらずに、これといった理由もなく日本やアメリカを、敵とみなし続けているようだ。
誰も日本政府の犠牲になったわけでもない共闘世代や反日に染まった人たちは、「日本が戦争できる国になれば他国を侵略する」と本気で思い込んでいるのだろうか。
まるで言葉の通じない異世界の人と話しているような感覚、彼との会話はそれだけ衝撃的なものだった。
これからの日本の平和教育
そして、これから間違いなく、日本の平和教育が、ここからどうすればいいのかという問題に直面してくる。
ウクライナの戦争によって、いままで日本を覆っていた圧力にも似た平和主義が、実は逆に戦争をおびき寄せるものに見えてくる。
上記のニュースにあったロシア国内の子供らへの洗脳を重視したプロパガンダ戦略は国内だけに限らない、おそらく、他国に対してもなんらかのプロパガンダを仕掛けてくるのは想像に難くない。
同じ共産・社会主義国の中国もまた日本に限らないだろうが情報工作を常態的に仕掛けていることは明白である。
だが、戦前と違い、現代の日本の子供らはテレビはもちろんネットなどで今回の戦争の痛ましさや悲惨さを嫌というほど見ている。
産まれた頃からネットやスマホが傍にある、そんな彼らに旧来の戦略が通用するだろうかは疑わしい。
もし、過去の日本の教師のように口から戦争反対を教えこもうにも今の若者は世界中の情報を簡単に見ることができる。
なぜ平和が大切か、なぜロシアは武力侵攻したのか、なぜウクライナは国民を犠牲にしても降伏しないのか。
なぜ日本、欧米は敗色強いウクライナを支援するのか、ドイツはどうして親露なのか、などなど。
その「なぜ」に、今の教育者が子供らに理路整然に、濁りなく答えることができるだろうか。
もしその答えに「特殊な意思」を見透かされてしまったら、おそらく子供たちは、戦後の変質した大人を再び見ることになるのではないか。
ロシアが自国の子供の教育を重視(洗脳教育)するのを目の当たりにした現在、彼らの子供たちに対する反戦・平和教育は、これから違った意味に、穿った目で見られるのは必至だ。
日本は敗戦国である。
戦争中の犯罪は敗戦国にのみ背負わされることが多いのは見てわかるとおり。
そして、それを謝罪しようが、反省しようが、賠償しようが、回避しようと躍起になろうが、侵略しようとする国は無慈悲にやってくる。
それが今回の戦争で目の当たりとなったのだ。
米国に従属し、中国を恐れ、ロシアを警戒し続けている国が、これからの平和を、いままでのような物差しで懺悔し平和を唱え続ける時間は、もうない。
大きく言えば日本が世界とどう関わるのかだ。
今回のロシア・ウクライナ戦争の終わり方次第で中国の方向性も予想しやすくなり、それによって日米の方向も変わっていくだろう。
子供らはいつか大人になる、その大人になる子供らをどう導くのかは我々大人が思慮深く進めなければいけない。
ウクライナ侵攻以降、これからの日本の平和教育は確実に変化していくことは間違いない。
参考;文部科学省、ウィキペディア、forbesjapan、産経新聞、朝日新聞