世銀 今年の成長率4.1%から2.9%に下方修正
世界銀行は7日、今年の世界経済の成長率の予測値を大幅に下方修正し、1970年代に経験した「スタグフレーション」(景気低迷下での物価上昇)に50年ぶりに再び見舞われる可能性を警告した。
① ロシアのウクライナ侵攻による商品価格の急騰
(今年2月までは欧米などの新コロナからの経済急回復により資源エネルギー価格が高騰、露制裁で高騰が拍車をかけたもの)
② 新コロナの大流行にともなうサプライチェーン問題、
(中国を除き、世界各国はウィズコロナ策に変更しているが、変異株次第では再び問題になる可能性がある)
③ インフレに伴う各国の通貨緊縮政策、
(新コロナからの景気回復に大型財政投資を欧米等各国が行い、景気も賃金も拡大、物価急上昇で、過度なインフレ退治に金利の引き上げを行い、米国を中心に熱を冷ます動きに転じている。その余波は日本や新興国の為替安を招き、露制裁による商品価格の更なる高騰により世界は大混乱に陥っている。)
④ 中国のロックダウン政策、
(中国のロックダウンは世界経済に打撃となる。特に日・韓・東南アジア諸国はサプライチェーン、輸出入の関係にあり、大きく影響を受ける)
以上が世界経済を押さえつける複合的悪材料とした。
世銀は、今年の世界経済成長率の予測値を1月の4.1%から2.9%へと▲1.2ポイント下げた。一昨年の新コロナパンデミックから経済回復中だった昨年の世界経済成長率の5.7%の半分の水準に過ぎない。中折れ状態。
世銀は、来年と2024年も世界経済はそれぞれ3%成長に止まると見通し、理由については、世界的な投資減などで、今後10年間、低成長が続く可能性を指摘した。発展途上国と新興国の打撃が特に大きいと予測した。
地域別では、今年、先進国は2.6%、新興国および発展途上国は3.4%成長する見通しとした。いずれも1月の予測値に比べて1.2ポイントずつ低くなった。
米国の成長率予測値は、1月の3.7%から2.5%に下方修正し、中国も5.1%から4.3%に下方修正した。
西側の制裁に直面したロシアは、1月の予測の2.4%より11.3ポイント低い▲マイナス8.9%の成長が予想されると明らかにした。
デイビッド・マルパス世銀総裁は、「平均以上のインフレと平均以下の成長傾向が、数年間続く可能性が高い。スタグフレーションのリスクが相当ある」として、多くの国は景気低迷を避けにくいと明らかにした。
特にマルバス総裁は、最悪の結果が現実化すれば、今後2年間の経済成長率は「ゼロ(0)に近いだろう」と話した。2021~2024年の世界経済の成長速度は2.7%鈍化するとし、第2次オイルショックが起きた1976~1979年の景気減速速度の2倍を越える水準だと診断した。
これを打開するために、各国政府に貿易障壁をなくし、製品の生産を増やすことを勧告した。
(露制裁下、資源・エネルギー・穀物等は短期的に回復する余地はない。肥料の主原料である尿素さえ、昨年6月から現在の価格は2.7倍に跳ね上がり、天候不順がなければ生産量増で、ウクライナ・ロシアに関係なく、現在の価格より大幅に下がり、小麦等の生産原価を吸収する保証もなく、今後、作付面積が大幅に増えるとは思われない。それも年に1回しか採れない)
以上、
景気の見通しについて世銀は4つの問題を指摘しているが、2020年の急激なEV革命により半導体不足は深刻であり、5つ目に入れるべきだろう。
2020年11月から一部の半導体が不足し出したことから、商社やメーカーが使用するあらゆる半導体の枯渇を予想して買占めに走ったことから、いまだ多くのシステム半導体が不足している状況にある。
こうした動きは、EVに始まり、あらゆる電子製品、家電製品業界に広がり、半導体価格も上昇、車両も高騰、組み込んだ電子製品も、家電も上昇させている。
消費側に物価高に見合う収入増があればインフレはやりすごすことができようが、賃金増のない日本では、インフレで高くなった生活維持商品ばかりに購入が集中し、ほかの商品は売れなくなり、耐久消費財も売れず、国内景気は悪化する。
少々収入が増加しても物価がそれ以上に上がれば、実質収入はマイナスとなる。
日本の製造業の賃金推移
30年前のバブル時代より低いが、差し引かれる社会保険料は上がり続け、消費税も上がり、その上商品価格はどれほど上昇したのだろうか。
↓家計支出
新コロナ下の家計支出は安定していないが、前年比では・・・昨年新コロナで悪かっただけに今年の増加率は上昇しようが、インフレ率を超える上昇率を期待されるものの・・・・値上がりはこれからも続く。
年初からのオミクロン株は感染しても軽度だと広報され、支出は1~4月では2.3%増加している。眼下、あらゆるものが値上がりしており、物価高が今後、急展開する可能性もある。
スクロール→
2人以上世帯の家計支出 |
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支出額 |
前年比 |
備考 |
3/1月 |
267,761 |
-6.8% |
コロナ感染拡大 |
3/2月 |
252,451 |
-7.1% |
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3/3月 |
309,800 |
6.0% |
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3/4月 |
301,043 |
12.4% |
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3/5月 |
281,062 |
11.5% |
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3/6月 |
260,285 |
-4.9% |
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3/7月 |
267,710 |
0.3% |
デルタ株 |
3/8月 |
266,638 |
-3.5% |
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3/9月 |
265,306 |
-1.7% |
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3/10月 |
281,996 |
-0.5% |
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3/11月 |
277,029 |
-0.6% |
|
3/12月 |
317,207 |
0.7% |
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4/1月 |
287,801 |
7.5% |
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4/2月 |
257,887 |
2.2% |
オミクロン株 |
4/3月 |
307,260 |
-0.8% |
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4/4月 |
304,510 |
1.2% |
↓全世帯の家計支出(前年比)
給与は、
↓4月のインフレ率は2.5%、うち食料インフレ率は4.0%に達している。
2020年の年間平均給与総額は前年比マイナス▲0.8%の433万1000円。平均を下回る400万円以下の階層は、全給与所得者5,245万人の55.1%を占める。20%高所得者層がリベンジ消費に動いても、平均以下の層の落ち込みをカバーすることできない。消費は昨年よりどれほど増加するか未知数ともいえる。
スクロール→
2022年4月の月間現金給与額/厚労省 |
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業種別支給額ランキング |
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調査対象:従業員5人以上の事業所/厚労省 |
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パート含まず/所定外+特別支給分含む |
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2022年4月 |
現金支給総額 |
前年比 |
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産業平均 |
365,411 |
1.9% |
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1 |
電気・ガス業 |
473,465 |
-0.6% |
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2 |
情報通信業 |
456,800 |
3.9% |
|
3 |
学術研究等 |
446,042 |
2.6% |
|
4 |
金融業,保険業 |
425,672 |
2.7% |
|
5 |
教育,学習支援業 |
416,571 |
2.3% |
|
6 |
建設業 |
393,191 |
4.3% |
|
7 |
不動産・物品賃貸業 |
391,508 |
0.2% |
|
8 |
鉱業,採石業等 |
378,757 |
9.1% |
|
9 |
卸売業・小売業 |
376,124 |
2.0% |
|
10 |
製造業 |
359,059 |
1.7% |
|
11 |
運輸業・郵便業 |
356,715 |
1.4% |
|
12 |
医療,福祉 |
335,911 |
1.2% |
|
13 |
複合サービス事業 |
324,647 |
-6.0% |
|
14 |
生活関連サービス等 |
295,353 |
1.9% |
|
15 |
その他のサービス業 |
294,889 |
0.7% |
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16 |
飲食サービス業等 |
274,786 |
4.9% |
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・昨年4月と比較し賃金全体平均で1.9%上昇しているが、物価上昇率が3.0%であり、実質賃金の伸び率は▲1.1%のマイナスとなっている。 |
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・なぜか公務員は入っていない。 |