マレリホールディングス(株)(埼玉)/簡易再生申請・開始決定 負債1.2兆円
続報。民事再生開始を受けていた、マレリホールディングス(株)(所在地:埼玉県さいたま市北区日進町2-1917、代表:デイヴィッド・ジョン・スランプほか)は7月7日、東京地裁において簡易再生を申請した。
負債総額は約1兆1856億円。
以下要約。
スクロール→
1 |
破綻企業名 |
マレリホールディングス(株) |
旧、カルソニットカンセイ(株) |
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(カルソニックカンセイと伊マレリの統合の持株会社) |
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2 |
本社 |
埼玉県さいたま市北区日進町2-1917 |
3 |
代表取締役 |
デイヴィッド・ジョン・スランプほか |
4 |
設立 |
2016年10月. |
5 |
資本金 |
1億円 |
6 |
業種 |
自動車部品製造会社 |
7 |
売上高 |
2020年12月期、約1兆2,665億円(連結) |
同期▲1,442億円の赤字(連結) |
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8 |
破たん |
2022年6月24日. |
民事再生法の適用申請 |
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2022年7月7日.(民事再生から変更) |
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簡易民事再生申請 |
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9 |
申請代理人 |
藤原総一郎弁護士(森・濱田松本法律事務所)ほか |
電話:03-5223-7729 |
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10 |
監督員 |
片山英二弁護士(阿部・井窪・片山法律事務所) |
電話:03-3273-2600 |
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11 |
裁判所 |
東京地方裁判所 |
12 |
負債額 |
約1兆1856億円 |
11 |
破綻理由 |
日産系の旧カルソニックカンセイ(株)は、2017年3月、日産のゴーン采配で米投資ファンドのKKRに4983億円で叩き売られた。 KKRは2018年10月に62億ユーロ(当時8000億円)でFCAからイタリアのマレリを買収した。 2019年5月KKR主導のもとカルソニックカンセイとマレリは経営統合、経営統合名目でカルソニックはマレリを実質KKRから買わせられ、統合会社の名もマレリHDになった。金融機関からの借入窓口もマレリHDが担っている。
一方、日産および日本司法当局は2018年11月、不正のゴーンたたきを執行したところ、ゴーン(ルノー会長兼欧州自動車工業会会長)を極めて高く評価している欧米の主要メディアから連日、日産と日本司法当局はたたき続け、日産の欧州や北米・南米の販売台数は急減した。大幅赤字に転落、それにより日産は採算性重視の世界的な事業再編を執行、売上台数はさらに大幅な減少した。 そのうえ急激なEV生産移行による影響も大きく受け、さらに半導体不足による生産減に陥った。(同社は2010年からEV販売しているが、販売力がなく、テスラや現代自動車などに大きく水をあけられている)。
決算では、日産やFCAへの自動車部品の供給は、規模の大きいマレリを統合していたことから、大幅赤字に転落、KKRは、今年2月事業再生のADR手続きを申請し、金融機関に対して債権カットを要請した。しかし、お人良しの日本の銀行だけではなく、東南アジアなどの銀行も融資しているため不成立、今回、持株会社だけの簡易再生の申請となった。
KKRは自らの債権カット、融資先への債権カット分の株交付(DES)が求められるのではないだろうか。 借入金の多くは伊マレリ買収に伴う新しい債務でもある。
KKRは持株比率を3割以下に減少させない限り、融資銀行は簡易再生に同意しない可能性もある。 KKRは計算づくで、経営者責任、株主責任を問われる会社更生法ではなく、経営権を温存できる日本の民事再生、なかでも簡易再生を申請したようだ。
ただ、融資銀行も今後のこともあり、KKRとの全面戦争は避けたいものと見られる。KKRの今後も含めた商品価値を融資銀行がどう見るかにかかる。
KKRは当時のゴーンと良い関係にあったものと推量される。当時のゴーンは、自らの地位の安泰のため、ルノーに対する日産の配当金を増加させるため、車両二次電池メーカーなど日産の出資会社の持株を売却させ、配当の上乗せを図らせていた。こん日の自動車市場はEVに急展開、部品点数も大幅減となり、自動車部品業界も大変革が求められている。 部品業界はそうした環境に対応できる技術開発が必須となっているが、こうした資金繰りに窮するようでは、マレリは研究開発資金も限られ、時代環境についていけず、水没する可能性すらある。
今回は、KKRがマレリを買収し、カルソニックに統合させたことにすべてが起因している。その尻拭いを融資銀行に行わせることになる。KKRは株でも放出しない限り、金融機関も納得しないのではなかろうか。 |
「簡易再生」とは、
民事再生法の付随条項で、届出総債権のうち裁判所が評価した額の5分の3以上にあたる債権を有する届出再生債権者の書面による同意があれば、債権調査・確定手続を経ずに、直ちに再生計画案の決議のための債権者集会の招集の決定が可能となる制度。
再生計画案の認否は、簡易再生の3/5より容易な1/2の同意で承認される。この分は日本の銀行だけの債権で事足りるだろう。根性のない日本の金融機関は、最低でもDESを成就させるべきではないだろうか。安易な巨額の債権カットは銀行の株主総会でも問題になることだろう。
スクロール→
カルソニックカンセイ 上場時決算 |
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14/3月期 |
15/3期 |
16/3期 |
売上高 |
9,186億円 |
9,655億円 |
1兆0,533億円 |
営業利益 |
288億円 |
315億円 |
382億円 |
経常利益 |
295億円 |
282億円 |
343億円 |
純利益 |
250億円 |
201億円 |
225億円 |
株主資本 |
1,782億円 |
2,122億円 |
2,166億円 |
総負債 |
2,495億円 |
2,475億円 |
2,219億円 |
総資産 |
4,277億円 |
4,598億円 |
4,386億円 |