アイコン 小型原発SMR 開発中止発表 建設コスト急騰 ニュースケール・パワー


原発の救世主として登場が予想されたマイクロ・小型原発、ところがこん日の人件費や資材の高騰で現在の電力の発電コストより高くなり、採算性が取れず、開発を断念するとニュースケール・パワーが発表した。

Small Modular Reactors
SMR=小型モジュール炉=革新型小型モジュール原子炉=小型原発・マイクロ原発
SMRは30万キロW以下、熱出力1000MWth未満をいう。 

米国の小型原子力発電設備を開発中のニュースケール・パワーは(2023年)11月8日、米中西部アイダホ州での小型原発の建設計画を中止すると発表した。
実現すれば米国初の案件となるはずだったが、人件費・資材高のインフレや金利高で建造費などが高騰し、経済性が見込めなくなったとしている。

 

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日本企業も小型原発に期待し、
IHI
日揮ホールディングス
が出資し、建造や部品製造に協力する方針だった。
中部電力も今年9月、ニュースケールに出資すると発表したばかりだった。

計画では、アイダホ州の国立研究所に1機あたり出力約7.7万キロワットの発電設備を6機設置。初号機の稼働開始予定は2029年で、米国の第1号案件となるはずだった。

だが、インフレで資材・人件費が高騰、ニュースケールは2023年1月、初号機の発電コストが当初計画より約5割高い1キロワット時あたり8.9セント(約13円)になるとの見通しを明らかにし、ユタ州の電力会社などに売電する予定だったが、ユーザーに価格転嫁できない水準までコストが上昇していた。

小型原発は工場でモジュールを製造して現場に据え付けるため、従来の大型原発より初期投資が少なく、設計・建設費用が膨張する可能性が少ないとされていた。

加えて、原発は温暖化ガスを排出しない。天候に左右される太陽光・風力発電を補完する役割に期待して、バイデン政権は小型原発の開発を支援していた。

一般的にプラントの初めての案件の設計・建造はノウハウが蓄積されていないため、コスト増加のリスクが高い。その後、主要部材すべてを工場で大量生産すれば、コストは下がる。
ただ、通常の原発も、フクシマ後、建造コストが安全性投資により倍以上膨らんでおり、今回のインフレでさらに建造費は膨張、高コストにより採算性はなくなっている。
ただ、原爆を国産で製造するためには必ず原発が必要でもある。

小型原発・マイクロ原発は安全性が高いとされるが、確率の問題であり、問題が発生した場合は大型でも小型でもマイクロでも関係なく周囲を含め放射能被曝・放射性物質にわる汚染問題が生じる。

新規原発は、フクシマ原発後、原発の安全投資は急拡大しており、原発の建造費が暴騰して大幅に減少している。コストを抑えられる小型原発が注目を浴びていた。

しかし、今回ニュースケールの開発断念は、昨今の物価上昇が建造費やランニングコストにも影響し、商業的観点から採算が取れないとしたもの。

(ひみつのアッコちゃんを隠している官邸が主導して情報隠蔽、虚偽情報を流すのが得意な日本とは違い、民間主導で上場企業が開発し、情報は常にオープンとなっている。虚偽では投資してくれる投資家も現れない)

 ただ、生産工場であらゆる問題を想定して対策を講じることから、通常の原発より、建造時・運転時の安全リスクはより高いとされている。

そのため、電力が必要な場所に、それも比較的狭い場所にSMR発電プラントを設置することができ、一定条件が整えばどこでも設置可能となる。
今年5月、ニュースケールは製鉄電炉メーカー大手のニューコアとも提携し、SMRプラント設置で締結していた。

<韓国>
韓国はSMRを国家挙げて研究開発するとして予算化している。
2028年までに実証炉の開発から検証までを終わらせ、2029年以降、商業発電やSMRを輸出する計画を進めている。

(韓国政府は2010年UAEへ50年間以上韓国軍付で原発4基を初めて輸出した:2020年から順次稼働中、韓国政府は原発も輸出の柱に育てる方針で、東欧で原発販売交渉を進めている。SMRも国産化すべく研究開発に当たらせている。)

そのため参加企業は先行する米企業に出資、技術を習得する計画を持ち、実際、ニュースケールSMRでも多くの部材を韓国で製造している。
ニュースケールに投資しているのは、サムスン物産(造成・建設)と斗山エナビリティー(部材資材製造)、それぞれ7千万ドル出資している。
斗山は特に積極的で、ニュースケールの米国を拠点とするサプライチェーンの構築支援、主要部材・資材を斗山が製造する事を目論んでいる。

また、ビル・ゲイツがオーナーのテラパワーにはSKグループが参画している。

<テラパワー>
ビル・ゲイツをオーナーに2006年に設立された小型原発開発会社。
劣化ウランを使用し100年間燃料棒の交換不要とする10万~100万MWの原子炉開発会社。
開発炉は、軽水炉に準じる進行波炉(TWR, Traveling Wave Reactor)とされる。
(日本の稼働原発は120万MW前後)

<超小型原子炉>
SMRそのものは、原子力空母、原子力潜水艦(原潜)、原子力衛星など超マイクロ原発が昔から開発されており、難しい問題ではない。
ただ、陸上では安全性の問題が飛躍的に高まり、発電コストの問題もあり、開発が遅れていたもの。
スリーマイル島
チェルノブイリ
フクシマ
1度あることは2度あり・3度ある。・・・何度でもある。

<ニュースケールの動き>
昨年12月、ニュースケールは、SMRの標準プラント設計(SPD)プロジェクトを完了、手掛ける「VOYGR SMR発電プラント」へ導入が加速され、汎用プラントとして顧客に提供できる。
ニュースケールは、ほかにも
昨年5月、スプリング・バレー・アクイジション社とSMRの商業化加速に向け企業結合完了
昨年7月、テクニカル・システムズ社とSMR機器を認証する試験室開発で提携
昨年9月、ハブーシュ・グループ社とSMR商業化を加速させる戦略的提携。
同9月、ロイター・ストークス社とパラゴン・エナジー・ソリューションズ社はSMRに核検知技術提供
同10月、カナダのプロディジー社と洋上可搬型小型原発の概念設計を発表。

(別会社の案件:今年5月、化学大手のダウがテキサス州の自社事業所に「Xエナジー」が商業用に開発中のSMRを導入すると発表した。)

<ニュースケールのSMR>
出力合計308メガワット(MW)の「VOYGR-4」、
出力合計462MWの「VOYGR-6」、
出力合計924MWの「VOYGR-12」
からなる3モデル>

<日本>
三菱重工がトラック積載可のマイクロ原発を開発中、原子力衛星がいくらでも飛んでいる時代、製造は比較的簡単、ただ、費用対効果、安全性の問題の克服だけが残る。
日本政府はこうした開発には金に糸目をつけないことから、いくら高コストになろうと想定外の災害を想定して開発に当たらせることになる。
ただ、日本製兵器同様、世界では通用しない・商売できない雲の上の高価格になる。

<ニュースケール・パワーの株価は>
昨年末:10.26ドル
10月17日:5.61ドル
11月7日:3.21ドル
11月8日:3.10ドル 
11月9日:?

[ 2023年11月 9日 ]

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