アイコン テスラを追い詰めるBYD:中国EV市場の台頭



中国の環球時報(人民日報の国際版)は5月30日、電気自動車(EV)米大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が今、かつて自ら嘲笑した中国のEV大手BYD(比亜迪)によって窮地に追い込まれていると米メディアが報じたことを伝えた。
記事は、CNNが「マスク氏がかつて嘲笑していた中国の自動車メーカーBYDは2023年10〜12月期にEVを約52.6万台を販売し、初めてテスラの約48.5万台を抜いて世界最大のEVメーカーになった。
今年1〜3月期の純EV市場シェアではテスラが21.5%でトップを保ったものの、BYDが16.6%で猛追した」と報じた。
また、BYDがこのほど再び大きなアクションを見せたとし、5月28日に最新のプラグイン・ハイブリッド(PHV)技術を開発したと発表した。
BYDが開発した技術で、ガソリン1リッター当たり34.5キロという燃費を達成し、航続距離も一般的なハイブリッド車(HV)の2倍に相当する2100キロを誇ると伝えた。
その上で、米国では購入補助策が取られているものの、EV販売は低迷しており、その理由の一つが、EVをサポートするインフラが整っていないことだと指摘した。

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J.D.パワーの調査によると、米国でEV購入を見合わせている消費者の52%が充電設備の不足を第一の理由に挙げていることが明らかになったと紹介した上で、EVとハイブリッド車両方の技術を持つBYDがハイブリッド技術を持たないテスラのシェアを蚕食し始めているのは、こういった理由があるからではないのかとCNNが評したことを伝えた。
記事は、BYDが台頭する以前の2011年にマスク氏がBYDの新エネルギー車をばかにしていたと紹介している。
マスク氏は「彼らの車を見たことがあるか」と笑いながら述べ、「BYDはライバル視していない。彼らが素晴らしい製品を持っているとは思わない。大した技術もない。BYDは中国市場で大きな問題を抱えているので、中国で生き残れるようにすることが彼らのやるべきことだと思う」といった主旨の発言をしていたと伝えた。
以上、
BYDは2014年には米カルフォルニア州でEVバス工場を操業させ、米市場に投入している。
テスラとBYDの違いは、テスラの場合、そのアイデアのすべてがマスク氏に依拠しており、BYDは元々二次電池メーカーでもあり、自動車メーカーでもある点、中国らしく開発意欲に多くを投資し、
① 鉄鋼・スチール
粗鋼生産は世界シェア55%前後、建設不況で、ダブ付き、価格は低下している。日本製鉄が特許を持つ電磁鋼板(方向性・無方向性)も中国最大の宝山鋼鉄が、最初に盗んだポスコ経由で技術を盗み生産している。日本製鉄は中国へ鉄鋼製品を輸出しており、中国政府からの報復制裁を恐れて訴訟もしていない。

② プラスチック製品
今やエンプラまでお家芸

③ 電装品
核心電装品は中国に進出しているドイツや日本メーカーの中国から調達している。ほかは市場がデカイことにあり中国メーカーが台頭してきている。
車両用塗料もまだ中国企業製は劣り、進出外資から調達している。

④ EVモーター類
中国のEVは政府主導で販売拡大策をとり、2010年代早々からEVバス製造販売を手がけ、技術的進化を続けており、テスラ等の優位性はほとんどない。技術も蓄積されてきている。

⑤ 二次電池の材料
電池用のレアメタルのほとんどを中国で生産、リチウムは米国や豪州から含有鉱石が中国へ送られ(中国企業が含有鉱石を購入)、中国でリチウムが抽出されている。ニッケルやコバルト、黒鉛=カーボンも世界一の石炭の燃焼工程で生産される。

⑥ 二次電池の開発
韓国勢の3元系は中国勢も製造している。一方で、安全性が3元系より高いLFP電池の改造をし続け、2020年に発表された改LFPは3元系に匹敵する走行距離を実現している。韓国勢はそれを持たない。LFP電池はニッケル+コバルトフリーであり、3元系より2~3割安い。(電池代はEV価格の25%~40%/大衆車でも塔載量によって異なる)
現在米国のEV用2次電池は、韓国メーカーがその材料を中国から購入、一部加工して韓国から米国の韓国系の電池製造工場へ輸出されている。
韓国製EVの完成車の輸出は二次電池を搭載しており、同じルートで中国から調達した材料を使い韓国で製造した電池を搭載している。
LFP電池は3元系に比較し、瞬発持続力が劣り、スポーツタイプではほとんど塔載されていない。
  
 ⑦ 価格破壊
テスラが中国で苦戦しているのは、中国は消費不況、補助金がなくなったり、大幅減少しており、価格の安いEVが重宝されていることにある。テスラ車の半額で買える。それもBYDはEV海鴎が7万元から、10万元でEV海豚からを有し、PHV秦を8万元から有している(何れも中国価格)とBYD車はテスラ車の半額以下購入できる。
BYDの安価なEVは、電池塔載量は少ないものの300キロ以上走る。
こうした価格を提供できるのは、
1、 諸材料が安価に調達できること。
2、 電池・EV等の核心部材に自社開発品が多いこと。
3、 中国では雨後の竹の子のようにEV会社が多く、その競争激化から破綻会社も多く、破綻企業の工場を安価に調達していること。
4、 米国と比較し大幅に安価に工場設備投資できること。賃金そのものが比較して大幅に安価。

EVの販売不振、次は完全自動運転車だろう。ここでもAIが既存データやGPS、センサーから自己認識して自動制御する車両が登場する。


 

[ 2024年6月 8日 ]

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