アイコン 中国製EVは世界の敵か・救世主か 欧州規制の動き


中国の2023年の新エネ車(EV+PHV)輸出は、前年比57.9%増の491万台と急増している(バスなど商用車77万台含む)。
ここ数年で欧州・アジア・ラテンアメリカ・ロシアなどへの輸出が急増、欧州では欧州メーカーに打撃を与え、アジアでは日欧メーカーの占有市場を脅かしている。
それもEVやPHVという新エネ車は価格競争に入り、中国では10万元(1元/21.57円)以内から販売している。
(2023年の中国内の新エネ車の販売台数は、前年比37.9%増の949.5万台、うちEVは24.6%増(増加数132万台)の668.5万台、コストパフォーマンスの高いPHVは84.7%増の280.4万台。)

中国の自動車の輸出先は、
欧州が38%、
アジアが34%、
ラテンアメリカが17%
の順。

 

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また、中国企業の新エネルギー車(NEV)工場の設立計画によると、
●比亜迪(BYD)は、
今年下半期にタイに15万台、
2025年にブラジルに15万台
2025年にハンガリーに10万台
の工場新設を進めている。
●長安汽車も2025年にタイに10万台生産規模の工場を設立する予定、
●上海汽車もタイで20万台を生産できる工場敷地の選定に入っている。
 以前は日本やドイツ、韓国など自動車産業の強国の影響力が強かった地域に、中国企業がEVなどを前面に出して本格的に進出している。
さらに、他国のメーカーとの提携を通じても影響力を拡大している。
●小鵬汽車は2023年7月、独VWの株式を購入する方式で、EV2種を共同開発している。
●東風汽車は日産にEVプラットフォームのSを提供。日産は中国が開発した新エネ車を欧州とASEAN諸国へ輸出することを検討している。
●零跑汽車は昨年10月、ステランティスとEVをグローバル市場に生産、販売する合資会社を設立した。同社は、中国市場への対応から一歩進んで、海外市場への進出を目的に協力の範囲を拡大している。

また、世界最大のバッテリーメーカーCATLはドイツに工場進出、ハンガリーでは100MWの巨大バッテリー工場を順次建設中(LFPと3元系を製造するものと見られる)。
欧州市場でのバッテリー販売のほか、中国からのEVメーカーの工場進出へのバックボーンを目指している。
(欧州は、米国と同じくバッテリーメーカーは新興企業しかなく、韓国勢の3社がそれぞれ工場を持ち、多くのEV車両メーカーに提供している。ただし高価な3元系・・・・しかもほとんどの材料は中国製)
欧州でも中国EV規制が強化されれば、米国同様漁夫の利が韓国勢に転がり込む。

中国、ロシア市場独占
中国が世界最大の自動車輸出大国となった背景には、ロシアとウクライナの戦争勃発後、露制裁、西側がロシアへの自動車進出工場を閉鎖、輸出も停止、結果、中国からのロシアへの輸出が増えたのが主要因。
統計によると、中国の自動車輸出の純増加分の約40%はロシアに向けたものだった。

また、中国のEV輸出が東南アジア地域で増えている流れも目立った。東南アジア10ヶ国が中国のEV輸出増加分の25%を占めている。

中国はEV輸出に際し、付随する充電インフラも借款で投資している。自国のEVを販売するための必須アイテムで、車両販売、充電インフラともに中国の輸出に貢献している。
中国で自動車が売れていないわけではなく、EVメーカーが、政府補助金があり、ここ10年で何百社も設立され、一時はEVを販売したように工作し、そのEVを回収、バッテリーを取り出し、別車両に搭載して、再び政府補助金を取得するなど、悪徳メーカーが大量に検挙されるなど、整理淘汰されてきたが、中国政府としても、主な輸出相手国の米国とは貿易戦争中、欧州は石油類や天然ガスが安価なロシア産の輸入を停止し、高価な米国産や中東産に乗り換えたため、欧州市民の生活は苦しくなり、さらに物価高のインフレ、インフレ退治の金利高に個人も企業も疲弊し、景気悪化、物価が前年比では安定してきたため金利を下げる動きになっている。

そうしたことから、これまで欧州市場も中国からの輸入低迷、中国の輸出先は、ロシアや東南アジア向けが拡大している。(中国は輸出不振がEV輸出に拍車をかけている)。

特に東南アジア向けは米中貿易戦争により、中国企業や中国進出の外資系企業も東南アジアに工場進出し、東南アジアから米国へ輸出する貿易戦争回避型が急拡大していることによるもの。そうした工場向けに中国から東南アジア各国へ半製品や部品・部材の輸出が拡大している。

中国企業もトランプ制裁時より、バイデン政権に入り対中制裁は増加する一方。エンティティリスト入りでのリスク回避のため中国企業は東南アジアへ工場進出している。

米国ではトランプ時代から中国の自動車に対して25%の関税を課しているが、現在の中国企業のEVやPHVがあまりの安さで、米国へ輸出された場合、米自動車メーカーや米進出外資メーカーは一溜まりもない。そうしたことから、米政府は直近、自動車関税を100%にすると発表している。

(BYD-EV海鴎・海豚/PHV秦・・・何れも最低価格7~10万元から/中国販売価格/広州気車など多くのメーカーが10万元以下からのEV販売を行っている)

欧州=EUでも、中国メーカーは中央・地方政府の補助金で販売増を果たし、利益を得て安価なEVを生産し続けていると見て、関税を課す動きとなっている。
BYDは米国のFTA国メキシコに工場進出を模索しているが、米国がメーカー規制すれば、米国への安価な輸出ができなくなり、工場進出を断念する可能性が高くなる。

欧米では日本の政権のような大股開きの新自由主経済はすでに崩壊、保護貿易が台頭し、極右が台頭してきている。
米共和党のトランプ派も自国第一主義のナショナリズムの極右に属する。バイデン政権もトランプ派と表裏一体。

しかし、自動車で中国と関係が深いドイツのメーカーや部品メーカーは、中国から逆制裁されるおそれもあり、制裁関税を課すことを批判している。

ただ、米IRA法のように部品部材まで米国産およびFTA提携国産以外の産品によるEVについては補助金対象外し、100%の関税を課すしか中国EVの勢いを止めることはできず、中国メーカー製のEVは限りなく安価に全世界に供給されることになる。

高い中東産・米国産の原油やLNGを購入するより、西側の露制裁で2割ほど安価な露産石油製品やLNGを購入する国の方が、国の数で言えば圧倒している。中国製新エネ車の輸出も似た現象になる可能性が高い。

中国
○EV用バッテリー生産世界最大
バッテリー材料のほとんどは中国で製品化および生産
○スチールは世界の過半数以上を生産する最大の生産国
○銅生産世界3位、4位のコンゴ民主は中国企業が採掘利権
 (モーター類などに従来車両の3倍以上必要)
(チリ1位(中国企業一部採掘利権持つ)、2位ペルー)
○ ロボット製造数世界最大国
(自動化ラインを強力に進めている) (精密ロボットでは日本が世界一)
(投入密度では半導体と自動車生産工場を多く持つ韓国が一位)
(自動化なんでもかんでもでは中国が一位。給与上昇が進みロボット化が進んでいる。スマホ・パソコン等電子製品生産世界一でロボット化が進んでいる )
○石炭世界最大の生産国に加え、輸入もしている。
 (粗鋼生産の溶鉱炉用、電炉による製鉄・レアメタル抽出用の石炭発電力)   

中国がまだ遅れているのは塗料くらいのものだろう。
 中国はEV会社は最大何百社も出現、その後淘汰され、それでも100社余りある。
最近のEVメーカーは、多くが倒産したり、吸収されたりしており、ある程度大きな自動車メーカーではそれなりの工場を持ち、買収されたりして、生き残るメーカーは工場を新たに造る必要も少ない。結果、投資が少なくて済み、製造コストを大幅に引き下げることも可能となっている。

EVではバッテリーと車体・モーター類の製造コストを下げれば、いくらでも安価となる。
また電子制御機器も、セット・パッケージングが進んでおり、高性能化で1個当たりは高価だが、多くの制御を1個でコントロールでき、結果、安価になっている。

↓あくまで中国での販売価格(PHV)

中華EV

[ 2024年5月22日 ]

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