タイでサル痘(エムポックス)ウイルスの変異株見つかる アフリカ経由の欧州男性
タイでサル痘(エムポックス)ウイルスの新たな変異株の感染が確認された。
世界保健機関(WHO)はエムポックスについて国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言。感染例は複数の地域で報告されている。
タイ保健省疾病管理局によると、変異株「クレード1b」型の検査で陽性となったのは先週アフリカからバンコクに到着した欧州の男性。当局はこの男性と身近な接触があった43人を特定した。
男性はエムポックスに関連する症状と疾患があり、バンコクに到着した翌日の8月15日に入院した。
エムポックスとは
エムポックスは天然痘の同類で感染力は弱く、一般的に症状は軽い。天然痘の致死率は約30%に対し、エムポックスの致死率は約3~6%と低い。
エムポックスは1958年にコペンハーゲンの血清学研究所で見つかった。研究用に飼育されていたサルに広がっていたためサル痘と呼ばれるようになった。主な感染源は特定されていないが、げっ歯動物が感染に関与している疑いがある。
WHOは2022年、この感染症にまつわる人種差別的で汚名を着せるような表現を抑制するため、病名をエムポックスに変更した。
エムポックスの症状は
2022年に複数の国で発生した感染では、エムポックスは発熱や筋肉痛、疲労、頭痛、リンパ節の腫れ、その他のインフルエンザのような症状から始まるパターンをたどる傾向があった。
発熱から数日以内に発疹が生じ、液体を含んだ膿疱や病変に発展し、性器や肛門を含む身体のさまざま部位に現れることがある。これらの病変は痛みを伴うことがあり、特に口や直腸などの敏感な部位に発生した場合は合併症を引き起こす可能性がある。目に病変ができると失明することもある。
WHOによると、この病気は通常2~4週間続き、患者の感染力は、症状が出始めてからタダレが治るまで続く。死亡率は小児や若年成人で高く、免疫力の弱い人は特に重症化のリスクが高い。
妊娠中の感染は、先天性感染や妊娠損失の脅威とともに、母体に深刻なリスクをもたらす。まれな合併症として、心筋や脳の炎症、けいれん発作などがある。
今回の流行は何が違うのか
現在アフリカで広がっている流行では、小児と若者が最も影響を受けており、既知の致死症例の60%余りが5歳未満。
セックス産業界で感染拡大
現在の変異型は、2022年に世界的に広がった「クレード2b」と呼ばれるより穏やかな株のように、性的接触を通じてより速いペースで感染が拡大していると報告されている。
2024年6月の報告によると、新型確認症例の29%がセックスワーカーだった。しかし、エムポックスは他の密接な接触によっても広がるため、性感染症とは考えられていない。
コンゴ民主共和国で感染拡大
中央アフリカ中央部に所在するコンゴ民主共和国で報告された症例の死亡率はほぼ5%。エボラ出血熱やコレラ、マラリアといった他の感染症が地域社会を荒廃させ、保健システムを脆弱なものにしているこの地域では、感染拡大を食い止めることは難しくなっている。
同国では新たな戦闘によって、混雑した難民キャンプで暮らす避難民が増加。2024年8月4日までの年初からの感染者数が約1万5000人に達し、昨年1年間の感染者数を上回っている。最近、他の国々でも感染者が次々確認されている。
コンゴ民主共和国は超独裁者から内戦を経て独立した国だが、現在も国内外のゲリラとの紛争が絶えず、政権は安定していない。同国は中国と関係が深く、世界最大のコバルト生産国でもあるが、中国企業がその開発権益のほとんどを有している。そのため、技術者など多くの中国人がコンゴ民主に滞在し、中国を往来していることから、感染が心配される。
今回、欧州男性はアフリカからタイへ入国して発症とあるが、この3地点の関係が仕事なのか何なのか気になる。感染経路の一つが性接触にあげられている。
中国から世界へ感染が広がった新コロナウイルス、その変異株=オミクロン株は南アフリカで検出され、瞬く間に全世界に広がった。今回は入国規制や監視もなく、サル痘ウイルスの感染拡大が危惧される。変異株はより感染力を増した株が生き残る。最悪は感染力が増し、さらに重症化しやすいタイプの変異株が出現することだろう。