中国経済の現況 不動産・消費・投資・住宅 2024年9月版
中国は不動産価格の高騰を抑止するため2008年(原弘産が中国投資と失敗)ころから「不動産価格コントロールの4政策」をはじめた。
1、購入戸数の制限(限購)、
(現在2戸OK、ただし2戸目は金利が高い)
2、地元以外の居住者の購入制限(限外)、
3、住宅ローンの制限(限貸)、
4、販売価格制限(限価)
(最低価格の制限を設けていた)
今年7月の新規住宅価格指数が前月比13ヶ月連続してマイナスなど、いまだ底が見えない不動産不況下にある。
中国政府は、不動産景気が過熱すると手綱を締め、経済が落ち込むと手綱を緩める繰り返しの政策を採り続けてきていた。
2020年の習政権の3条紅線=不動産開発会社に対する融資締め付け政策により、2021年早々には中小の不動産開発会社が手を挙げ、同年9月には中国最大の総合不動産開発会社の恒大地産(負債48兆円))も経営危機に陥った。2022年夏になると住宅不動産開発最大手の碧桂園(負債13兆円)が悲鳴を上げた。何れも締め付けは民間企業に効果覿面だった。中央政府は地方政府系や国務院系の不動産開発会社に実質破綻の民間企業の開発中で工事が頓挫しているマンションを買い取らせ、これまで以上にこうした政府系が幅を効かするようになった。
その後、あの手この手を使い、政府は不動産景気の回復策・規制緩和策をとっているが、習政権は不動産業の根っ子を腐れさせており、消費者も被害を受け、政府が笛吹けど業界は踊らない状態となっている。
問題は地方政府の財政の柱の一つである不動産利用権の販売、価格が下がり続け、地方政府の財政を悪化させている。中央政府は臨時的に地方政府の借入枠の増加を承認しているが、地方政府の財政をさらに悪化させる原因ともなっている。地方政府は財政勘定に入れていない第3セクターの不動産開発会社も抱えているが民間企業同様苦戦している。そのため、地方政府の景気対策のインフラ投資も限られ、国内消費も落ち込み、失業率も増加、景気悪化のスパイルに陥っている。
IMF(国際通貨基金)は8月、解決コスト"は約140兆円との試算した中国経済に関する報告書を公開した。
その中で「現在も進んでいる不動産市場の調整は経済見通しに対する重要なリスク」とした上で「中国が不動産をめぐる課題を解決するには財政支出が必要」と指摘している。
そして、その規模について「4年間でGDPの約5.5%の財政コストがかかる可能性がある」と指摘している。
これは2023年の中国の名目GDPに基づいて計算すると約7兆元、日本円にして約140兆円にも上る。
これほど巨額な財政支出が求められている中国の不動産問題だが、この先どうなるのか?専門家は「3つのシナリオ」が考えられるとしている。
1、「メインシナリオ」は、長期の停滞が続いた後、不動産価格は底を打つものの、その後も需要と供給は軟化しやすく、不安定な状況が続くというもの。最も可能性が高い。
2、「リスクシナリオ」は、不動産販売の悪化に歯止めがかからず、悪循環が加速しハードランディングに至るというもの。
3、「楽観シナリオ」ですが、政府の積極的な政策の緩和により不動産の販売が早期に回復する。
というもの。
習近平国家主席が禁断の4期目を目指す2027年を前に、不動産市場の"正常化"を目指す可能性が高いとしていて、中国の不動産市況が、世界的な金融危機にまで発展する可能性は現状、低いと考えられている。
一方、中国経済が抱えるリスクの一つに「不良債権」の問題があると指摘されている。 その上で、「不良債権」問題を解決するには2つの重要なポイントがあるとされ、
1、「どれぐらい不良債権があって、どれくらいで解決するかを金融機関が"開示"すること」、
2、「十分なお金を投入すること」としている。
中国の場合、特に"開示"の面では不透明な部分があるとしている。
(中央政府+地方政府+第3セクター+企業+家計)にどれだけ不良債権があるかを精査し、開示し、対応していくしかない)
仮に"最悪のリスクシナリオ"が現実となった場合、日本への影響は、対GDP比で考えると、0.1%にも満たないとの試算もある。マクロ経済の観点からは「(その影響は)そんなに大きくないのでは」と想定されている。 ただ、不動産に関連する建材や住宅設備などは、中国に進出している日本企業が造っているため、その影響は避けられず、更に個人消費にも影響が及ぶとすれば、飲食サービス業などを含めてダメージを受けやすくなる可能性もある。
<景気動向>
中国国家統計局が14日公表した8月の鉱工業生産は前年同月比4.5増と、伸びは前月から▲0.6ポイント悪化し、4ヶ月連続減。
小売売上高も前年同月比2.1%増と、0.6ポイント鈍化。
景気減速が一段と鮮明になっている。
中国国家統計局の発表値によると、1-8月期の固定資産投資は、地方政府の資金調達不調などが響き前年同期比3.4%増と、1-7月期の3.6%増から鈍化した。不動産投資は引き続き縮小しており、1-8月期▲10.2%減となっている。
中国の消費は家計負債が新コロナ以降GDP比2023年62%前後で推移。増加は2015年Q4期38.8%→2019年Q4期55.5%に増加、2019年Q4期には55.5%と不動さん景気拡大とともに増加、2020年Q4期61.9→2023年Q4期62.1%とGDPと不動産が低迷おり、これまでのような増加率はなくなっているが、残高は高止まりしている。
<中国での日本企業の復活は>
一方で、日本企業にとって悪影響だけではなく、ビジネスチャンスにつながる可能性もある。 日本はデフレのもと"コスパ"の高いビジネスを展開してきたことで、景気低迷の今の中国の消費者のマインドをうまくつかんで、需要を取っていける可能性がある。
共青同・太子党(2世)・江沢民派が群雄割拠していた中国、習近平氏の国家掌握は、2012~2017年の1期目で不正腐敗の大儀の下、江沢民派など敵対勢力を一掃、それは軍部にまで及んだ。
2期目は共同富裕論を教条にネット企業のオーナー経営者たち=新興勢力潰しに奔走し、彼らが持つ民間の新分野の開発エネルギーを潰してしまった。
禁忌の3期目は側近たちを習派一色=独裁色を強め、共同富裕論の下、3期目に入るに当たり国民の支持を取り付けるため住宅価格は高すぎるとして、これまで散々景気対策に利用し、経済の大きな歯車の一つである不動産業界を締め付け、経済を空転させる所業に及んでいる。
独裁者ゆえに意見する者、叛旗を翻す者などおらず、低迷している不動産対策は小手先の対策に終始し、結果が出ず、底が見えない状態が続いている。直近でも5兆元(約1000兆円))の不動産ローンの金利を50bp(条件による/最大80bp)下げ、消費に資金が回るように政策誘導するという。
しかし、国民の大多数は今回の事態にコリゴリ、生活剰余金は借入金の返済、確実性の高い投資増、貯蓄に回しており、金利下落が消費に回るか、また、不動産の新規購入に繋がるかはまったく見えてこない。今年2月にも25bp下げたものの、何の効果も出なかった。
中国の消費は新コロナマ前の伸び率は8%前後、それ以前の高かった時期は給与も上がり12%前後の伸びがあった。中国の経済成長を牽引するまでに拡大していた。しかし、現在は2~3%の伸び、今年の中国の経済成長率は5.0%を計画しているが、すでに4.5%前後が予想されている。世界からすれば、経済成長率より、実体経済の低迷が最大の問題となる。ただ、中国経済の低迷は原油高を抑制する働きをしており、給与を上げない日本にあり、一概に中国の景気を懸念することもできない。
スクロール→
中国の経済状況 2024年 |
||||
|
雇用 |
消費 |
生産 |
住宅 |
|
若年失業率 |
小売販売 |
鉱工業生産 |
住宅価格 |
|
% |
%・年比 |
%・年比 |
指数 |
23/12. |
14.9 |
7.4 |
6.8 |
-0.4 |
24/3. |
16.3 |
3.1 |
4.5 |
-2.2 |
24/4. |
14.7 |
2.3 |
6.7 |
-3.1 |
24/5. |
14.2 |
3.7 |
5.6 |
-3.9 |
24/6. |
13.2 |
2.0 |
5.3 |
-4.5 |
24/7. |
17.1 |
2.7 |
5.1 |
-4.9 |
24/8. |
15~29歳 |
2.1 |
4.5 |
-5.3 |