中国の経済悪化は全領域か 生産者物価は全産業で下落 ローン金利下げで消費喚起へ
8月の中国の全国工業生産者価格は前年比▲1.8% 、前月比▲0.7%下落し、工業生産者購入価格は前年比▲0.8% 、前月比▲0.6%下落した。
1~8月までの平均で、工業生産者の工場出荷価格は前年同期比で▲1.9%下落し、工業生産者の購入価格は▲2.1%下落した。
中国は米中貿易戦争のさなか、不動産政策に大失敗したことに起因して、消費低迷・内需低迷、失業率の上昇、購買力低下と不景気スパイラルに陥ったままとなっている。
中国政府は不動産回復策を数多く取っているが、不動産の根を腐らせており、国民購入投資も腐れ葉っぱにそっぽを向いたままとなっている。特に住宅開発は経済波及効果が高いものの、政府系が建設途上のマンションなど不良不動産を買い取り、賃貸にまわしたりしているが、一向に改善が見えてこない。
不動産の根を腐らせたのは、習近平国家主席自らの共同富裕論に基づく不動産開発会社に対する三条紅線(融資制限/2020年施行/2021年初から問題表面化)であり、腐った不動産開発会社は立ち直ることはできず、僅かな優秀な地方政府系不動産開発会社と中央政府系不動産開発会社だけが機能している状態。不動産開発市場の半分を腐らせてしまった習近平政権、早期に習氏に鈴を付け修正すればよかったものの、ここまでくれば無理無理無理、習氏は3期目に入り6奉行(中央常任政治局員)全員が習派であり、ヨイショ・忖度人材で固めている弊害が経済全体に浸透してきている。
こうした事態に中国政府は、約5兆ドル(約713兆円)相当の住宅ローンを対象に今月にも金利を引き下げる見通しと報じられている。多くの世帯が抱える住宅ローンを軽減し、消費を促す動きを加速させる施策。消費を抜本的に改善する先は現在のところなく50bp=0.5%下げが見込まれている。しかし、最大の消費層である青年所得層が住宅をどれほど所有しているのか、効果は限定的との見方もある。
2024年2月人民銀行は、5年物LPRを4.20%から3.95%に引き下げた。引き下げ幅は2019年に貸出金利のメカニズム見直しが行われて以降最大で、1年物は3.45%に据え置いていた(住宅ローンはこの最優遇貸出ローン金利を適用)。
米国は中国と貿易戦争中だが、別途、中国は企業の過剰生産による安価な価格での輸出攻勢により欧州などの市場を食い荒らしており、欧州でも関税により輸入を抑制する動きとなっている。
結果、内需低迷、外需も先行き不安により、中国の工業生産は低迷を続けている。
スマホは国内で売れず、海外攻略に注力している。その犠牲になるのが、中国のほかのメーカーであり、サムスン電子となっている。世界販売台数のキャパ上限は決定しており、市場争奪戦であり、景気低迷でキャパが縮小すれば、現在の中国市場のようにスマホの在庫増・生産低迷・関係する部材の価格も下落してきている。また、スマホ用半導体のサムスン電子の輸出は減少し、同社の収益を悪化させる原因ともなる。
サムスンの汎用DRAMの価格は、昨年10月底を打ち、反転、しかし、今年7月を頂点に、8月から下落局面にある。
スクロール→
8月の中国の生産者物価の動向 |
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前月比 |
前年比 |
1~8月 |
( % ) |
(%) |
前年比(%) |
|
1. 工業生産者の工場出荷価格 |
-0.7 |
-1.8 |
-1.9 |
生産物資 |
-1.0 |
-2.0 |
-2.3 |
採掘 |
-1.6 |
0.9 |
-2.2 |
原材料 |
-1.2 |
-0.8 |
-0.9 |
処理 |
-0.9 |
-2.7 |
-2.8 |
生活物資 |
0.0 |
-1.1 |
-0.9 |
食べ物 |
0.0 |
-1.3 |
-0.9 |
服 |
-0.1 |
-0.4 |
0.1 |
一般的な日用品 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
耐久消費財 |
0.0 |
-1.9 |
-2.0 |
|
|
|
|
2. 工業生産者の買取価格 |
-0.6 |
-0.8 |
-2.1 |
燃料と動力 |
-0.5 |
-1.0 |
-3.3 |
鉄系金属材料 |
-1.9 |
-4.1 |
-2.9 |
非鉄金属材料および電線 |
-1.7 |
9.1 |
5.7 |
化学原料 |
-0.8 |
-0.6 |
-3.1 |
木材とパルプ |
-0.3 |
0.3 |
-2.7 |
建材および非金属 |
-0.5 |
-4.4 |
-6.8 |
その他の工業用原料および半製品 |
-0.2 |
-1.4 |
-1.6 |
農産物および副産物 |
0.7 |
-2.9 |
-4.3 |
繊維原料 |
-0.3 |
-1.0 |
-0.1 |
|
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|
3. 主要産業の工場出荷時の価格 |
|
|
|
石炭採掘および洗浄業 |
-1.2 |
-0.1 |
-9.4 |
石油およびガス採掘産業 |
-4.3 |
-3.3 |
5.4 |
鉄金属の鉱業および加工業 |
-2.0 |
0.7 |
6.3 |
非鉄金属鉱業および加工業 |
0.1 |
17.1 |
11.0 |
非金属鉱物の採掘および加工業 |
0.4 |
0.9 |
-1.4 |
農業および副業食品加工業 |
-0.1 |
-4.0 |
-3.5 |
食品製造 |
-0.1 |
-1.5 |
-1.1 |
ワイン、飲料、清茶の製造 |
0.0 |
-0.8 |
0.0 |
タバコ製品産業 |
0.0 |
0.2 |
0.7 |
繊維産業 |
-0.2 |
-1.1 |
-0.8 |
繊維衣料・アパレル産業 |
0.0 |
-0.1 |
0.3 |
木材加工および木材、竹、籐、ヤシ、 わら製品産業 |
-0.1 |
-0.3 |
-0.8 |
紙および紙製品産業 |
-0.3 |
-2.3 |
-4.0 |
印刷・記録メディア再生産業 |
0.1 |
-1.3 |
-1.3 |
石油、石炭およびその他の燃料加工産業 |
-2.0 |
-3.0 |
-0.8 |
化学原料および化学製品の製造 |
-0.9 |
-1.2 |
-3.8 |
医薬品製造業 |
0.0 |
-0.9 |
-0.8 |
化学繊維の製造 |
-0.2 |
0.8 |
0.5 |
ゴム・プラスチック製品産業 |
-0.3 |
-1.8 |
-2.4 |
非金属鉱物製品産業 |
-0.7 |
-5.1 |
-7.4 |
鉄金属精錬・圧延加工業 |
-4.4 |
-8.0 |
-5.1 |
非鉄金属製錬・圧延加工業 |
-2.3 |
7.6 |
5.4 |
金属製品産業 |
-0.6 |
-1.6 |
-1.6 |
一般機器製造 |
0.0 |
-1.0 |
-0.8 |
自動車製造業 |
-0.2 |
-2.2 |
-1.9 |
鉄道、造船、航空宇宙、その他輸送機器の製造 |
0.0 |
0.6 |
0.0 |
コンピュータ、スマホ等通信機器およびその他の電子機器の製造 |
-0.2 |
-2.4 |
-2.3 |
|
|
|
|
電気・熱生産供給業 |
0.0 |
-2.2 |
-1.8 |
ガス製造・供給業 |
0.1 |
0.0 |
-0.9 |
水の製造・供給業 |
0.1 |
0.9 |
0.9 |